グループが目指すのは医療中心の町おこし
「3章立て」の構想があると、和陽会(倉敷市)の村上和春理事長は打ち明けてくれた。第1章は「医療と介護の一体化」。2016年10月、介護事業を中心に展開する医療法人弘友会(総社市)の理事長を兼任することで体制が整った。現在、第2章の柱である「医療・介護両面の質の向上」を推進中だ。
―法人間の連携の状況は。
倉敷市に、まび記念病院をはじめとする医療法人和陽会が展開する医療機関やサ高住。総社市には弘友会が運営するクリニックや老健。これらの施設を「面」としてとらえ、シームレスな連携の仕組みづくりに取り組んでいます。
私たちのテーマでありロゴマークとしても表現している「&(アンド)=結びつき」に基づき、2法人の融合を目指しています。
一つは、弘友会の医療機能の充実です。和陽会が所有していた医療機器を移設するなど、人的、物的資源の共有化を積極的に進めています。
同時に、法人それぞれの特徴、役割を打ち出していきたいと考えています。川崎医科大学附属病院や倉敷中央病院といった高度急性期病院から患者さんを受け入れる際、合併する疾患があれば、まび記念病院で診療して弘友会のリハビリ施設に移っていただく。そんな医療連携法人としての流れを確立したいと思っています。
地域包括ケアシステムの構築が進んでいますが、各施設、機関の意識の統一は簡単ではないとも感じています。地域として大きくはないかもしれませんが理事長を同じくする和陽会と弘友会なら、医療、介護、そして在宅まで対応できる、グループ内での地域包括ケアシステムが可能でしょう。
そこから一歩踏み込んで「カルチャー」を発信できる存在でもありたいのです。どなたでも利用できる「メディカルフィットネスあんど」の開設やワンコインドックの実施。月に一度、私がラジオに出演して人間の生理を通して体にいい話をしゃべっているのも、医療中心の町おこしの一環です。うるおいのある地域づくりが実現できればと思います。
ある病院の先生が、人材や資金などのほかに「病院は建物が重要」だとおっしゃっていて、私も大いに共感できる部分があります。
まび記念病院も中庭やホールのデザインに力を入れました。「地域になじむ建物を」と提案してきた設計事務所に、私は「周囲とは異なる空間をつくってほしい」と言いました。病院は病んだ人々が訪れる場所。からだを休めたい、癒やしたいと望まれる。だからこそ日常とは異なる空間にしてほしいと頼んだのです。
人が集まってくれなければ、私たちは何もできないのです。建物は、利便性がいいとは言えない真備町に医師や看護師が来てくれる要因でもあると思います。
―今、理事長の関心は。
医師、歯科医師、PT・OT・ST、看護師、ソーシャルワーカーなどのさまざまな医療サービスの関係者十数人がチームとなって地域で活動し、在宅医療を支える「高齢者に対しての医療介護一体型の包括ケア医療サービス」の実現に向けて動きだしたい。まずは当グループの訪問看護ステーションをベースに、高齢者の一人暮らしや老老介護をどのようにサポートできるか考えていきます。
将来的には高齢者向けの食事の宅配サービスなども展開できないかと思っています。カロリーで分けた画一的なものではなく、それぞれの好みや食べやすさに合わせてオーダーメードの内容にできたらいいですね。
第3章では地域を有機的につなげ、地域の高齢者のみなさんが生き生きと学んだり、芸術に触れたりできるような場をつくりたい。認知症対策なども含めた構想を描いています。医療が必要になる場面というのは、多くがあまりハッピーなときではありませんよね。前向きな気持ちにつながる場を提供できたらと思います。
医療法人 和陽会
岡山県倉敷市真備町川辺2000-1
TEL:086-698-2248(まび記念病院)
http://mkh.or.jp/