香川県立中央病院 乳腺・内分泌外科 川崎 賢祐 部長

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多職種で情報を共有チーム医療で患者さんを支える

岡山県立岡山芳泉高校卒業 1998 高知医科大学医学部医学科卒業 岡山大学医学部第二外科(現・呼吸器乳腺内分泌外科)入局 2010 香川県立中央病院乳腺・内分泌外科(兼・香川県立がん検診センター)

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充実した検診体制

 私は2010年に旧香川県立がん検診センター(現・香川県立中央病院検診センター)と兼務で、当院の乳腺・内分泌外科に赴任しました。

 当時は乳がん検診で、マンモグラフィーが盛んに使われるようになってきた時期です。香川県立がん検診センターでは、マンモグラフィーに加え、超音波を併用した先進的な検診を採用しました。

 その取り組みが実を結び最も多い時で年間約1万例の乳がん検診を実施していました。

 2014年3月に当院は、この地に新築移転。そのタイミングで当院と、香川県立がん検診センターが統合。現在の香川県立中央病院検診センターになり、現在に至っています。

 検診センターでの乳がん検査は、県立がん検診センターでの検診法を踏襲し、マンモグラフィーと超音波検査を併用した、質の高い診療を提供しています。

すべての再建方法が選択可能

 症状が比較的軽度な人に対しては整容性の高い温存手術。腫瘍の大きい患者さんに対しては術前化学療法や、ホルモン治療をした後、温存手術を実施しています。

 乳房再建手術が必要な場合、形成外科医と相談し、さまざまな再建方法のなかから最適なものを選択、手術をしています。

 当院では「人工乳房による再建」「広背筋皮弁による再建」「血管接合をともなった腹部遊離皮弁による乳房再建」「腹直筋皮弁による乳房再建」が可能です。

 現在、考えられるすべての再建方法を選択できます。大学病院を除く市中病院で、すべての再建方法を選択できる施設は少ないと思いますよ。

家族性乳がん外来

 「家族性乳がん外来」が今年夏から本格的に稼働し始めました。これまで香川県には乳がん治療をしている施設で、遺伝子検査ができるところがありませんでした。

 女性がかかるがんの内、乳がんの割合は最多です。そのうちの5%が、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)だと言われています。

 5%と聞くと少ないと感じる人もいるでしょう。しかし、乳がんに罹患する人は年間6万人。そのうちの3000人はHBOCです。昨年、当院だけでも100例の乳がん手術を実施しました。そのなかにも5人くらいはHBOCの人がいた計算になります。

 その人たちを、これまでは見過ごしていたことになります。HBOCだとあらかじめ分かってさえいれば、病気の予防が可能です。HBOCの患者さんを、なんとかフォローしたいとの思いから家族性乳がん外来の開設に至ったのです。

 どうせやるのなら、見切り発車ではなく、万全の体制でスタートしようと思いました。そこで開設までの1年間、多職種参加の院内勉強会などを頻繁にして、チームで開設準備をしてきました。

 まだ船出したばかりで、実績はありません。でもいずれは「香川県の遺伝性乳がん医療といえば香川県立中央病院」だと言っていただくことが目標ですね。

乳がんの正しい知識を

 ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんは遺伝子に異常が見つかり、2013年に乳房を、2015年に卵巣と卵管を切除しました。また昨年は元プロレスラーの北斗晶さん、今年になってからは、タレントの小林麻央さんが乳がんを公表。マスコミは、それらをセンセーショナルに報じました。その結果、報道を見て「自分も乳がんでは」と不安を感じる人が急増しました。

 乳がんに対する市民の意識が高まるのは、ありがたいことです。しかし、マスコミの偏った情報を信じ、過度に振り回されてもらいたくはありません。乳がんに対する正しい知識を身につけてもらうよう、私たち医療者も正しい知識を発信していかなければなりません。

多職種で患者さんを支える

 がんと診断されてから手術まで1カ月ほどと、あまり時間がありません。その間に患者さんの家族的、社会的背景を鑑みた対応をしなければなりません。カウンセリングをし、患者さんに関わる全ての職種が、情報を共有しなければならないのです。

 乳がんの患者さんの多くは、40代〜50代。妻として、母として、家庭の中で大事な役割を果たしています。同様に社会人としても、重要な役割を担っています。

 発症年齢が若いので、仕事がある、家事があるなどで、通院するのが大変、休みが取れないなど、それぞれに事情を抱えています。個々人の事情に合わせた丁寧なフォローをし、多職種で患者さんを支えるチーム医療を何よりも心がけています。

二人の恩師

 私には二人の恩師がいます。一人は岡山大学病院乳腺・内分泌外科の土井原博義教授.もうひとりは高知大学医学部附属病院乳腺センターの杉本健樹センター長です。

 私は岡山大学第二外科(現・呼吸器乳腺外科)の出身です。土井原教授からは医師として、人間として、たくさんのことを学びました。私がチーム医療を重要視しているのは土井原先生の影響が大きいですね。自分一人でできることには限りがあります。組織として上手に周りの人と、協調することの重要性を土井原先生から学びました。

 高知大学の杉本先生は,大学の先輩でもあり学生時代の恩師でもあります。香川に赴任して以来公私ともに大変お世話になり、家族性乳がん外来開設に際してもいろいろとアドバイスを頂きました。

 いつの日か、お二人のような医師になることが私の目標です。

乳腺外科医を増やしたい

 乳腺外科医は、検診から治療、再発して治らない場合は終末期までと、一人の患者さんと長くお付き合いをします。

 他の科では一つのがんに対し最初から最期まで診ることはほとんどありません。しかし乳腺外科は違います。そこが魅力ですし、やりがいでもあります。

 残念ながら、乳腺分野を目指す人が少ないのが現状です。若い人たちに乳腺外科の魅力を知ってもらい、一人でも多くの人が乳腺外科を目指してくれるとうれしいですね。

香川県立中央病院
高松市朝日町1 丁目2 番1号
TEL:087-811-3333
http://www.chp-kagawa.jp/


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