産業医科大学 東 敏昭 学長

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自分の存在意義を考え、哲学する医師・医療人であれ

ひがし・としあき▶1978 慶應義塾大学医学部卒、同学部 衛生学公衆衛生学助手 1986 同専任講師 1988(4月)産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健管理学助教授、(10 月~ 1989 年9月)Sherbrooke University,CanadaおよびMcGill University,Canada 労働衛生学部訪問助教授 1992 産業医科大学 産業生態科学研究所 作業病態学研究室教授 1999 福岡労働局地方じん肺審査医(~ 2009 年2 月) 2002 産業医科大学学長補佐、福岡地方労働審議会委員(2009 年度~会長代行) 2004 産業医科大学 産業生態科学研究所所長(~2010 年3月) 2009 中央じん肺審査医 2011 ㈱デンソー北九州製作所 産業医・理事 2014 ~現職 【所属学会など】 日本産業衛生学会(副理事長、専門医制度委員会委員、許容濃度等に関する委員会委員)、日本衛生学会評議員、日本呼吸器学会、日本肺癌学会、日本産業ストレス学会理事、国際労働衛生学会(ICOH)など

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■健康の源は働くこと

 日本人は特にそうだと思いますが、仕事がなくなると心身ともに急激に老化して、病気にもかかりやすくなるようですね。

 本校の名誉教授で日本予防医学協会理事である神代雅晴先生は、こんな研究をされました。

 岡垣町に本拠を置くレストラン「ぶどうの樹」が、トラックで近所の農家のおじいちゃん、おばあちゃんたちが作った野菜を引き取りに行き、その代金を銀行口座に振り込むという仕組みを作り、運営しました。

 それまでは、みなさん高齢のために店舗に卸すほど大量には作れないし、自らトラックを運転して売りに行くこともできないから、自分の食べる分だけを細々と作っていた。気力も体力もすっかり落ちてしまい、病院に通うのが日課のようになっていたそうです。

 しかし、この仕組みが出来てからは、わずかな額でも、自分の作ったものがお金になったり、人の役に立ったりするとうれしい。そのうち「もっといいものを作ろう」という気持ちが芽生えてきました。

 さらに、仕事が忙しくてやりがいが出来ると、病院になんて行っていられなくなった。病気がよくなったわけではありませんが、症状が改善され、医療費は減ったのです。

 日本は少子高齢化が進んでいて、働き手が足りなくなる一方で、働き手を必要とする要介護者がどんどん増えていきます。そうした状況の中で、それぞれの適性や健康に配慮しながら、個々の働く人を支えていくことも産業医学であり、重要な予防医学の一端です。

 今までの予防医学はどちらかというと平均値でやってきましたが、今後は、個々の人にとって適切かつ生産性のある状態にすることが求められます。「その人にとっての健康とは何か」を突き詰めていくと、ますます専門性が必要になる。そういう教育を進めていくべきだと思います。

 産業医は、1972(昭和47)年の労働安全衛生法の制定によって、その仕組みが出来上がり、1996年に認定産業医の制度が出来ました。当時は、有害業務、危険業務に対すること、健康状態によって制限しなければならないことなどが産業医の仕事の中心でした。現在は、メンタルストレスへの対応や、精神的な問題による長期休業者に必要とされる休養や職場離脱を担保し、復帰をサポートすることなどが多くなりました。この対応は高次なものになり、時間もかかるので、それに適する形で考えていく必要があります。

 産業医はどんなことをすべきで、どんな教育をするべきか、ということもあるのですが、協働者(保健師、介護士、測定士など)と、どう役割分担するかも考えていかなければなりません。

■社会医学系専門医の重要性

 2017年4月1日から開始される新専門医制度では、初期臨床研修修了後、総合診療を加えた19の基本領域のうち、いずれかを選択するという方針が日本専門医機構から出ています。しかし、そうなると、多くの人々の基本生活を支える「公衆衛生」に関わる人たち、行政職、研究などを行う産業医などは何を専門にするのかが難しくなります。諸外国には、予防医学系の専門医制度があるのに、日本にはありません。ですから、その制度を日本専門医機構に認めてもらえるように、産業医学系だけでなく、公衆衛生関係者、研究職、行政機関、医系技官などのグループと一緒に、どういう基本教育を行うべきか、研修の体制や専門性の定義について議論してきました。

 具体的なカリキュラムや実施体制について、機構から承認をいただけるよう、働きかけているところです。社会医学系の専門性を早くから習得し、伸ばしてもらうことは、この国にとって、とても重要なことです。

 日本衛生学会、日本疫学学会、日本公衆衛生学会、日本産業衛生学会などでもシンポジウムを開き、進捗(しんちょく)状況の確認と、今後の社会医学系専門医のあり方に関する皆さんの意見を吸い上げることを並行して進めています。

■日本中への産業医輩出と地域貢献の両立を

 産業医については、学会の専門医制度は持っていますし、本学にはかなり高度な研修体制、学ぶべき内容についての改編を行う仕組み、産業医学の基本講座などもあります。国家資格である認定産業医制度があり、この資格がないと産業医契約が結べません。現在、労働者50人以上の事業所は産業医を選任しなければいけませんので、確かな需要もあります。

 本学の学是は、日本中から学生を集めて、日本中に産業医を送り出すことです。地元に医師を残すことは求められている役割ではありません。

 一方で、大学病院があって初めて医学教育ができる。産業医学教育を行うためには、総合的な診療ができる病院でなければなりません。加えて、大学病院である限りは、地域にとっての拠点病院として高次医療を提供できなければその価値はありません。両方のバランスを取っていくことが大事です。

 今後は、本病院に広く人を集めることで高次医療を維持し、関連病院との連携によって、専門医を育てる仕組みを作っていきたいですね。

■何をすべきか考える

 新入生は、医学部に入ったことがゴールではありません。自分で勉強する種を見つけて、一生懸命勉強してほしいですね。

 この先、AI(人工知能)はますます進歩していきます。診断や解析において、人間を超える日がくるかもしれません。だから、自分は何をすべきかを考えなくてはいけません。本学の建学の精神である「哲学する医師」であれということです。そのためには切磋琢磨(せっさたくま)すること、自分の存在意義を考えて常に技能を磨くことが必要です。それが時代に求められる医師になることだと思います。


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