これがＡＮＫ免疫細胞療法
リンパ球バンク㈱ 藤井真則社長に聞く ②
1984 三菱商事入社。バイオ医薬品部門において欧米のバイオベンチャー2000社以上と接触、医薬品メーカー、大学、政府研究機関等とも共同で新薬、ワクチン、診断薬などを開発。エビデンスを構築し、日本の医薬品メーカー等へのライセンス販売を行う業務などに従事。「薬でがんは治らない」現実に直面し、2004 三菱商事企業投資部門時代に「細胞医療によりがんから生還を目指す」リンパ球バンク株式会社に投資、同社社外取締役に就任。2007 同社代表取締役社長。現在に至る。著書に「がん治療の主役をになう免疫細胞」現代書林刊行1,365 円（税込）がある。
ー最近、免疫系のがん治療への注目度が高まってきていますが、中でもＡＮＫ免疫細胞療法（ＡＮＫ療法）は、他と一線を画していることが認知されてきたようですね。
国内の免疫系治療は安全で副作用がないかわりに治療強度が弱く、がんを攻撃するよりも延命やＱＯＬ改善を目的としていますが、ＡＮＫ療法は治療強度の強い米国ＬＡＫ療法を更に強くしたものです。
―一方、免疫細胞療法は、エビデンス（臨床上の証拠）がないという批判もあります。
米国ＮＩＨが主導したＬＡＫ療法の大規模臨床試験によって、血液数十リットル相当分（体外循環）の免疫細胞を集めて強く刺激し体内に戻せば、標準治療が奏効しない患者さんでも、概ね全症例で効果が見られ、大きな腫瘍が壊死を起こして再発しないなどの著効例も得ています。本格的に実施すれば効果があることは証明されているのです。逆にいえば、中途半端な免疫細胞療法は十分な効果を期待できないというエビデンスでもあります。
―様々な免疫系治療の見極めのポイントは？
がん患者さんの免疫はがんの増殖を許した、つまり体内が強い免疫抑制状態にあります。その上で、効果を発揮する仕掛けなのかがポイントになります。がん患者さんの免疫細胞でも、体外で強く刺激すれば、直ちに、どんながん細胞でも攻撃するようになります。つまり、がん細胞が抗原を変化させて免疫の攻撃を逃れているのではなく、シンプルに免疫細胞が眠らされたようになっているのです。「叩き起こす」仕掛けが必須なのです。米国ＬＡＫは免疫抑制の一発爆破を狙い、副作用も激甚でしたが、ＡＮＫ療法は、米国ＬＡＫをＮＫ細胞数でもＮＫ活性でも上回る破壊力を、週２回ずつ12回に分けて体内に戻し、少しずつ免疫抑制の壁を押し戻すのが特徴です。ですが、強い免疫刺激には必ず免疫副反応を伴い、結果として点滴の度に高熱が出ることは避けられません。
―安全性はどうなのでしょうか？
最近、ｉＰＳ細胞が話題になりますが、遺伝子改変を伴い、がん化のリスクがあります。その点、免疫細胞療法は、本人の細胞をそのまま活性化や増殖の上、本人に戻すので遺伝子操作などを行わない限り、原理的には安全です。もちろん、病原体が混入しない、他人の細胞と間違わないといった基本的な安全管理は必須です。米国の大規模臨床試験のみならず、数十年の治療実績があるので、基本的な安全管理手法が確立しています。
―将来は免疫治療が標準治療にとってかわるのでしょうか？
そうではないでしょう。標準治療は、短期間に大量のがん細胞に打撃を与えるのが得意ですが、飛び散るがん細胞の反撃を受けると手に負えなくなります。逆に、ＡＮＫ療法は、一つずつがん細胞を潰すので、数や勢いで押されると負けてしまいます。進行がんとの闘いは甘くありません。患者さんの命を救うには、あらゆる治療の特性を活かして総動員する集学的な治療を行うべきと考えます。
