「理想の病院」を医師の力で現実に

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医療法人宏仁会 メディカルシティ東部病院 病院長 東 秀史

1974 鹿児島大学卒、鹿児島市立病院放射線科研修医 1976 宮崎県立宮崎病院麻酔科・外科研修医 1979 国立赤江診療所厚生技官 1997 宮崎医科大学医学部外科学第一講座講師 2005 都城市郡医師会病院病院長 2009 海老原記念病院病院長 2010 病院の名称変更に伴いメディカルシティ東部病院病院長

都城にあるメディカルシティ東部病院の前身「海老原記念病院」は、もともと132床の「老人病院」だったらしい。それを100床の一般急性期病床と、32床の療養病床に切り分けた。こうして医師たちは、兼ねてから抱いていた夢を具現化した。その夢を中心に聞いた。

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都城市郡医師会病院の院長時代、宮崎県内で初めてDMAT を作った。災害医療を訓練するため、負傷者のいるすべての交通事故現場に医師会立病院の医師が赴き、泥だらけになって診たらしい。今も近隣の事故には医師会立病院の医師が向かう伝統があり、小林市など遠くの事故現場からは、メディカルシティ東部病院に要請があるそうだ。

―新しい病院ですね。

 院長になって一年後、平成22年から新築しました。この病院は、私たちが都城市郡医師会病院に勤めていた時に考えた、「理想の病院」がもとになっています。当時勤めていた医師からたくさんのアイデアが出たのですが、医師会立の病院では実現に時間がかかりそうでした。それで当院の海老原理事長に「理想を現実にしたいので病院をください」と相談したところ。面白かったらしく私たちの夢に乗ってくれた。理事長も現状に不満で、地域にもっと貢献したいと思っていたようです。
そういう経緯いで、医師会立病院から9人移ってきました。だから当院の医師はみんな部長クラスです。小林副院長はICUのチーフでしたし、小金丸先生は麻酔科のチーフ、瀬口医局長は外科のチーフ、翁長先生は消化器内科のチーフでした。

 病院はもらえましたが、夢を形にするにはまだお金がかかります。それで、それぞれの医師が資金を募りました。やってみると、いろんなところが協力してくれましたから、それだけ魅力的なアイデアだったと思います。

 我々医師会立病院から来た医師は、みんな地場の人間じゃない。小林副院長は日南あたりの出身だし、瀬口医局長は延岡、私は鹿児島。ほかも宮崎市周辺の出身。だけど今はみんな都城に家を建てました。医師会立病院の医師は大学から補充されますから、結果として都城自体の医師はずっと増えました。医師会立病院との関係は現在ももちろん良好で、頼まれて医師会立病院で手術することは今でもあります。

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宮崎県内の病院で初めてしっかりしたヘリポートを作った。耐久重量は6.5t。海上保安庁の双発式中型ヘリも受け入れられる。太平洋側海難事故の起点の一つで、ここで医師をピックアップして救助に向かう。

―ヘリポートは目玉の一つですね。

 宮崎県では肝移植や心臓移植は例がありませんし、腎移植も数えるほどです。移植医療に限らず、高度な医療の中には、まだ宮崎県内で行われていないものが幾つかあります。劇症肝炎など、急を要する患者さんを他県に搬送する時、地上を使えば時間がかかり過ぎます。ヘリポートがなかったころは、そういう患者さんを救うことはできませんでした。今では九州中ならどこへでも、30分以内に運ぶことができます。

 ヘリポートを病院の上に作るというのは譲れないことでした。地上搬送してヘリに乗せるのと、病院のICUからそのまま載せるのとでは、話にならないくらい違うんです。人口呼吸器や人工心肺を付けている人を、狭い車に一旦乗せることはむずかしい。だから地上搬送部分がないようにしようと考えました。

 地方都市での救急医療の考え方は、今後変わってくると思います。100万しか人口のない県で専門の救急チームは編成されにくい。地区ごとの作っても暇になります。でもヘリを使えば、救急医療施設をあちこちに作る必要はなく、一か所に集約できるようになります。

離島を抱える鹿児島は、そういうことが発達している地域です。

―他にはどんな特徴が。

 肝臓癌の抗癌剤を病院で作っています。世界でここだけの薬で、特許は宮崎県と私が持っています。県の事業として宮崎大学で開発したもので、私が当時の責任者でした。癌細胞の中に薬を能動的に送る仕組みがあるため副作用は1例も出ていません。腫瘍部が大きいものや多発性の肝癌にも効果があり、東大の医師が何度も見学に来て評価していますから、東大からも肝癌患者が送られてきます。

 老人医療には積極的な治療があまりありません。小林副院長のアイデアで、積極的に肺炎を治す、心臓を治すなど、「ICUのレベルでお年よりを治療する」というのも特長です。当院のレスピレーターは常時40台以上稼動していますから、宮崎県内で最も多いと思います。この地域に数十か所の老人施設を持っている豊栄グループと連携して、そこのお年寄りを治しています。

 豊栄グループと我々で「九州医療資源」という財団法人を作りました。医師などの人的資源や、ここで作った薬などの技術的資源。それらをうまく運用するのが目的です。先ほど話した抗癌剤の特許も、宮崎県の代理で九州医療資源が所有しています。特殊な医師を派遣しなければならない時は、九州医療資源に登録した医師をうまく送れる仕組みもあります。

【記者の目】
「都城に面白い病院がある」と聞いた時は半信半疑だった。特別大きな病院でもない。しかしそれは記者の誤った予断だった。病床数の多少が病院の価値を決めるわけではない。
日本は大病院が立ち並ぶ地域ばかりではなく、そうではない地域に住むことは、リスクになる場合もある。住民にそれを回避させるモデルケースの一つが、この病院であると感じた。(平増)

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