徳島健康生活協同組合 徳島健生病院 院長 佐々木 清美
昭和39年に有床診療所から始まった徳島健生病院は、現在4病棟186床。162の一般病床と、24の回復期リハビリテーション病床をあわせ持っている。基幹型臨床研修病院として、若手人材の育成には熱心だ。平成23年からは無料低額診療事業を開始した。また同年、2次救急告示を再開している。取材に同席した松田大亮事務部長によると、佐々木院長は病院初の女性院長。男女を同様に扱う気風が院内にはあるという。
取材は外来がひと段落した時間帯に行なったため、佐々木院長が一声をかけると女性職員がすぐに集まった。やりとりを見て、院長と職員の仲が良いことが感じ取れた。院長の趣味は読書。最近読んでおもしろかったのは、姫野カオルコの直木賞受賞作である「昭和の犬」。
当院の外科副部長を経て昨年6月から院長をしています。今も院長業務と外来診療手術など忙しく過ごす日々です。ただ自分で執刀することは減ってきており、正直寂しいこともありますね。熱心明晰な若手にどんどん経験をつんでもらい、自分の学んできたことを伝えられるよう努めています。
未来を担う人をどのようにして育成するかというのは、今後も最重要課題であり続けるでしょう。
香川医科大学卒業後、同大学第2外科で4年間在籍し、出身地の徳島に戻り当院に就職しました。以後20年ずっとここで働いています。学生時代に実習で暖かく迎えていただいたご縁で、ここに決めました。そのときに感じたいい空気を今後も守っていけたらいいなと思います。
当院では現在も医学生向けに病院の実習や地域医療フィールドワークを毎年実施しています。へき地で実際に生活状況を目で見て、肌で感じてもらうんです。
医師、看護師を講師に医療学習会も実施しています。また、医学部志望の高校生を対象とした1日医師体験という企画も行っており、多数の参加者があります。評判がよく、第一線病院の息吹を感じていただけていると
副院長は内科の女性医師です。厳しい医療体制の中、同志としてともに戦ってくれ、私の行き過ぎ早とちりを正してくれ、力を合わせて歩んでくれる存在はとてもありがたいと感じています。ちなみに、当院の医師は子だくさんが多く、女性医師の中では子供二人の私がいちばん少ないです。子供が小さい時期などは周りの男性医師から有形無形の配慮をいただいて、のびのびとやってきました。無知で不遜なだけの若い時代、先輩医師のみならず患者さんや看護師集団から教わってきたさまざまなことも、自分の中で少しずつ育ってきて、やっと実を結びつつあるようです。
当院は徳島健康生活協同組合が運営する医療生協の病院です。43,500人の組合員の方がおられ、その方たちの出資金で運営する形態をとっています。
病院東館の入り口。公道上に渡り廊下があり、西館に続く
西館の遠景。住宅地の中にある、市民の生活に近い病院だ。外来機能は東館にあり、西館には入院や手術のための機能が集中している。診療科は内科・外科・整形外科・眼科・透析科
生協内には他に医科診療所、歯科診療所、介護事業所があります。歯科は、病院に隣接してがあり、緊密な連携をとってきました。口腔内をきれいにたもつことや自分で噛むことの重要性が、肺炎や認知症の予防になると昨今クローズアップされていますが、当院では歯科医師の指導のもと、口腔ケアにも力をいれています。
病気やけがの治療だけでなく、組合員の健康を守るというスタンスも持ち続けています。組合員の方が組織した班会に、病院職員が出向いて、健康相談、啓蒙活動、尿チェック、血圧測定なども行ないながら、健康に対する意識を高めていくということも医療生協の病院ならではの取り組みです。また、組合員さんが主体での健康ウォーキングも県下各地で行なわれています。「地域まるごと健康づくり」が当生協の最終目標の一つです。
組合員でない方でも同じようにかかれる病院で、組合員比率は7割から8割です。新患の方が続いて利用してくださるようになり、組合員となってともに健康づくりをめざしていけたらいいなと思います。
過去には医師体制の厳しさから救急告示を取り下げていた時期もありました。依然厳しい状況にはあるものの、職員の努力で平成23年から告示再開をし、2次救急病院として復活しています。
小さい医局のいいところは、相談のしやすさだと思います。一人の患者さんを、日常的に多科の医師で診やすい環境です。
高齢になればなるほど難しいパズルのように、いろんな疾患や生活背景を抱えた人が増えてきます。自分の専門領域を診ていればそれで良いということではなく、トータルで一番良い状態に持っていくことが重要になる時代です。
また、病院で完結する医療でなく、在宅療養も視野にいれてすごしやすい環境を整えるという視点も求められています。その目的をかなえるために、診療科の壁なく相談し合える環境があることはとても有利です。
当生協は診療所、訪問看護ステーションなど、在宅医療を進める上で不可欠な組織ももっているので、職種の壁をこえたカンファレンスも行なっています。ひとりひとりと密にかかわりながら、最適の医療を提供することがアピールポイントです。現在、病院の機能分化がどんどん進んできています。基幹型の大病院では腰をすえて療養するということができなくなっています。自宅療養できるようになるまでの中継を担う役割、在宅療養をしている方の病状悪化時の入院も担う役割も当院に求められるものであると思います。今後さらにこれらの医療機関との連携を深めていきたいです。
東館は昭和48年、西館は昭和61年の落成です。老朽化はいかんともしがたく、現在取り組んでいる最重要課題が新病院建設です。新病院建設を成功させ、今まで同様に地域の組合員とともに医療生協の病院として、地域になくてはならない病院を目指していきます。