第21回日本緑内障学会 - 特別講演 -

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「酸化ストレスと疾病―」産業医科大学医学部分子生物学 同大学院医学研究科長
河野 公俊 教授

産業医科大学医学部分子生物学 同大学院医学研究科長 河野 公俊 教授

日本緑内障学会で発表する機会を与えていただき光栄であると同時に緊張も覚える。

抗酸化に関わる酵素等遺伝子産物の質と量と解析は生体の持つ抗酸化能力と疾病の理解に必須である。そのためにはいくつかの分子生物学的アプローチがあり、質の解析には主に遺伝子多型が、量的な解析には遺伝子からタンパク量を制御する転写経路の解析が大切である。

タンパク質の量を主に制御しているのはそのタンパク質をいつどれだけ合成するかを調整する転写システムである。転写はDNAからRNAを合成する経路で転写プログラムの実行は主に核内の転写因子の量が規定することから個々の遺伝子転写プログラムの解析は重要な研究課題である。

われわれはこれまでグルタチオン合成、抱合およびペロキシドキシン合成経路に着目して研究を進めている。

酸素呼吸する生物は基本的に有害な活性酸素(ROS:reactive oxygen species)に暴露され酸化される。ヒトが1日に消費する酸素は500リットル以上だが、生命、生理機能を維持するための酸素呼吸でさえ、そのうち2%が活性酸素になるという報告がある。さらに飲酒・喫煙、化学物質の摂取、感染、紫外線・放射線暴露、抗がん剤治療、虚血・再還流障害等により活性酸素にさらされる機会も多い。

酸化ストレスとは生体の酸化反応と抗酸化反応のバランスが崩れた状態のことで生体にとって良くない状態。活性酸素は細胞内で産生され、体内で脂質、タンパク質、糖、核酸等を酸性変性させ、細胞のさまざまな機能を阻害する。結果として生活習慣病、がん、老化の大きな原因に活性酸素が関与しており、眼科領域でいえば加齢黄斑変性や白内障、緑内障等に関与することはよく知られている。

一方ヒトは、抗酸化すなわちサビ取りを行うビタミン、カロチン等の抗酸化物質を食品から摂取して対応する。さらに細胞自身も生存に必要な抗酸化システムを進化させていて、この抗酸化システムは生存に必須な役割を担っている。ヒトでは3つの活性酸素を水に変換する経路がある。

簡潔にまとめるとスーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼの経路は日々産生される活性酸素を無毒化し、その経路の障害は老化関連疾患に関わってくる。グルタチオン、グルタチオンぺロキシダーゼの経路は、外界ストレスで産生される活性酸素の無毒化やおもに薬剤等の解毒、抱合を行い薬剤感受性、耐性等に関連する。そしてチオレドキシン、ペロキシレドキシンの経路は様々な負荷で増大する活性酸素を無毒化するために誘導される抗酸化経路である。このチオレドキシン経路のノックアウトマウスの解析ではすべて脳生致死となることから生命維持に必須の抗酸化システムである。もちろんこれらの経路の活性化レベルは各臓器、各細胞で異なる。

体内では代謝産物として過酸化水素が生体物質の酸化に関わる悪役だが同時に細胞のもつシグナル伝達系を活性化し抗酸化システムを誘導して酸化ストレスに対抗するという側面を持つ。

各遺伝子の転写や、種々の生体反応に関わる転写システムの情報はヒトゲノムの解析に伴ってかなり蓄積されてきている。その情報の利用はシステム生物学として確立しつつある。

一方、実験室での転写システムの解析は、基本的に培養細胞を用いて行われる。主な手法として、DNAやヒストン修飾の解析、RNAと蛋白量の解析、レポーターアッセイ、クロマチン免疫沈降ある。

これらの方法で解析してきた抗酸化システムに関する私たちの研究を紹介し、最後に緑内障に関連する研究成果をお示ししたい。

これまでの遺伝子多型の解析からかなりの数の遺伝子が緑内障罹患リスクと関連することが報告されている。このような解析情報はその解釈が重要な意味合いを持つ。

一方、今回紹介した情報はあくまで実験室内のデータに基づくもので、今後実際の臨床試料での検証が重要になる。さらに、こうした研究が緑内障の病態、治療、遺伝子多型の解析結果の理解にも有意義であることをくみ取っていただけたなら幸いである。


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