高校生のとき大きな病気をし、医者になろうと決めたんです。

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新春特別インタビュー 九州大学病院 久保千春院長

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九州大学病院 久保千春院長

PROFILE

1948年生れ。九州大学医学部卒。1973~75年九大医学部心療内科研修医、1982~84年米国オクラホマ医学研究所。 1993年九州大学医学部心療内科教授などを経て現九州大学病院長。

日本で三番目の大学病院として百年の歴史を持ち、病床数は国立大学病院としては国内最大、先進医療はむろん、有能な医師を多数排出し、新たな治療法をたえず開発するなど、西日本の中核であり続ける九州大学病院の久保千春病院長(63)に多忙な時間を割いていただき、院長の個性と病院経営の関わりのほか、大学病院の特徴や今の日本と病気との関係などについても聞いた。インタビュー時間の50分はあっという間に過ぎ、深い感銘を同席者に与えた。

心療内科の患者さんと碁盤が、大切なことをみんな教えてくれた。

「大学病院には、診療、教育、研究という役割がありますが、九大病院はどれも中核的役割りを果たすことが求められ、医師・歯科医師のほかに薬剤師や看護師などの医療従事者育成を行ないます。さらに福岡はアジアの玄関口であり、グローバルな視点の医療も視野に入れておく必要もあります。そのために国際的な研究施設もいくつかあり、医師を目指す外国人学生も多く在籍します。九大病院の医療技術とシステムは世界の最先端にあると言ってもよいでしょう」。

―日本の法律なり、政治家や国民が理解してくれなければ次に踏み出せない点があるとすればどんなことでしょう―

「かつての国立大学病院は平成16年に法人化され、今は自主努力で運営することが求められています。そのため当院でも自助努力や経営改善を続けていますが、問題点があるとすれば診療に割く時間がかなり増え、病態の解明や新しい医薬品の開発など、医師が研究に使う時間の確保がむつかしくなっています」。

―それは改善されそうですか―

 「国立大学病院長会議というのがあって、それを通じてマスコミや政治家、文部科学省に働きかけ、医師の負担軽減はされつつありますが、充分ではありません」。

―スペシャリストである医師に対し、病院長はあらゆる分野を視野に入れなければならない。そのための資質(マネジメント能力)というものは何でしょうか―

「病院長になる前の私は心療内科にいて、患者さんの体と心の状態、そして社会経済的側面とのつながりを見て、その人の社会生活の結晶としての病気を診ていました。私はまだ経営の専門家ではありませんが、個々人の疾患と社会のありようはまったく無関係ではないことを、患者さんが身を持って教えてくれたような気がします」。

―そうすると久保病院長ならではの社会見識というものがあるんですか―

「私の趣味は囲碁なんです。腕前はアマチュア四段です。囲碁は碁盤全体の調和がとれていなければ、1カ所で勝っていてもだめなんですね。右を打つ時は左を見、局所を見ながら全体も見るというトレーニングを学生時代から囲碁部で続けていました。今は九大囲碁部の顧問です」。

―それの意味はとてもよく理解できます―

「碁には、その人の生き方に通じるところがあり、何手か打てばその人の強さが分かります。剣道でも竹刀が触れただけで相手の力量が分かるのと同じです」。

―なるほど―

「囲碁は手順が大切で、A、B、Cの順で打ちたいところを、A、C、Bと打てば死ぬんですね。医師も患者さんに対していろんな治療法を知っていますが、同時にできるわけではなく、治療の手順が大切です。病院の管理も手順としてどこを大事にしていくか、それを見誤らないようにする必要があります」。

―年齢の割にはとてもお若く見えますが、好奇心は強い方ですか―

 「とても強いですね。何でもやりたがるほうで、健康器具とかもいっぱい買って、すぐ飽きて家内から叱られてばっかりです」。(一同爆笑) 「ストレスはたくさんあります。それを発散することも大事ですが、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚などの五感に快刺激を与えることがいいんです。ストレスは避けるだけのものではないことを心療内科で学びました。適度なストレスは人間を鍛えます。『若い時の苦労は買ってでもせよ』と言うでしょう」。

―その好奇心は幼少のころからでしょうか―

「高校生の時に慢性腎炎を患って、治らないと言われたんです。医者になろうと思ったのはそれがきっかけです。大学時代も運動は控えた方がいいという時代でしたから、それで囲碁部に入ったんです。病気をした時の恐怖感が、若い時の苦労になったのかもしれません。学生紛争という時代も経て、体と心と社会について考えるようになり、腎臓ではなく心療内科の道を選びました。当時はまだ理解されていない分野で、当時医者をやっていた兄からは、どうして心療内科の医師に? と不思議がられました」。

―そういった経験から、今の医学生に何をアドバイスされますか―

「自分の座標軸を持つ必要があります。『医師としてのサイエンスを基礎としてヒューマニティを持つ』ことが大切です。まずは高い知識と技術が要求されるわけですが、それだけではだめで、患者さんへの優しさや思いやり、あるいはクレームへの対処が医師としてできなければなりません」。

―医療の面から今の日本はどう見えますか―

「全体として閉塞感のある社会の問題が凝縮されて病院運営交付金削減につながり、医師も余裕がなくなるし、格差社会で非正規雇用の人たちが増えるなど、不公平感が社会的経済的な影響を病院に反映させているということはあります。ストレス関連疾患の増大が顕著です。これからの医療は予防医療にもっと目を向けていく必要があるでしょう。それは医師の側からの発信も重要です」。

【取材を終えて】

こんなに気さくな人だとは思わなかった。囲碁を引き合いに出し、問題解決の手順は、事前に仮説を立てられるだけの専門的な力量のあるなしで決まることを、時間を延長して記者と同行者に説明された。その心配りに感謝の意を表したい。


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