急性期医療とへき地医療 両機能を持つ公立病院へ
瀬戸大橋のある坂出市で、地域の中核病院として急性期医療に主軸を置きつつ、島しょ部などへの巡回診療、診療所での診察にも力を注ぐ坂出市立病院。へき地医療の現状と見通し、2025年問題への取り組みなどについて聞いた。
―へき地医療の現状について聞かせてください。
現在、当院では山間部の王越診療所、島しょ部の与島診療所に医師、看護師、事務職員を派遣しています。また、櫃石島、岩黒島では巡回診療を行っています。
坂出市はコンパクトなので、山間部にも島しょ部にも1時間あれば通えます。しかし、高齢化が進行していて、高齢の患者さんが毎回当院に通うことは、本人や家族にとって負担になる。普段は診療所で診て、症状が悪化した場合に当院に来てもらっています。
診療所のスタッフはすべて当院から派遣しています。診療所でも当院でも顔なじみの医師や看護師が診ることは患者にとって安心できる環境だと思います。
双方での診療がスムーズに進むよう、当院と診療所の間で相互にカルテの閲覧ができるようにしています。また、最近では院外調剤薬局と連携し、山間部や島しょ部へ薬の配達を依頼しています。
―365日24時間の支援体制があるとうかがいました。
当院には訪問診療を中心に担当している「すこやかライフ支援室」があります。診療所へのスタッフ派遣とこの支援室の二つがオーバーラップして活動。診療所に派遣されている看護師が訪問診療を担当することもあるため、情報の共有が非常に行いやすいというメリットがあります。
また、訪問診療を受けている患者さんの具合が夜間に悪くなった場合や在宅での看取(みと)りを希望される方のために、支援室のスタッフはPHSを持ち、24時間体制でご家族からの連絡に対応しています。
―医師の確保の取り組みは。
当院の方向性を説明し、全医師数の90%以上を香川大学から派遣してもらっています。
当院は7対1看護基準のDPC対象病院です。2017年度は平均在院日数が11・9日、病床稼働率が77%。2018年度は、病床稼働率80%以上が目標です。
しかし、同時に地域の公立病院でもあります。急性期に特化することだけが、市民が望む医療を提供することにつながるのかと言われれば、それは大きな疑問。へき地の診療所へのスタッフの派遣や訪問支援も、切り捨ててはならないと思っています。
当院で慢性期の患者をずっと診るのではなく、できるだけ在宅に移し、私たちが訪問診療する。在宅での看取りも年々増えています。スタッフがPHSを365日24時間持つことで、患者さんだけでなく家族のケアやサポートができます。PHSを持つことは、スタッフが自主的にはじめたこと。一人ひとりが使命感を持って働いてくれています。
―2025年問題に向けての取り組みについて。
急性期の指標としての稼働率、入院基本料、手術数、救急車の応需数はすべて右肩上がりです。当面は急性期として194床を維持。回復期、慢性期の病床は持たない。坂出地区の急性期疾患の中核病院として運営するのが方針です。
2025年に向けて、回復期、慢性期の病床が必要になりますが、坂出市の高齢化率は34%なので、2025年に向けて、すぐに急性期の疾患が減少するわけではないと思っています。
公的病院だからこそ、経営努力も必要です。ただ一番大切なのは住民がどんな医療を必要としているかではないでしょうか。
重症疾患を中核病院として担当し、しっかりとした医療を提供すること、24時間体制で患者をサポートすること。それによって地域全体の医療レベルを引き上げるということも、公立病院の大切な仕事のひとつであると考えています。
坂出市立病院
香川県坂出市寿町3-1-2
TEL:0877-46-5131(代表)
http://www.city.sakaide.lg.jp/site/sakaide-hospital/