鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 腫瘍学講座 消化器・乳腺甲状腺外科学 教授 夏越 祥次
―ギターを弾かれるそうですね。
鹿児島大学病院新病棟の屋上で桜島を背景に撮影。寒いのは苦手で、それに比べたら灰は気にならないとのこと。夏越教授は、鹿児島でも広島でも路面電車はあまり利用せず、ミュンヘントラムのこともよく知らないそうだ。留学時代はUバーン(地下鉄)をよく利用したらしい。
若い教室員とSurgeonsというバンドを組んでいます。ギターは昔やっていましたが、もうずっと触っていなくて。医局で披露するようになってから練習を再開しました。私が弾かなくても、周りが上手なので大丈夫なんですけどね。
教授になってからは春に新入局員歓迎会でバンドを披露しています。病棟の看護師さんたちやラボの事務員、学生・研修医も来ますし、たくさん集まります。そこで皆さんに芸を披露してもらうわけですが、私が何もしないのは申しわけないので、私も何かやった方が盛り上がるだろうと。それで若い人が3人でやっていたバンドに入れてもらったのです。初めは一回だけのつもりだったのですが、もう毎年やっています。最後にはかならず長渕剛の「とんぼ」を歌います。鹿児島ですから好きな人も多く、私の中では得意な曲になっています。そのほか、去年は松山千春の「長い夜」などを歌いました。しかし歓迎会ですから若い人に楽しんでもらわないといけないし、古い歌ばかりも歌えません。バンドメンバーすら知らなかったりしますしね。それで今年は斉藤和義の「やさしくなりたい」も歌いました。
うまいヘタは別として、盛り上がれば良いわけです。開放的なムードで楽しんでもらうことが目的ですから。
外科の仕事はストレスがかかります。だから楽しむときは楽しんで、翌日からの仕事への鋭気を養わなければなりません。息を抜くべき時には抜くのが外科医には大事です。
―教室の名前の由来は。
以前は第一外科でしたが、腫瘍制御学消化器外科学に改められました。その時は消化器と呼吸器、乳腺、甲状腺を診る外科の教室でした。その後呼吸器外科が独立しましたので、今の消化器・乳腺甲状腺外科に改めたわけです。腫瘍制御では含む範囲が大き過ぎる名前だし、患者さんにも分かりづらいですよね。私は紹介する時に毎回フルネームを言っていますが、少し長くて言いづらいです。消化器をやっている教室員は消化器外科、乳腺を診る教室員は乳腺外科と名乗ればいいのですが、私は教授なので毎回全部を言うように努めています。
―九州大学病院別府病院に医局員を出されているそうですね。
病院長の三森功士教授(本紙589号に特集記事)は素晴らしい研究をされていますから、ぜひ勉強させてほしいと思って行ってもらいました。以前から何人か勉強に出していたんですよ。
私は海外や国内の大学・病院に勉強に出たい人は、なるべく留学させるようにしています。若い人にはチャンスを与えたいですね。若い時に刺激を受けることは、少なくとも損にはならないと思います。打たれても立ち直りやすいですしね。そして、それぞれが学んだ良いところを持ち帰ってもらって、教室を活性化して欲しい。教室の中だけでやる人ばかりだと、どうしても時代遅れになり、井の中の蛙になってしまいます。
出張病院の医師不足という問題もあり難しいのですが、留学にも積極的に行かせ、世界の手技や研究で刺激を受けて欲しいと思っています。医学だけでなく、海外で生活をするという経験も、旅行とは違い、さまざまな苦労がありますから、医師としての成長につながると考えています。しかし外科医は手技をおぼえたり専門医の取得を考えると、卒後4・5年で留学ということは難しい。悩ましいところです。
―医局紹介のウェブサイトがユニークです。
学生や研修医は、医局の情報を得るためにインターネットを利用します。特に県外に出ている人にアピールするにはウェブサイトが重要だと考えました。それで医局内に専門の委員会を立ち上げました。今は1か月に1回更新し、ドラマ仕立てで楽しんでもらっています。Surgeons の動画も観られますよ。マンガみたいな絵を使っていて、私は初め、軽くみられるんじゃないかと反対したのですが、製作の中心となる又木雄弘先生が強くこれを推しましたので任せました。結果好評で、毎月千500人から2千人が観ています。医局のサイトとしては多いほうだと思いますよ。興味を持ってくれたあとに、業績や研究を観てもらえたら良いですね。又木先生は学生や研修医の面倒をよくみてくれていますから、若い人の気持ちが分かるんでしょうね。そういうことにも秀でた彼が医局にいたのは、本当にありがたいことです。