リンパ球バンク主催による広島で初のがん免疫セミナー

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藤井代表取締役社長は、時に手ぶりを加えながら分かりやすく説明をした。

 広島市中区のリーガロイヤルホテル広島で3月29日、リンパ球バンク㈱(本社東京都千代田区)が市民向けにがん免疫細胞療法セミナーを行なった。同社の提携先である東洞院クリニック(京都市中京区)が提供するANK免疫細胞療法(ANK療法)を説明するもので、同様のセミナーは全国各地で、月に数回ほど行なわれている。

 同社によると「広島県内でも、保険会社などが主催するセミナーで講演を行なったことが数回あり、県内の患者が京都まで頻繁に治療に通ってきた。患者の利便を向上させようと、広島県内の医療機関がANK療法の導入に踏み切り、今回当社主催としては初めて広島県内でセミナーを開催することにした」とのこと。

 同社は福岡市博多区に本社を置く㈱千鳥饅頭総本舗の前社長原田光博氏の尽力により2001年に設立された。90年代に京都大学で研究されていたANK療法を同氏が受け、寛解したことをきっかけに、この治療法を普及させる目的で創立されたという。リンパ球バンク㈱は細胞培養センターを医療機関に提供するなどの支援業務を担っている。

 ANK療法では、5から8リットルの血液から採取したNK細胞(ナチュラルキラー細胞)を、原則3週間培養し、100億個ほどに増やしたのちに点滴によって戻す。条件が合えば無料でCTL(キラーT細胞)も培養する。培養細胞は凍結保管可能なので、任意の時期に点滴可能とのこと。入院の必要はなく、費用は1クール(12回の点滴)当たり、およそ400万円。

 リンパ球バンク㈱の藤井真則代表取締役社長は、「がんは腫瘍免疫が本来の機能を発揮しないように抑制された状態、つまり免疫病という一面がある。腫瘍免疫を強力に目覚めさせれば、進行がんであっても、寛解後再発しない可能性があることが確認されている。しかしがん患者の免疫抑制は非常に強く、コーリーの毒といわれる致死レベルの危険なものを投与しない限り、十分な効果は期待できない。そこで、免疫細胞を免疫抑制が及ばない体外で活性化して体内に戻す免疫細胞療法が考案された。これは米国政府機関主導の大規模臨床試験により有効性を証明したエビデンスが存在する」と説明し、「NK細胞は通常増殖させると活性が下がるため、培養が非常に難しく実用化が困難。培養が容易なT細胞や樹状細胞を用いるもの、あるいはNK細胞の活性や数が不十分なものが普及している。しかしANK療法は、京都大学の研究者が臨床上の実用レベルでNK細胞の活性化と増殖を両立させる培養技術を確立したもの。活性化と増殖、両方の意味で増強された(Amplified)NK細胞という意味で名付けられた。高度に活性化された100億個レベルのNK細胞は非常に強力な免疫刺激能力をもち、一度に戻すと危険なので、12回にわけ、週2回のペースで戻していく。通常、点滴ごとに発熱などの強い免疫副反応があり、40度前後に達することも珍しくない。他の免疫細胞療法には見られない特徴だが、それだけ、強い治療であることの証だ。延命やQOLの向上、寛解に留まらず、再発や転移を抑える事実上の完治を目指すもの」と、他の免疫細胞療法とは違いがあることを強調した。活性化したNK細胞は、がん細胞を直接攻撃するだけでなく、サイトカイン類等の大量放出によって他のNK細胞を活性化させるほか、CTLを呼び寄せ活性化させるという。

 単独で進行がんを治療することを目的として開発された療法だが、標準治療との併用は費用対効果の観点からものぞましく、特に欧米で主流になっている分子標的薬やホルモン療法とは同時併用が効果的だという。そのために、標準治療で免疫細胞がダメージを受ける前に培養・保管してほしいと訴えた。同氏は「標準治療が奏効しなくなった後では、打つ手が限られてくる。がんと診断されたら、少しでも早くANK療法実施医療機関へ相談に来ていただく方が、打てる手は多く、治療計画も立てやすい。がんが発生部位にとどまる限局性のものなら、標準治療だけで完治を望めるが、分散するタイプのがんだと、結局、再発・転移となり助からないケースがほとんど。ANK療法は、飛び散るがんにとどめを刺すのは得意だが、一方がん細胞の数が多すぎたり、勢いが強すぎると押されてしまう」と説明した。高額費用がかかることもあり、提携医療機関で面談し、納得がいくまで検討したあとに、この治療を選ぶかどうかを決めて欲しいと発言した。

 セミナーの最後には、診療を終え駆け付けた広島大腸肛門クリニックの中島真太郎院長が挨拶をし、提携機関になった経緯と意気込みを語った。院長は広島大学第2外科の出身で、標準治療のみの治療に限界を感じたという。

 質疑応答では多くの質問がなされ、市民の関心の高さをうかがわせた。

Q どういった保険が適用されるか。

A 民間保険を使うしかない。生命保険の生前給付特約や、診断給付型のがん保険などを活用される方が多い。先進医療保険は保険料が非常に安いが、それだけ実際に使えるケースは稀。抗がん剤である分子標的薬も日本では、ごく一部の部位のがんにしか保険適用にならないように、新しいものはほとんど保険適用になっていない。薬には該当しない免疫細胞療法は、保険適用を申請する制度が事実上、存在しないに等しいので、根本的に医療制度を変えないと公的保険適用の可能性は極めて低い。

Q 人員は十分なのか。

A 患者数の増加を見越して培養にあたる技術員は増員しているが、もちろん、急に何倍もの患者が殺到すれば対応できない。今のところ、培養の順番待ちということはない。NK細胞の培養ができないところが上場し、そうしたところの治療法が有名になるので、リンパ球バンクは上場すべきなのかもしれないが、一方、上場すると急激に患者が殺到するので、慎重に考えている。


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