厚生会第一病院 馬場 貴仁 院長

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救急に続く一手は嚥下機能回復リハ

【ばば・たかひと】 大阪府立三国丘高校卒業2001 大阪大学医学部卒業 同脳神経外科入局 2004 厚生会第一病院勤務 2014 同院長

 八尾市の西寄り、大阪市平野区との境界近くにある厚生会第一病院。7年ほど前、1人の若い医師が始めた院内改革は、地域の救急医療体制にも影響をもたらすことになった。その当人で、今後の展開をにらんで次の改革に着手した馬場貴仁院長に見解を聞いた。

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◎119番を「ためらわない」土地柄

 市営団地が林立し、人口密度が高いこの辺りは独居高齢者や老老介護の2人暮らし世帯が多い。何かあったとき、本人や家族は心配だし、頼る人がいないから、すぐに救急車を呼ぶ傾向があります。大阪は救急搬送の軽症率が全国一で、中でも八尾は高い。「日本で最も"気軽"に救急車を要請する地域」とも言えるのです。

 医療圏内には八尾市立病院、八尾徳洲会総合病院、医真会八尾総合病院と、300床〜400床規模の総合病院が三つあり、151床の当院を合わせた四つが救急二次指定病院です。

 うちは今でこそ「断らない医療」を掲げて診療していますが、昔は違った。年間3000件ほどの要請のうち、受け入れるのは1200件ほど。大きな病院に断られた救急隊が電話してきても、ほかの病院同様、断ることが多かったのです。

◎反発を押して救急強化

 しかし、この病院に来て6年ほど経った2010年ごろ、「このままでは病院がダメになる」と思いました。経営は傾いているようでしたし、スタッフもなれ合い状態。院内の雰囲気が停滞していると感じたからです。

 私の専門は脳神経外科ですが、救急での勤務経験を重ねていたので、まず自分にできることは救急だろうと考えました。そこで「救急を徹底的にやりたい」と当時の院長に掛け合ったのです。

 結果的には救急部長にしてもらい、明確な患者受け入れルールを決めました。当院に専門医がいない小児科と、治療に制約がある妊婦、当院でのトラブル歴のある患者以外は全員受け入れる、というルールです。

 救急に力を入れ始めたころ、院内の医師の反発は大きかった。「裁判沙汰(ざた)になったらどうするんだ」などと言う人もいたほどです。

 専門外も診なければならない不満を訴える声には「先生、勉強してください」と言いました。専門分野しか診ることができないようでは、いくつもの疾患がある患者が増える超高齢社会では医師として通用しない。当時、救急を担当していたのは6〜7人。常勤医2人が辞めていきました。

 断わらず、すべて受け入れるからこそ見逃しがないよういろいろと勉強する。今の医師やスタッフはその心意気で仕事をしてくれています。ありがたいことに、今のところ訴訟はゼロですし、皆緊張感をもって仕事に取り組んでくれています。

 看護師は、勤務時間内で忙しくなるのは構わないという感じでしたね。「今まで要請を断るのが心苦しかった」と言ってくれました。実際本当に忙しくなりましたが、理解してくれるスタッフが少しずつ増えてきたというのが実感です。

 地方では、病院が互いに切磋琢磨(せっさたくま)して得意分野を磨き、救急隊が患者の状態などに応じて搬送先を選ぶ地域もあります。大阪市内の一部でもそんな競争が始まっている。それが本来の姿だと思います。

◎早くて便利コンビニ病院

 すべての科目で高度な医療ができるわけではないので、受け入れにあたってはトリアージに特化しました。

 まず受け入れて、当院での治療が難しければ治療できる病院に送るシステムを構築。例えば大動脈解離でも、電話一本で受け入れてくれる病院をいくつも用意しています。

 当院に運ばれた患者さんの8割はうちで診ますが、そもそもその多くが入院不要の軽症例です。本来なら不必要な搬送をなくす啓発がもっと重要です。

 しかし、実際に依頼があるのなら、すぐに診て検査をし、入院が必要か判断する。場合によっては他院に転送する。うちは小さな病院で適応力や順応性が高い。速さ、便利さ、気軽さで、救急隊にとっての「コンビニ病院」のような存在になりつつあると感じています。

 今では要請の9割を受け入れ。一時期は年間5000件の依頼のうち4500件ほどを受けていましたが、現在は要請がやや減り、受け入れが3500件〜4000件くらいで落ち着いています。

 減ったのは、他の病院もこれまで以上に受け入れ始めたから。小さな病院が一生懸命やっているのを見ると、他の病院でも「救急患者をもっと受けよう」という話になる。実際、そういう風潮が広がって、地域で救急医療への積極性が高まったのではと思っています。

◎頑張りが報われるオープンな給与体系に

 3年前に院長を打診されたときは、さすがに迷いました。救急だけなら目が届きますが、病院全体となると難しい。しかし、新しいことをやってみようと決心しました。

 それまでは、経営が赤字か黒字かも職員に分からない状況でしたが、仕組みを180度転換。透明性を担保するため経営状態はすべて開示。加えて、「利益が上がったら〇%還元します」「患者さんが増えたらその分ボーナスを増やします」と、誰が見ても分かるシステムを導入しました。

 黒字を目指して職員も仕事をする。どうすれば患者さんから信頼される病院になるのかを必死で考える。すると患者さんの満足度も高くなる。患者さんのことを第一に考え、間違った選択をしない、そんなスタッフだと信じているからできたことです。

 患者さんを元気にして自宅などに帰し、新しく受け入れる。その回転を上げることで、現在はうまくいっています。

◎嚥下機能回復リハで頂点を

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 救急で収益は上がりました。しかし、例えるなら救急は数の変動があり予想も立てにくい「水もの」。経営を考えたら、ほかに強みをつくる必要がありました。

 80〜90歳代の後期高齢者が増えて認知症が進むと、次に食事の問題が出てきます。誤嚥(えん)性肺炎が増えているのは肌で感じていた半面、嚥下を専門にやっている施設はほぼ皆無。そこで社会的意義があり、かつ需要が見込める分野として嚥下機能回復リハビリに焦点を絞り、今年、「嚥下機能回復リハビリテーションセンター」を本格始動したところです。

 一般的に、誤嚥性肺炎の患者には抗生剤を投与し、数日から1週間ほど経口摂取をさせないことが多い。約1週間で肺炎は良くなりますが、今度はもともと弱っていた嚥下機能が一層悪化し、食事が取りにくくなります。

 しかし、急性期病院では肺炎を治したらミッションは終わりです。誤嚥による命の危険を伴う嚥下リハをする医療施設がない、自宅や高齢者施設に返すには胃ろうを造設するしかない、という悪循環。胃ろうの是非が社会的に問われている今、リスク取ってでも嚥下リハに取り組む必要性は高いと考えました。

 さらに、当院は看護基準が15対1なので、7対1や10対1の病院と比べて平均在院日数の縛りが緩いという利点もあった。縁あって東北から専門の医師に来てもらい、嚥下リハに精通する看護師の指導も受けながら1年ほどかけて準備しました。

 ありがたいことに現在は転院希望が多く、受け入れを制限しているほど。「やるからには日本で一番になろう」と、スタッフに宣言しています。中途半端はできない。頂点を目指す決意で、取り組んでいくつもりです。

医療法人 厚生医学会 厚生会第一病院
大阪府八尾市西木の本1-63
TEL:072-992-7055(代表)
http://www.kouseikaidaiichi.jp/


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