組織化で漢方薬の研究を進める

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鹿児島大学大学院心身内科学 教授 乾明夫

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鹿児島に来たばかりの頃は、火山灰の降る量を知らなかったそうだ。趣味はソフトテニス。鹿児島大学医学部自体がソフトテニスには強く、現在は顧問をしている。教授室に飾られた賞状・表彰状は鹿児島大学医学部へのもの。

 鹿児島大学病院心身医療科は、草創期を含めると40年あまりの歴史を持つ。摂食障害や生活習慣病を中心に、過敏性腸症候群、機能性胃腸症、慢性疼痛などの心身症およびストレス関連疾患の治療を行なう。また専門外来として和漢診療外来があり、漢方薬を用いた治療を行なっている。

 鹿児島大学病院で漢方を扱うのは心身医療科だけではない。しかしこれまでは、それぞれの科が独立して処置をしていたにすぎない。それを連携させ組織化するため、鹿児島大学病院は昨年、漢方診療センターを作った。その特徴は、院内の講座間や診療科の垣根を越えて臨床に応用している点で、医科と歯科がともに参加していることも珍しい。そのセンター長に就任したのが、心身内科学の乾教授である。「西洋医学も東洋医学もお互い向き合い評価しあうのが臨床症例。双方の特徴を良く理解し、互いに協力して研究を発展させたい」と乾教授は言う。

 乾教授の研究課題の一つは、コルチコトロビン放出因子(CRF)を抑えることによって、癌悪液質(グレリン抵抗性)を改善させること。

 癌の化学療法に際しては、食欲不振や消化管障害など抗癌剤の副作用が問題となる場面がある。また体重減少を示す患者は抗癌剤に対する耐性が低く、減少のない患者に比べて予後が悪い。

 乾教授によれば、食欲低下にはCRFが関わっていたことが明らかになり、また漢方薬の六君子湯を投与すると、CRFが減ったと言う。六君子湯は消化管ホルモンであるグレリン放出薬としての意義を持つそうで、そのメカニズムも徐々に解明されつつあるという。

 「全身の栄養状態のみならず、不安という要素にも作用する六君子湯の意義は大きい。悪液質が発症する進行癌患者ではQOLの改善に重点が置かれる傾向にあるが、栄養状態、精神状態を改善することによって、生存期間が改善するという報告もある。今後は癌細胞を直接叩くだけではなく、全身状態の改善を通じて延命を目指す治療の可能性も考えたい」とのこと。

 この研究の他にも、漢方診療センターではエビデンスレベルをより高める臨床研究が進められている。緩和ケアなどに漢方薬を応用したいとのこと。

【略歴】
1978年 神戸大学卒 神戸大学医学部附属病院医員(研修医)
1979年 西脇市立西脇病院内科医員
1984年 神戸大学大学院医学研究科修了 神戸大学医学部助手任用、病棟医長を兼務
1997年 同講師
2000年 同助教授
2001年 神戸大学大学院医学系研究科応用分子講座消化器代謝病学分野助教授
2004年 神戸大学病院糖尿病代謝内科診療科長
2005年 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科社会・行動医学講座行動医学分野(現心身内科学分野)教授および鹿児島大学病院呼吸器・ストレスケアセンター心身医療科診療科長任用
2007年 鹿児島大学病院病院長補佐
2008年 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科国際統合生命科学研究センター長および鹿児島大学病院呼吸器・ストレスケアセンター長
2009年 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科健康科学専攻長
2012年 鹿児島大学病院漢方診療センター長

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