地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立安佐市民病院 多幾山 渉 院長
DPC(DiagnosisProcedure Combination: 診断群分類包括評価)は、平均在院日数の短縮化や医療資源の効率的活用など、医療の効率的提供を目的として2003年に導入された。
DPCⅡ群病院は全国に99施設、大学病院分院や公的病院などが多くを占め、地域分布としては都心部に集中しており、Ⅱ群病院を持たない地域は15県にものぼる。
2014年に広島県で2施設目のDPCⅡ群病院となった、安佐市民病院の多幾山渉院長にお話を伺った。
「年に1〜2回、マツダスタジアムに病院スタッフ20〜30人でカープを応援しに行きます。パーティーフロアを借りきって、バーベキューパーティーをしながら観戦するのですが、私が応援に行った試合は勝ったためしがありません。今年こそは勝って欲しいものです。」と多幾山院長。
― DPCⅡ群病院の指定を受けるために、何らかの対策を行ないましたか。
これといった特別な努力や苦労はほとんどなかったように思います。
普段と変わらない診療を続けていたところ、運やタイミングといった不確定要素が味方してくれたようで、幸運にも指定をいただけました。
強いて言えば、医療従事者として患者さんに良い医療を提供できる病院であり続けるよう、当院が変わらずに努めてきたことが評価されたのかもしれません。
前回Ⅱ群になれなかった際、Ⅱ群の実績要件である「診療密度」「医師研修の実施」「高度な医療技術」「重症患者に対する診療」のうち、「高度な医療技術の実施」の指標である「外保連手術指数」がわずかに足りませんでした。
しかしそれは、保健局が調査する期間中に不足していただけで、調査後にはむしろオーバーしていました。また、前期研修医の受け入れが12人必要ですが、もし当院で研修予定の医学生が国家試験に落ちれば要件に満たなくなります。こういったことからも、やはり運とタイミングが大きく影響すると思います。
実際にはⅠ群やⅡ群と言っても、患者さんや一般の開業医の先生はピンとは来ないかもしれません。
Ⅰ群は高度な機能を持つ特定機能病院と位置づけられています。総合的な診療・教育を行なう、全国の大学病院の本院である80病院です。Ⅱ群は、Ⅰ群に準ずる診療機能を有する99病院、それ以外の1406病院がⅢ群です。
DPC発足時より設定されていた、医療機関ごとの診療特性の違いを補正する「調整計数」は、あと数回の改訂で「基礎係数」と「機能評価係数Ⅱ」に完全に置き換えられます。この「基礎係数」の設定にともなって、2012年改訂より、DPC対象病院はⅠ〜Ⅲ群に分類されました。Ⅰ〜Ⅲ群とは診療機能の優劣を表わすものではなく、提供機能や役割の分類とされています。
とは言っても、Ⅲ群よりⅡ群の方がイメージがいいでしょう(笑)。Ⅱ群になったからには、やはりⅢ群に戻りたくないとい
病院経営コンサルティングの分析によると、Ⅱ群を維持するためには「複雑係数」がギリギリとのことでした。
対策として、患者さんの平均在院日数を少し短くすれば係数が上がるのですが、そのことによって、患者さんと向き合う時間が少し減るような気がして寂しくも思います。
しかし、入院の必要性の少ない患者さんにできるだけ早く退院してもらうことによって、入院が必要な患者さんをより多く受け入れることができますので、在院日数の短縮はメリットも大きいですね。
ちょうどこの時期が対象調査期間中ですので、平均在院日数をできるだけ短くして欲しいと思っていますが、最近、新規入院患者数がやや少ないので、常にベッドは空いている状態です。その辺は、病院経営上、多少我慢が必要です。
― Ⅱ群となったことで病院のあり方は変化しますか。
当院は、広島二次医療圏の中でも大病院の多い南側ではなく、医療的に過疎である北側に位置しています。そのため、地域の基幹病院、最後の砦として患者さんの健康を守ることが、この病院が開設して以来の変わらない役割です。これは、Ⅱ群であってもⅢ群であっても変わりません。
既にでき上がっている制度を崩す場合、それが改革となればいいのですが、逆にパンドラの箱を開けてさらにひどい状況が飛び出すこともあります。システムや組織というのは、いろいろな物事が絶妙なタイミングで絡み合って機能しているものです。当院はまさに絶妙に機能している状態にあります。
また、当病院機構は今後より厳しくなるであろう経営状況を見越して、より効率的な小回りのきく組織にするために、黒字状態の時に独法化しました。
これらをふまえ、独立行政法人としての特性を生かしつつも、今は大きな変化を求めず、この良質な診療機能を維持・更新していくことが最重要であると思っています。