たろうクリニック 内田 直樹 院長

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在宅医療を当たり前の選択肢にしたい

【うちだ・なおき】 2003 琉球大学医学部卒業 福岡大学医学部精神医学教室 2010 同大学院卒業 同精神医学教室助教 同講師 2015 医療法人すずらん会たろうクリニック院長

 たろうクリニックは福岡市の全域と、その近郊で、24時間、365日の在宅医療を提供している。

 内田直樹院長に同クリニックの特徴などを聞いた。

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◎第3の医療

 高齢化、社会保障費の増大、社会のニーズなどに伴い、入院医療、外来医療に並ぶ第3の医療として在宅医療が注目されています。

 当クリニックの特徴の一つは、精神科医や認知症の専門医が訪問診療をしていることです。在宅医療を提供する医療機関は年々増加していて、在宅療養支援診療所は、現在、全国に1万5千余。しかし、精神科を標榜しているところは全体の約4%と限られています。

 在宅医療を必要とする人の大半が高齢者で、認知症を伴っているケースも多々あります。介護するご家族も介護疲れから、うつ病などを発症するケースがあります。私たちは、そういった方々を精神的にもケアする体制を整えています。

 認知症の行動・心理症状(BPSD)が重篤で、介護者が疲弊してしまい、在宅医療の継続が困難になるケースが増えてきています。そうした対応困難事例、最近は特に地域包括支援センターなど地域からのご相談が、とても多くなっています。

 当クリニックでは「物忘れ外来」も開設しています。認知症が疑われる段階から最期の看取りの段階までシームレスに診られるのが当クリニックの強みです。この取り組みを進めていき、認知症になっても過ごしやすい街づくりをしていければと考えています。

◎どこで医療を受けるか選択できる時代に

 福岡県の在宅での看取り率は約10%。全国平均は13%弱ですから、全国的にみても低い水準だと言えます。国民に「どこで最期を迎えたいか」のアンケートをとると5割から7割が自宅だと答えています。

 これまでは在宅医療制度が整っていなかったので、こういう結果になっているのかもしれません。しかし現在、福岡市には在宅医療を提供する診療所がたくさんあります。入院、外来、在宅医療の中から、自分が希望する医療を選択できる時代になっています。

◎幅広いエリアをカバー

 厚生労働省は在宅医療をする診療所と患者の家までの距離が直線で16km以内でなければならないと定めています。

 当クリニックは福岡市東区にあります。また同じ法人の「なごみクリニック」は福岡市早良区にあります。この2クリニックで福岡市全域及び、北は古賀市、南は太宰府市、東は粕屋郡篠栗町、西は福岡市西区の伊都までと、かなり広いエリアをカバーしています。

 これだけ広いエリアを訪問できるのも複数の医師での訪問体制を作っているからです。毎日3〜5人の医師で1日平均40〜60人の患者さんを診ています。

 患者さんやご家族、施設からの電話には24時間体制で対応しています。また、電話の内容で診察が必要だと判断すれば、夜中でも往診にうかがいます。「電話が、いつでもつながるというだけでも安心する」と患者さんやご家族から言われることも多いです。病院での検査や入院が必要な場合には病院と連携し受診・入院の手配もしています。

◎多職種連携

 在宅医療をするうえで多職種連携は必須です。医師、看護師、ケアマネジャー、ホームヘルパーなどが密なコミュニケーションを図る必要があります。

 そこで当クリニックでは多職種による事例検討会を定期的に開催しています。「見える事例検討会」という、マインドマップを用いた症例検討会で、大変好評です。

 この検討会で困難事例への対応を検討することはもちろん、複数の事業所の多職種が参加することで、互いが顔見知りになって、本当の意味での「顔の見える連携」が構築されることを期待しています。

◎家族を支える

 患者さんはもちろん、そのご家族を支えるのも私たちの大きな役割です。ご家族の懸命な介護があってこそ在宅医療が成り立っていると日々感じています。

 ご家族が困っていることへの対応にも力を入れています。認知症のBPSDは、ご家族の接し方などによって引き起こされている側面が少なからずあります。患者さんにとって良かれと思ってやったことが、かえって負担になってしまうこともあるのです。

 患者さんによって、それぞれ、適切な対応が異なります。ご家族には、患者さんの認知症のタイプや得意なこと、苦手なこと、気を付けなければいけないことなどをアドバイスしています。

 それによって問題行動が減り、ご家族から「介護がしやすくなった」と感謝されることも多いです。

◎積極的に情報を発信

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 在宅医療を提供する診療所が増えてきたとはいえ、まだまだ在宅医療の仕組みについての認知度が十分だとは言えません。

 在宅医療を導入すれば楽になるのに、存在を知らずに苦労されている患者さんと、そのご家族が相当数いらっしゃると思います。

 私たちは在宅医療を当たり前の選択肢にするためにウェブサイト「在宅医療ナビ」(http://www.zaitakuiryonavi.com/)を立ち上げました。また、診療所のホームページでも定期的に情報発信しています。さまざまな形で情報を発信して多くの人に在宅医療について知ってもらいたいと考えています。

 医療・介護の従事者の中にも在宅医療について「寝たきりの人だけが対象なのでは」とか「とても医療費が高いのでは」と考えている人も多く、まだまだ在宅医療はよく理解されていないと感じています。

 このため、一般の人向けだけでなく医療・介護の提供者への情報発信も重要だと考え、定期的に医療介護従事者向けの講演もしています。

 在宅医療は介護者の負担も大きいですし、地域によって提供できる資源に偏りもあります。在宅医療が万能だなどと思っているわけではありません。医療必要度が高い場合は、入院という環境の方が安心できる場合もあるでしょう。

 しかし、まずは在宅医療がどういうものなのかを広く知って頂くことが今は何よりも大事だと考えています。当たり前の治療の選択肢として病院か在宅かを選べるようになる社会を今後も目指していきたいと考えています。

医療法人すずらん会 たろうクリニック(強化型在宅療養支援診療所)
福岡市東区名島1-1-31
TEL:092-410-3333
http://taro-cl.com/


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