日本赤十字社 庄原赤十字病院 中島 浩一郎 院長

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

巡回診療で感じたへき地医療のゆくえ

【なかしま・こういちろう】 1979 広島大学医学部卒業 広島大学医学部附属病院 1981 庄原赤十字病院 1992 広島大学大学院修了 2009 庄原赤十字病院院長

c13-1-1.jpg

-地域での役割について、いま感じていることは。

 4月から、広島大学の医師が腎臓内科の診療を担当しています。腎臓内科に派遣の医師が来るのは初めてのことです。60人ほどの透析患者さんがいますので、心強く思っています。

 医師確保の課題は依然として抱えています。常勤医不在の科がいくつかあり、特に専門医の確保は難しい。

 当院は庄原市内で唯一の総合病院です。高度な専門性を持つ開業医の先生は少ないですから、この病院から医師がいなくなると、市内から診療科そのものが消滅してしまうことにもなりかねません。

 医師が都市部に集中する流れが加速したことで、各地域は大きなダメージを受けました。広島県内には無医地区(※)が53地区あり、北海道に次いで全国2位の多さです。庄原市には、23もの無医地区があります。

 危機感をつのらせた広島県や広島大学が中心となった努力の積み重ねによって、一時期よりはずいぶん持ち直してきたようにも思います。

 ただ、その効果はまだ都市部に限られていると感じます。周辺部にまで波及するには、もう少し時間がかかるでしょう。

 広島大学医学部地域医療システム学講座が設置した「ふるさと枠」の学生たちは、大きな希望です。将来、広島県の地域医療を支えてくれることを期待しています。

 へき地医療拠点病院である当院では、週2回、無医地区を巡回診療しています。研修で当院にやってくる若い医師や学生たちにも同行してもらい、へき地の姿を見る機会を提供しています。

 病院での診療と違うのは、患者さんが実際に暮らしている場所で、一人一人により時間をかけて接していく点です。

 「診察室では得られない貴重な経験になった」という声が多いですから、さまざまなことを感じ取ってくれているのだと思います。

 庄原市の高齢化率は40%を超えています。いまは差があっても、やがて都市部も、同じ状況に近づいてくるでしょう。

 若い医師たちが実績を積み、医療現場の中心を担うようになる10年、20年後には、あらゆる場面で高齢者の医療にかかわることになると思います。そのときこそ、当院で高齢者の診療を重ねた経験が生きてくるに違いありません。

-どのような医師の育成が必要でしょうか。

 高度な専門知識を持ちながら、同時に総合的な診療もできる医師を育てるというのが、当院のスタンスです。へき地の病院では、そうせざるを得ないとも言えます。

 都市部の一般的なDPC病院では、医師が紹介状の情報に基づいて治療し、短期間で患者さんがローテーションしていくのが基本です。

 当院の紹介率は3割程度。ほとんどの患者さんは紹介状を持たずに当院を訪れます。ですから、医師はしっかりと自分で診察し、診断、治療に結びつけていくプロセスを踏むことになります。

 特に若い時期には、全身を診るトレーニングが重要だと思うのです。専門性は、この土台の上に初めて成り立つというのが私の考えです。

 昔は医療の細分化が進んでいませんでしたから、何でも診るのが当たり前でした。

 私は心臓のことを学びたいと思い、小倉記念病院の延吉正清先生に頼み込んで勉強させていただきました。別の病院では内視鏡を教わるなど、ツテを探しては、いろいろな病院へ行きました。

 学んだことの中には、私には少々荷が重いと感じる分野もありました。ただ、この庄原市の医療に何が足りないのか、多くの発見があったことが収穫でした。見渡すと、ないものだらけだったことに気づいたのです。

 例えば循環器の専門医の必要性を痛感し、大学に強く要請したことで、派遣がかないました。現在、当院の循環器科には4人の医師がいます。

 外でさまざまなものを見てきた経験が、庄原市の医療を守ることにつながったのかなと、振り返って思います。

-今後についてイメージしていることは。

c13-1-2.jpg

 どんなに募集に力を入れても、看護師が2、3人しか採用できない時期がありました。看護学校からは「新幹線が停まる町でなければ誰も行きませんよ」などと言われたものです。田舎ですし、建て替える前の当院は古くて汚かった。新幹線どころか...という話です(笑)。

 10年ほど前に、庄原市が医療従事者育成奨学金貸付制度をスタートさせたことで、広島市方面から来てくれる看護師や医師も増えました。

 「医師が来てくれる魅力ある病院にしたい」と、中西敏夫前院長(現: 市立三次中央病院病院長)時代から計画していた新病棟は、2012年から段階的にオープンしました。

 これらが選ばれる病院になるための入り口であることはたしかですが、やはり本当に大事なのはソフト面だろうと思います。

 当院の強みの一つは看護教育です。学生たちは数人のグループで実習にやってきます。指導を担当する看護師たちは、グループに向けて話をしているつもりはありません。

 ちゃんと一人の人間として、「あなたに話をしている」という意識で指導する姿勢が根付いています。「実習の印象が良かったので庄原赤十字病院に決めました」と言って働いてくれる看護師が多いのは、うれしいことです。

 この姿勢は患者さんへの接し方にもつながるでしょう。患者さんが何十人といても、医療を届ける対象は一人一人です。「あなたのための医療です」という思いを持ち続けることが、私たちの原点だと思うのです。

 選ばれる病院というのは、きっとこうした小さな努力の積み重ねの結果なのでしょう。

 今後、巡回診療は何があっても続けていくつもりです。一方で、巡回診療を始めて4年間で感じたことは、日本が山間の集落にまで医療サービスを提供する国力を維持できるのだろうかという疑問です。

 将来的な着地点は、医療や福祉サービス、生活に必要なものを集約した、コンパクトシティーに移り住んでもらうことではないかと思います。

 住み慣れた土地で暮らすことが幸せだと理解できる反面、山間部ではちょっとした体調の変化が起これば、すぐに暮らせなくなる。

 いま、暮らしている方々の希望にはできる限り応えながら、将来のビジョンにつながる足がかりをつくっていけたらと考えています。

※医療機関のない地域で、当該地区の中心的な場所を起点として、おおむね半径4kmの区域内に50人以上が居住している地区であって、かつ容易に医療機関を利用することができない地区

日本赤十字社 庄原赤十字病院
広島県庄原市西本町2-7-10
TEL:0824-72-3111
http://www.shobara.jrc.or.jp/


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

楽採で医師の採用を「楽」に!

博多水引×九州医事新報

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【2018年4月の1冊】
イメージ:今月の1冊 - 79.A Child Is Born 赤ちゃんの誕生
A Child Is Born 赤ちゃんの誕生

Twitter


ページ上部へ戻る