山本診療所 山本 哲郎 院長

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インスリン抵抗性解除を中心としたアプローチで糖尿病に挑む

1984 九大医学部卒業。東京女子医大糖尿病センター、米国メイヨークリニック臨床留学、九大病院総合診療部、那珂川病院総合診療科などを経て2011山本診療所開設

 糖尿病の有病者数は4億2200万人に達し、1980(昭和55)年の1億800万人から4倍近くに増加―。世界保健機構が発表したショッキングなニュースが、国内を駆け巡った。11月14日は「世界糖尿病デー」。福岡で精力的に2型糖尿病治療に取り組む、山本哲郎・山本診療所院長に話を聞いた。

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◎恩師の教えを胸に

 私は、九大医学部を卒業し、臨床糖尿病学を東京女子医大糖尿病センター教授の平田幸正先生に学びました。

 九大の先輩です。米国臨床医学の父と言われているウイリアムオスラー先生を彷彿(ほうふつ)とさせる臨床家で確固とした倫理観を持たれ、患者さんを大事にすることを自らにも私たちにも徹底した先生でした。

 患者さんの治療に悩むときには、「患者さんの傍に座って一日中考えなさい」と言われていたのを忘れられません。検査にしても、治療にしても、患者さんのためにならないことは、絶対によしとしませんでした。そのような行為は天に向かって唾を吐くようなものだと言われていました。

 その先生から「糖尿病診療は内科全体の知識が必要で、やりがいがある」と聞かされていたことも影響したのでしょう。循環器を専門にしたいと思った時期もありましたが、結局、糖尿病を選びました。

◎血糖と血中インスリン濃度をコントロール

 糖尿病には1型と2型があり、多くは2型です。1型の患者さんの場合、インスリンがほとんど出なくなっていますので、インスリン投与が必須ですが、現在増加している日本の2型糖尿病の患者さんはインスリン感受性低下(インスリン抵抗性)が主な病態であり、インスリン分泌は過剰になっている場合もあります。

 しかしながら日本人はインスリン分泌能が低いという固定観念が長年伝えられており、日本における2型糖尿病治療は、インスリン、インスリンの分泌を促すSU薬、DPP4阻害薬(新薬)が主流です。

 しかし、すべての2型糖尿病には程度の差はあれインスリン抵抗性がありますので、これらの薬を使って血糖を正常に維持しようとすれば、インスリン血中濃度を過剰に上昇させる危険性があります。

 血中のインスリン濃度が過剰に上がると(高インスリン血症)インスリンはホルモンであり毒性を持つようになります。細胞増殖作用があり動脈硬化や悪性腫瘍を進行させる危険性があると考えられています。高血糖の状態もよくないが、高インスリン血症もよくないのです。私は、現時点では、インスリンの血中濃度をできるだけ上げることなく血糖を下げる治療が最善の治療であると確信しています

 高血糖による三大合併症は、糖尿病性網膜症、腎症、神経障害です。かつては、この三つを抑えればよし、とされた時代でした。しかし、今は糖尿病の患者さんであっても心筋梗塞や脳卒中、がん、これらの予防を無視することは許されなくなっています。

 そのためには高血糖だけでなく高インスリン血症の治療が必要なのです。そのため私は二つのインスリン抵抗性改善薬を使っています。

 第一選択は、メトホルミン(メトグルコ®)です。これは、欧米では糖尿病と診断された時点で服用開始すべき薬剤であるとして広く使われている薬です。フランスで約60年前に薬草から開発され、低血糖を起こしにくい安全性のとても高い薬剤です。心筋梗塞、脳卒中、がんの抑制に有効であるという多くの研究論文があります。

 第二選択は、メトホルミン同様、インスリンに対する感受性を上げるピオグリタゾン(アクトス®)です。日本が作った世界に誇るべき薬剤です。脳卒中、心筋梗塞を予防する効果は現在の糖尿病薬の中で最強であると考えています。ピオグリタゾンについては、膀胱がんのリスクがあるというフランスの論文が過去にありましたが、最近では膀胱がんとの関連を打ち消す大規模研究の結果が出るなどほぼ否定されています。

 私はこの二剤を併用することが多いのですが、最近BMJという医学雑誌にメトホルミンとピオグリタゾンの併用が経口糖尿病薬の中で心筋梗塞、脳卒中の発症を最も抑制するという論文が出ています。

 また、新薬として、インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)、SGLT2阻害薬が出てきています。

 私は糖尿病の患者さんに新薬を投与することには慎重ですが、SGLT2阻害薬はインスリン濃度を上げずむしろ下げると言われており、従来の治療で改善の困難な方には期待できるかもしれません。

◎炭水化物を制限すると耐糖能が低下する

 糖尿病治療では、食事も大切です。

 75グラムブドウ糖負荷試験の前三日間は炭水化物を一日150グラム以上摂らないと負荷後二時間値が高値になり、糖尿病でない方も糖尿病型を示すという事実があります。このことはWHOのブドウ糖負荷試験のガイドラインでも明確に示されています。すなわち炭水化物を制限すると耐糖能(糖処理能力)は低下するのです。食後の血糖が上がりやすくなるのです。1935年のヒムスワースの研究以後多くの研究論文がありますが理論的には炭水化物摂取によりインスリン感受性が良くなるためだと考えられています。このことからも食事は、ご飯を最低一杯ずつは3食摂るように勧めています。(炭水化物約150グラム以上)

 また有名な「チャイナスタディ」で植物性食品の重要性が示されていますが、植物性食品が多く動物性食品もバランス良く含まれている昭和30年代の和食で減塩したものを勧めています。これらはすなわち日本糖尿病学会が長年勧めていた食事です。

◎EBM(Evidence-based Medicine)は真の科学ではない

 今、若い医師を中心にEBMが流行しています。EBMは、大規模臨床試験などから得たある集団の平均の情報を個々の患者さんに当てはめて治療方針を決めようという統計学で患者さんを診ようという考え方です。しかしながら、この考え方は生態学的誤謬(ecological fallacy)といって科学的ではないのです。ある集団の靴の平均サイズがわかっても各個人の靴は作れません。また大規模臨床試験は費用と時間の問題もあり追試は困難です。すなわち再現性が明らかでなく真の科学ではないのです。そしてメタアナリシスはあまりにも選択的排他的でこれも科学の原則に反しています。

 科学はフランシスベーコン以来、帰納的推論、すなわち個々の事実をあらゆる観察手段を駆使して正確に観察することによって新しい科学的発見を導いてきました。臨床医学はまさに個々の患者さんに対する帰納的科学的アプローチなのです。すべての患者さんは生化学的に違うという認識が重要です。

 また文献を読めば読むほど、どのような治療法に対しても賛否両論があり、さまざまな仮説があることがわかってきます。結局は、ガイドラインや大規模臨床試験をうのみにせず、多くの論文を読み、自分自身の珠玉の臨床経験に照らし合わせ、洞察力を駆使して一人一人の患者さんに対する最良の治療法を確立していくことが本来の学究的臨床医というものであり医師の自律性であると信じています。

「新しい2型糖尿病治療を考える会」

世話人 山本哲郎・山本診療所院長

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最良の糖尿病治療とは、を研究する会で山本院長が世話人を務める。「血糖だけでなく、血中インスリン濃度も可能な限り低値に抑える治療が最善ではないか」という臨床仮説に基づき、年に1回程度、会合を開催。糖尿病治療に関わる医療者の参加を受け付けている。

問い合わせは 山本診療所
TEL.092-414-7063へ

山本診療所
福岡市博多区博多駅前3丁目9番1号
TEL.092-414-7063
http://www.fukuoka-tounyou.com

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