久留米大学医学部神経精神医学講座教授 大会長 内村 直尚

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【学会長シリーズ】第17回日本トラウマティック・ストレス学会 支援の裾野を広げよう

【うちむら・なおひさ】 1982 久留米大学医学部卒業 1987 米オレゴン健康科学大学留学  2007 久留米大学医学部神経精神医学講座教授 2013 同医学部長兼務 2016 同副学長兼務

 6月9日(土)・10日(日)に久留米大学と別府大学の共催で第17回日本トラウマティック・ストレス学会が開かれる。PTSDの予防と支援はどうあるべきか。

きっかけは阪神・淡路大震災

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 日本でトラウマという言葉が広く知られるようになったのは阪神・淡路大震災の時でした。本学会は米国に本部をおく国際トラウマティック・ストレス学会の連携組織として2002年に設立。医師だけでなく研究や治療にかかわる多様な専門職で研究・情報交換をしています。

 PTSDは、生命や人格が脅かされるような極度のトラウマ(心的外傷)体験をする、またはそのような人を目撃したり家族が巻き込まれたりすることにより発症します。しかし同じ経験をした全員が発症するわけではありません。事件や事故、自然災害などの後、いかに早く予防措置をとるかが重要です。多職種による連携支援が欠かせないと思うのです。

 今回のシンポジウムではそれぞれの専門性においてどのような支援ができるか、これまでの事例報告を交え情報交換する予定です。

 阪神・淡路大震災当時に比べると、この分野はかなり研究が進み、支援の体制も改善されてきています。例えば学校で事件などがあれば、すぐに専門家チームが心のケアにあたります。また、神戸の震災時に避難所から仮設住宅に移った被災者の自殺が相次いだ教訓を生かして、仮設住宅は早い供給だけでなく被災者が孤立しない配慮をするという視点が加わりました。

 東日本大震災では、放射能汚染によって新たな問題が出てきました。放射能被害におびえながら被災地に残った方、縁のない遠方へ避難した方―基調講演では、特に発達段階にある子どもにその体験がどういった影響をおよぼしたのか、7年間にわたる診療と研究の結果をお話しいただきます。今後の災害時の子ども支援において重要な指針になるのではないでしょうか。

自覚症状は"悪夢"

 カウンセリングや薬物療法が中心ですが、それを専門とする医師の数は限られています。そのため、精神科や心療内科で幅広く治療にあたれるよう学会がガイドラインを出しています。

私の専門である睡眠と関連したところでは、PTSDの自覚症状では悪夢を訴える人が多い。われわれの大学では事故後PTSDと診断された患者さんの睡眠脳波を測定。悪夢とレム睡眠中の覚醒時間に相関関係があることを突き止め、睡眠を深くし、夢を抑える薬物療法が有効であることを明らかにしました。質の良い睡眠により自律神経が整い、過覚醒が改善され日中のフラッシュバックへの効果も見られるため、治療として導入されています。

予防や支援の層を厚く

k7-2.jpg学会ポスター

 PTSDは医療者だけでは治せない病だと言えます。患者さんの不安をやわらげ心安らぐ環境を家族や周りの人が作ることが、治療の大きな助けになるのです。医療者以外の人にもこの病気の概念をもっと知ってもらい、予防や治療の支援の層を厚くしたい。学校の職員や地域の民生委員の方などさまざまな立場の方に今以上に学会に参加していただくことで、一般の人にもそういった意識が根付いていけばと考えています。

 多くの人が関心を持ち、今は希薄になってきた地域のつながりや人の絆を再構築することは、トラウマ体験となるような虐待やDV、性的暴行などの事件の抑止力にもなるのではないでしょうか。この学会が、患者さんやつらい体験をされた方の支援の裾野を広げていく一助になればと思います。

【基調講演】

「逆境体験が子どもの発達に及ぼす影響と回復への介入~東日本大震災被災地での7年間の診療と研究を通して見えること」

座長:元村 直靖(大阪医科大学看護学部)
演者:八木 淳子(岩手医科大学神経精神科学講座/いわてこどもケアセンター副センター長)

【シンポジウムⅠ】

「地域における被害者支援の取り組み―多職種連携」

司会:金子 進之助(別府大学臨床心理相談室)座長:元村 直靖(大阪医科大学看護学部)

【シンポジウムⅡ】

「自然災害後のトラウマティック・ストレス―九州での経験から」

コーディネーター:加藤 寛(兵庫県こころのケアセンター)
大江 美佐里(久留米大学医学部神経精神医学講座)
指定討論:前田 正治(福島県立医科大学医学部災害こころの医学講座)

会期:6月9日(土)・10日(日)
会場:別府国際コンベンションセンター ビーコンプラザ
運営事務局:日本旅行九州法人支店 Global MICEセンター内
TEL:092-451-0606
学会HP:http://jstss17.com/


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