【特別寄稿】急性期らしさとは

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広島市立安佐市民病院 院長 多幾山 渉

多幾山渉(たきやま わたる) 1969 年に修道高校を卒業し、広島大学に入学。卒後同大学の原医研外科に入局し、広島赤十字病院外科、国立病院四国がんセンター勤務などを得て2010 年より広島市立安佐市民病院院長、安佐医師会副会長。学生時代は医学部に剣道部を作り、初代キャプテン。四国がんセンター勤務時代は食道癌関連の学会で「四国の先生」の二つ名で呼ばれた。

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広島市立安佐市民病院 院長 多幾山 渉

 平成26年2月21日付けの厚生労働省保険局医療課より、「平成26年度医療機関別係数及び(データー/病床)比について」の通知があり、そのなかで、広島市立安佐市民病院が医療機関群Ⅱ群となったことを知りました。前回は、外保連の係数が僅かに低くてⅢ群になり、悔しい思いをしましたし、今度もⅢ群だろうと思っていましたので、うれしさは盆と正月が同時に来たようなものでした。

 3月19日に全国の厚生労働省告示第91号が発表され、DPC対象病院の医療機関分類Ⅰ群80病院、Ⅱ群99病院、Ⅲ群1千406病院であったこと、広島県ではⅡ群の病院が1病院から2病院と増えたことなどが判りました。こうした状況のもと、Ⅲ群からⅡ群になった病院の院長の立場から、思うところを投稿させていただきます。

 前回は、医療機関群Ⅱ群は90病院、Ⅲ群は1千326病院で、Ⅲ群が全体の9割近くを占めていました。Ⅱ群病院は、大都会に集中している傾向があるため、地方にはゼロという県もまれではありません。中四国地方では、鳥取県、島根県、山口県、香川県、愛媛県がゼロでしたので、半数以上の県にⅡ群の病院がないという状況でした。DPC病院の間では、Ⅱ群が「ブランド化」しており、自院のホームページに誇らしくⅡ群であることを公開している病院も多く見られます。その上、Ⅱ群はⅢ群より基礎係数が高いため、Ⅱ群になることを目標に掲げるⅢ群の病院も少なくは無いと思われます。とくに、自院も含めて、前回あと一歩でⅡ群になれなかった病院では、2年間、何らかの努力をして、満を持している場合も少なくなかったと思われます。このような中、今年厚労省より医療機関別係数が各DPC対象病院に個別に通知されたのです。この通知の後、各医療機関からの疑義を検討した後に、最終結果が3月19日に公表されました。それを見ますと、DPC対象病院は全体で80病院増加し1千585病院となり、Ⅱ群からⅢ群へ移動したのは26病院で、自院のようにⅢ群からⅡ群に移動したのは35病院でした。中四国の各県のⅡ群の変化を見ますと、山口県が0から3病院へ、鳥取県が0から1病院へ、広島県が1から2病院へ増加しました。一方、香川県が1から0に減少し、残りの岡山県、島根県、徳島県、高知県、愛媛県に変わりはありませんでした。

 DPC制度は、導入より10年以上がたち、急性期病院の包括支払い制度として定着しつつありますが、まだまだ、一般の方にはなじみが薄く、制度の内容について説明を求められることも稀ではありません。とくに、前回2012年度改定で設けられたDPC病院群については、認知度は極めて低い状況と思われ「Ⅱ群病院がⅢ群病院より機能が優れている」といったイメージを持っている医療関係者は少なくないと思われます。Ⅱ群とⅢ群を分けるのは、①診療密度②医師研修の実施③高度な医療技術の実施④重症患者に対する診療の実施の4つの実績要件です。これらの要件は、病院の規模、地理的・社会的条件や、その地域での役割、他病院の状況等、さまざまな環境要因が影響してきますので、Ⅱ群はⅢ群より機能が高い病院と決めることは出来ないと思われます。しかし、より高い基礎係数が設定されていたり、病院数が極めて制限されていたりという状況から、やはり、Ⅲ群からⅡ群に上がりたい、Ⅱ群を引き続き維持したいと思うのは、仕方がないことのように思われます。当院が前回Ⅲ群になった時には、病院幹部で落胆しない者はいませんでしたし、この度Ⅱ群になったことを病院関係者に報告すると、みんな大変喜んでいました。しかし、それも束の間で、喜びは、「どうしたら次回も維持することができるか」というプレッシャーに変わって行きました。

 DPC制度により、全国の病院の診療データーをすべて手中にした厚労省は、そのビッグデータをもとに、中医協を通して、医療政策を実施しています。中医協の下部組織である診療報酬調査専門組織(DPC評価分科会)では、Ⅲ群の細分化を含んだ医療機関機群分類の議論が、今後、本格化していきますので、どのような分類が出来上がるのか注目して行きたいところです。もっと国民に解りやすい、各病院にも受け入れやすいものが出来上がることを期待していますが、取敢えずは、この2年間をどう乗り切るかが喫緊の課題です。すべてをお見通しの厚労省をお釈迦さまに例えるなら、DPC対象病院は、お釈迦様の巨大な手の中で翻弄される孫悟空でしょうか。お釈迦様の意に沿って如意棒を振り回さないと、ひどい目に遭わされそうです。DPCⅡ群になったことを、「高度急性期病院として今よりもさらに病院機能を充実せよ」とのメッセージと考え、今後の病院の向かうべき方向を「急性期らしさの追求と挑戦」と考え、2年後を目指そうと考える次第です。


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