若い外科医には大きく育ってほしい

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鹿児島大学医歯学総合研究科 消化器・乳腺甲状腺外科学教授 夏越 祥次

取材を終えると夏越教授は「仕事一徹のまじめ人間と書いてください」と気さくに笑われた。お話を聴くと、特定の趣味はないらしいし、仕事が好きなことにも疑いがない。そして間違いなく真面目だ。しかし知識の範囲が広く、こちらがどんな話をしても、面白い話に変わって出てくる。そして交友範囲も広い。話題の豊富な、明るい先生だった。

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研究室で撮影。夏越教授の生まれた鹿児島、学んだ広島とミュンヘンは、三都市そろって路面電車の走る街だ。そのことを聞きそびれ、あとで惜しいと思った。(平増)

―先生の研究について教えてください。

私の教室では消化器と乳腺甲状腺を手広く扱っています。専門性は大事だと思いますが、外科医は出来るだけ広い範囲の仕事が出来た方が良いので、若いときは特にいろいろな疾患を診たほうが得だと思いますね。極端に言えば、内科など他科に学ぶことも多いのです。これは特に、臨床で活きてきます。

地方には大きな病院がそう多くはありません。

だから地方の大学病院には、一般の病院では難しい症例を扱うという使命があります。癌自体は小さいなど、疾患自体はそう難しくなくても、心臓が弱っている、糖尿があるといった合併症の患者さんの手術もやはり難しい。

鹿児島大学には「県内の難しい症例の患者さんが、県外に出なくても診療が受けられるようにする」という、最後の砦のような意義があります。全部の患者さんの受け皿にならなきゃならない。

だから一般病院の先を行くような研究が大事ですね。一般病院では時間も限られていますし、研究費の問題もあるでしょうから、大学病院には研究をリードするという使命もあります。

医師にはいろいろなタイプがありますが、私自身は「臨床と研究の両方が重要」というスタンスでいます。臨床は医師の基本ですが、1つのことをつき詰める研究もまた重要だと思います。研究という行為が、将来の臨床家としての糧になることは間違いないことです。そして研究の際の困難がまた、強い医師を育てると考えています。

臨床家としての医師は臨床に直結した、次の世代で標準的な治療になるような研究、いわばトランスレーショナルリサーチをやるのが良いと私は考えています。

―言葉の端々に教育者としての顔が垣間見えます。

大学病院の目的は、診療と研究に加え、教育ですよね。教育は他の病院ではなかなか力を入れられないところだと思いますから、大学は教育にも力を入れるべきだと考えています。私は患者さんを診るのが大好きだし、手術も好きだし、臨床だけをやっている方が楽かも知れませんが、これは宿命ですね。でも後輩の論文を読むのも好きですし、向いているかどうかはともかくとして、人の成長に関わることが好きなのかも知れません。

と言っても病院の経営にまったく関心がないわけじゃないのですよ(笑)。大学病院の収益の話などもちゃんとしていますが、今はどうしても若い人を育てることに力を入れなければならない立場なので。もちろん協力するようにはしようと、思ってはいるのですけどね。

昔は花形でしたが、最近では若い医者の外科離れがおきています。外科というのは緊急の手術も求められますし、一つの病院に数人いればよいというものではありません。外科医不足が地方においては深刻な問題になっています。なので若い人たちに、外科の魅力を伝えられる教育者でありたいですね。

外科医は目が悪くなったり、手先が器用に動かなくなるとメスは置くもので、内科医などに比べると現役の期間が短い傾向にはあります。ですが、最近はダ・ヴィンチのような、手術を支援するロボットの技術も発達していますから、外科医としての寿命は今後延びると思います。うちの大学にはまだないので、早く導入して欲しいですね(笑)。私が最初に触ったのは韓国ですが、韓国ではダ・ヴィンチの導入に力を入れているようです。消化器の分野に限れば、ダ・ヴィンチでの症例数は韓国の医者が世界一だと思います。残念ですが今後日本から韓国に研修に行くケースもあるかも知れないですね。

―先生にとって外科の魅力はなんですか?

一つは全身を診てあげられるということですね。私が外科医になった動機でもあるのですが、治してあげられる範囲が広いことです。もう一つは、私は癌を治す外科医なのですけれど、自分の診断したものを自分の手で切り取って、正解であったことを確かめることができるということです。そうして自分の診断能を高めていける、ということが魅力だと思います。

ただし今、癌の治療は切るのみではなくなっています。抗癌剤が効くようになった、放射線が効くようになったと、治療の方法は一つではなく、患者さんに合わせて選べるようになりました。だから他科の方法を知っておくことは外科医にとってプラスなのです。

メス1本で全部治せると考えるのは、外科医のおごりだと思います。外科手術は患者さんを元気にするための1つの手段だと気付いた時、良い外科医になれると思います。

―他の科目の医師と交流があるのでしょうか。

一般病院ほど小回りは利きませんが、それはありますね。外科の先生とも仲が良いですが、他科の先生、特に専門分野の癌に関わっている先生たちとはコミュニケーションをとって、患者さんごとにどんな治療をすべきか話し合っています。

ここ10年ほどはゴルフの誘いを断っていて、付き合い悪いと思われていますが、飲みに行ったりはしていますよ。仕事では関わらない、個人的な付き合いの先生とも行きますが(笑)。

あと、学会に出席した際に、普段会えない先生と飲むのは楽しいですね。よその大学の同じような立場の先生と飲んで、医療のことや指導方法なんかを参考にさせてもらっています。

―先生はどんなお酒が好きですか。

鹿児島にいるので焼酎というイメージを持たれるかも知れませんが、私はビールが特に好きですね。焼酎も悪くありませんが、仕事終わりのビールは格別です。それとワインを飲みます。学生時代はバーボンもたしなみました。

ミュンヘンに留学していたのですが、ドイツはビールと白ワインが美味しい国です。あ、その時覚えたわけじゃないですよ(笑)。向こうにはすごくビールの種類があって、結構飲んでいましたね。公園なんかで1リットルくらいのピッチャーで飲むのですが、美味しかったですね。ドイツは夜も明るい国ですから明るい時間帯に飲んでいました(笑)。ソーセージも美味しいですよ。ぜひ行かれて下さい。ワインも本場のため安く、スーパーマーケットで5マルク(350円くらい)も出せば上等なものが買えました。あまり舌は肥えてないので良く分からなかったのですが、上等だったようです(笑)。


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