九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

NICU再開、診療科増設地域 ニーズに応える病院に

独立行政法人国立病院機構 西埼玉中央病院小村 伸朗 院長(おむら・のぶお)1988年東京慈恵会医科大学医学部卒業。同附属病院消化管外科診療部長、西埼玉中央病院統括診療部長、同副院長などを経て、2018年から現職。東京慈恵会医科大学外科学講座客員教授兼任。  西埼玉中央病院は、診療科目の充実を目指している。周産期医療では、2018年に新生児集中治療管理室(NICU)を再開した。小村伸朗院長が目指す病院は、地域が必要としている医療の提供。地域医療支援病院として、地域の医療機関との連携の強化に力を入れている。 ―病院の特徴は。  質の高い医療の提供を目指し、当院で診断・治療・フォローアップまでを担うことのできる「自己完結型医療」を目指しています。 外科領域においては、私の専門である消化器外科を中心に、高度な手術にも対応。就任以前は腹腔鏡の手術はあまり行われていなかったのですが、今は胃がんや大腸がん、胆石などの手術に導入しました。日本内視鏡外科学会の技術認定医も常勤で2人、非常勤で2人在籍しています。 さらに、診療科の充実を目指しています。耳鼻咽喉科は入院設備を有し、手術件数も順調に伸びています。ここ数年の動きとしては、呼吸器内科、精神科を常設。2019年10月から泌尿器科も医師が3人になりました。今後、高齢の患者さんが増えることを考え、呼吸器内科、整形外科、泌尿器科は、さらなる拡充を図っていきます。 ―NICUを再開しました。  この地域は産科、小児科のニーズが高いこともあり、一時休止していたNICUを、2018年7月、6年ぶりに再開しました。病床数は3床、新生児科医は1人の体制です。 再開当初は35週1800グラムまでの受け入れから開始。最終的には、32週1500㌘までの受け入れを目指しています。また、周産期で難しい呼吸管理のトレーニングも順調に進み、NICUが軌道に乗ってきたことで、産婦人科で制限していた双胎妊娠の受け入れも再開しました。 所沢市内でNICUがあるのは当院のみ。その他、防衛医科大学校病院に未熟児室があります。地域の産科病院に、定期会議などを通じて、当院のNICUを紹介。地域の周産期医療に貢献できるよう努め、将来は、6床まで増床したいと考えています。 周産期医療は、診療報酬上、経営的には不採算部門に挙げられることの多い領域です。しかし、将来を担う子どもたちを守ることも国立病院機構のあるべき姿と捉え、整えていきたいと思っています。 ―地域医療支援病院としての役割は。  地域の医療機関と連携し、地域医療の一翼を担いたいと思っています。そこで院長、各科部長、そして地域医療支援室のスタッフで、地域の医療機関に出向き、顔の見える関係をつくるよう心掛けています。その成果の一つとして、最近では、紹介率80%、逆紹介率65%に達しています。 紹介いただいた患者さんに関しては、しっかり情報をお伝えしています。入院が長期になる場合には、数回にわたって連絡をします。外科であれば、手術した時、退院した時、病理結果が出た時など。「この病院に送って大丈夫」と思っていただきたいですね。 救急医療については、4~5人の当直体制を整え「断らない救急」に取り組んでいます。その結果、救急の応需率は年々上昇。ただし、小児科は人員が不足しているので、2次救急のみの対応です。 病院経営は簡単ではありませんが、黒字化できたら職員に還元したいと思っています。患者さんに気持ち良く接するためには、職員の職場環境をより良いものにしていく必要があります。 職員が「ここで働いて良かった」と思える病院とは、自分の家族が病気になった時に、「ここで治療を受けさせたい」と思える病院だと考えています。黒字経営を実現し、職員が幸せになることが、結果として患者さんのためになると信じています。 独立行政法人国立病院機構 西埼玉中央病院埼玉県所沢市若狭2―1671 ☎04―2948―1111(代表)https://nishisaitamachuo.hosp.go.jp/

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公立病院の責務を追究 医療格差のない地域へ

松戸市立総合医療センター烏谷 博英 病院長(からすだに・ひろひで)1982年千葉大学医学部卒業。君津中央病院、京都大学医学部脳神経外科、国保松戸市立病院(現:松戸市立総合医療センター)技術局長、同診療局長などを経て、2014年から現職。  国保松戸市立病院が移転し、2017年末に名称も新たに開院したのが松戸市立総合医療センターだ。東葛北部保健医療圏の基幹病院、そして広域の患者を受け入れる3次救急医療施設としての期待を背負う。「公立病院だからこそ果たすべき役割がある」と烏谷博英病院長は話す。 ─病院について。  3次救急と小児・周産期医療に力を入れています。東葛北部保健医療圏には、3次救急医療機関が当院を含め2カ所しかありません。松戸市は県境にあることもあり、隣接する東京都葛飾区やその隣の足立区、埼玉県の三郷市や八潮市などからも重症患者を受け入れています。 東葛北部保健医療圏唯一の地域周産期母子医療センターと、小児医療センターを設置。全国的に小児科医不足が叫ばれる中、当院には30人の小児科医がいます。病棟、PICU(小児集中治療室)、小児夜間急診と、3人の当直体制が取れているのは大きな強みだと考えます。PICUは、県内はもちろん、全国でも数少なく、ドクターヘリも有効に使いながら対応しています。 今、出生1万人当たりNICU25~30 床が求められている一方で、産科の閉鎖が相次ぐなど、周産期医療には課題が山積みです。われわれは高い専門性と総合力を備えることで「子育てしやすい松戸市」であり続けるための一翼を担っていきたいと思っています。 ─病院長としての試みは。  「すべての人に『来てよかった』と思われる病院を目指します」を理念にしています。患者さんだけでなく、医療スタッフが気持ち良く働き、患者さんに優しくできるようにしたいという考えから、掲げました。風通しの良い組織づくりや協力関係の下、医療に尽くせる環境をつくることは、私にとっての課題です。 医療レベルを保ったり、新しい取り組みを行ったりするためには、研修医にとっても「来てみたい病院」でなければいけないと考えます。研修2年目のプログラムをフリーにし、研修医自身が主体性を持って取り組むシステムにしました。今、当院での研修希望者数は、採用人数に対して約5倍の応募となっています。 地域との連携も重要です。一つは外来化学療法室の活用。沿線に、がん診療に関して高い専門性を持つ病院が点在しているため、他院で手術した患者さんにも放射線治療と抗がん剤治療を行っています。また、緩和ケアにおいては、当院で病状を落ち着かせ、在宅に戻ったり、緩和ケア病棟に転院したりできるよう、連携を強化しています。 この地域は脳神経外科医が多いのですが、医師数に恵まれていても、当番医制で1カ所に患者さんを集めていては、時間との勝負の治療はできません。そこで地域の脳卒中診療担当医で集まり、松戸市消防局の協力を得て「脳卒中から市民を守ろう!」をスローガンとする「松戸脳卒中ネットワーク」を立ち上げました。 救急隊が受け入れ病院の1カ月先までの態勢を把握・評価することで、常にすぐに治療できる病院に患者さんを搬送できる仕組みをつくりました。後遺症を少なくし、ADLやQOLを損なわずに済むよう、松戸市からネットワークを広げていきたいと思います。 ─今後は。  新病院移転時に、高精度放射線治療装置を導入しました。ピンポイントの照射が可能で、高齢でも治療が受けられます。高齢男性に増えている前立腺がんの治療に積極的に取り入れたいと思っています。 医療に「隙間」があってはいけません。3次救急や小児・周産期医療が病院経営での不採算部門になろうとも、「隙間」ができないように埋めるのは公立病院の役割です。黒字部門の拡大に努めながら、信念を持って医療を提供していきます。 松戸市立総合医療センター千葉県松戸市千駄堀993―1☎047─712─2511(代表)https://www.city.matsudo.chiba.jp/hospital/

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段階的に改革を推進5つの「高める」を実現する

医療法人社団総生会菅 泰博 理事長(すが・やすひろ)2000年東京医科大学卒業、2008年同大学院医学研究科修了。同外科学第一講座(現:呼吸器外科・甲状腺外科)、神奈川県立がんセンター、国際医療福祉大学三田病院などを経て、2012年医療法人社団総生会麻生総合病院病院長、2014年から現職。  理事長となって6年。麻生総合病院の病院長に就いてからは8年となった。段階を追って、着実に法人に変化をもたらしてきたリーダーは、今、「人事制度改革」という大きな仕事に着手しようとしている。 ―これまでの取り組みを。  麻生総合病院の病院長に就任した時、「5つの『高める』」を、法人の目標として掲げました。五つとは、「法人の社会的価値」「経営の透明性」「コンプライアンス(法令遵守)の意識」「公平性」「職員のロイヤリティ」。最初に着手したのが「経営の透明性」です。 まず病院内の情報を可能な限り職員と共有することから開始。安全対策、出張手続きなどのマニュアル類や就業規則、労使協定などをすべてデータ化し、院内の端末から閲覧可能に。属人化していた業務の減少にもつながっています。 次に共有したのが、患者さんの情報。電子カルテの構成を変更し、それぞれの患者さんのカルテに、「カンファレンス」という項目を設けました。病棟機能に対応した入院期限、その患者さんに関する話し合いの内容、それぞれの職種の視点で気づいたことなどを、患者さんに関わるさまざまな診療科・職種の人が掲示板のように書き込んでいきます。 一人の患者さんの治療方針を、一職種だけの視点で判断すると、誤った方向に導かれてしまうこともあります。情報共有には、それを防ぐ効果もあります。 また、共有した情報をもとに、それぞれの職種がインフォームドコンセントを実施することで、患者さんやご家族に病院として一体感ある説明ができているとも感じています。 情報共有はコンプライアンスにおいても重要です。ルールを共有・明示することで、根拠を持って問題点を指摘できる。「ハラスメントは許さない」ということも常々職員に伝えており、正規職員にはハラスメント研修の受講を指示。9割ほどが研修を終えています。 また、退職者に対する面談を直属の上司、他部署の管理職と2段階で実施。その報告を受けることで、「真の退職理由」を把握することも心掛けています。本当の理由を知ることで、離職率を下げるための効果的な対策が検討できると思っています。 ―現在、注力されていることは。  まさに今、取り組んでいるのが「公平性を高める」ことです。個人病院だったころの名残で、いまだ不統一な面がある賃金制度などに着手しようとしているところ。目標としているのは、働き方改革でも言われている「同一労働同一賃金」です。 一般的に医療・介護業界の人件費は増加傾向であり、一方で、次の設備投資も考えなければならない。診療報酬改定の動向を注視していても、今後、経営的に右肩上がりでいけるほど甘くはないと感じています。 そこで、この4月、人事制度改革プロジェクトを発足させます。人事考課の評価項目に、求める職員像10項目を盛り込み、賞与に反映させることはできないか。若手を含め、頑張れば昇給できる仕組みを実現したい。そんなことを考え、検討を重ねています。 職員には苦笑いされることもあるのですが(笑)、ラグビーW杯日本代表チームのスローガンにあやかって、法人の2020年の目標は「ONE総生会への意識改革」。 救急医療と整形外科を強化する麻生総合病院、運動器疾患だけでなく脳血管疾患の患者受け入れを充実させる麻生リハビリ総合病院。さらには訪問看護ステーションや介護付き有料老人ホームなど、法人内にはさまざまな機能を持った施設があります。 リアルタイムなベッドの空き状況、月ごとの平均在院日数、その日の予定入退院、稼働率目標など、法人全体の動きも各施設設置の端末で見ることができます。人事制度改革の実現で、それぞれの職員の希望するキャリアや家庭環境などに応じた異動も円滑になるでしょう。職員が生き生きと働き続けることができる法人を目指していきたいと思っています。 医療法人社団総生会神奈川県川崎市麻生区上麻生6―25―1☎044―987―2522(代表)https://www.souseikai.net/

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「医療はインフラ」 より良い地域医療の実現へ

社会福祉法人恩賜財団 済生会支部神奈川県済生会横浜市東部病院三角 隆彦 院長(みすみ・たかひこ)1981年慶應義塾大学医学部卒業。平塚市民病院、済生会宇都宮病院、済生会横浜市東部病院副院長・心臓血管外科部長などを経て、2011年から現職。慶應義塾大学医学部客員教授兼任。  高度急性期医療、重症外傷、最先端のがん治療、災害時の医療に貢献する済生会横浜市東部病院。その根底にあるのは、現状に満足しない姿勢だ。「医療とはインフラである」と語る三角隆彦院長に、横浜市東部地域におけるこれからの医療体制について聞いた。 ─院長就任から10年目になります。  開院と同時に副院長に就任し、この病院と共に13年間、歩んできました。院長に就任した2011年は、病院の体制が整い始めた頃。以降、病院の柱である高度医療、救急医療、そして「常に一歩先の医療」の実現に取り組んできました。 がん治療では、手術支援ロボット「ダビンチ」、腫瘍にピンポイントで照射できる放射線治療装置「サイバーナイフ」を導入。心臓弁膜症治療では、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)を導入し、確実に実績を積み重ねています。 救急・災害医療では、県内外で発生した災害に対応するための訓練や研修を経た「神奈川DMAT指定病院」の指定を2011年に受けました。 2014年からは、24時間365日重症外傷救急搬送を受け入れる「横浜市重症外傷センター」としての役割も担っています。 ─現在の取り組みについて教えてください。  高度な医療機器の導入に当たっては、現場の医師からの「このような医療を提供したい」という声が元になっています。 導入した医療技術をしっかりと生かしていくには、資金だけでなく、医療者の教育も欠かせません。技術習得のための医師の海外留学をサポート。TAVIの導入の際には、循環器内科医を1年間オランダへ、計2人派遣しました。重症外傷に対する高度な救急医療を学ぶために、救急科専門医が米国に留学。その時の経験が、「重症外傷センター」の設立につながっています。 より高度な医療、先進的な医療を、横浜市東部地域で提供できる病院へと発展できたのは、ある程度の規模があり、教育に投資できる余裕があったからです。病院経営を取り巻く状況は年々厳しくなってきています。今後も同じように取り組めるよう、考えていく必要があります。 ─地域における役割は。  当院は急性期病院であるため、患者さんはいずれ回復期や慢性期の病院へ転院、あるいは、在宅に戻ります。ところが、横浜市は全体的に病床が不足しており、転院できない患者さんも少なくありません。 地域包括ケア病床も、まだ十分ではなく、地域全体の医療・介護体制の調整が、急務だと考えています。回復期リハビリ病床、慢性期病床は、周辺地域に少しずつ整備されてきていますが、横浜市東部地域ではまだ不足しているのが現状。東部地域全体で考えていくべき課題でしょう。 私は「医療はインフラ」だと考えています。例えば、鶴見区を中心とした双方向の情報ネットワークシステム「サルビアねっと」では、地域の病院、クリニック、薬局、介護施設をつなげています。ここでは、参加の同意を得られた住民の方の電子カルテや受診履歴、過去の薬の処方歴、アレルギーなどの情報共有を行っています 地域の病院や介護施設などがしっかりと連携し、患者さんの経過に応じた医療や福祉が提供されて、初めて安心して生活できると思います。 「健全な病院経営」が叫ばれていますが、決められたルールの中では、なかなか難しい。その中で当院がこの地域で担うべき役割は何なのか、私ができることは何なのか。横浜市では医療機関がお互いに切磋琢磨(せっさたくま)し、質の高い医療を提供してきました。これからは地域とさらに協力し、より良い仕組みづくりに努めていきたいと思います。 社会福祉法人恩賜財団 済生会支部 神奈川県済生会横浜市東部病院横浜市鶴見区下末吉3─6─1☎045─576─3000(代表)https://www.tobu.saiseikai.or.jp/

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持続可能な未来の地域医療を 使命を胸に、変革に挑む

社会医療法人宏潤会 大同病院宇野 雄祐 理事長(うの・ゆうすけ)1991年金沢大学医学部卒業。同第一外科、名古屋大学医学部附属病院腫瘍外科、中部ろうさい病院外科、2007年社会医療法人宏潤会大同病院入職、同外科部長、同副院長などを経て、2018年から現職。  2019年9月に開設80周年を迎えた「社会医療法人宏潤会大同病院」。宇野雄祐理事長に現状と今後の方向性を聞いた。 ―理事長になられて1年半が過ぎました。  医療・介護を取り巻く環境は、大きく変わろうとしています。特に2018年以降は、医師の働き方改革の方向性が示され、地域医療構想の実現も〝待ったなし〟の状況となっています。 私は就任後、急性期医療の高度化と、地域の包括ケアマネジメントを周囲の医療・介護施設と連携して整えていくという姿勢を改めて強化しました。 さらに職員には、患者さんに寄り添い、医療人として「その人の誕生前から最期まで、医療・ケアと安心を提供する」というミッションステートメントを提示しました。 この2年間の中期計画の重点課題には、①高度急性期医療の追求②地域包括ケアネットワークの確立③健康延伸のための予防医療を掲げ、これらを効率的に進めるための基盤強化にも力を入れています。 高度急性期医療は、人口減少に伴い需要減も予想されますが、命を救う医療として、欠かせない使命です。併せてがん診療や小児医療、救急医療なども、より充実を図ります。 地域包括ケアについては、当法人は早くから、予防も含めた包括医療の提供を大切にしてきました。すでに介護老人保健施設、訪問看護ステーションなどを展開。今後、患者さんとご家族、地域の医療・介護・福祉機関との連携を一層深め、消防など行政も含めて皆さまが何にお困りなのかしっかりと伺い、強固なネットワークを築きます。 高齢化が進む一方で現役世代が減る2040年問題の中で、国も健康寿命の延伸を取り上げています。当法人では、健診センターの役割を強化。「要精密検査」や、「経過観察」の方の病気を予防できることが、重要なポイントになると考え、健診後のフォローにも尽力しています。 救急医療では、各診療科の機能強化を図り、救急医を新たに招くなどしています。小児医療でも、新たに社会福祉法人を設立した上で、重症心身障がい児者の施設を2022年秋に開設することが決まりました。 ―2019年4月には「地域周産期母子医療センター」に認定されました。  当法人が認定されたことで、愛知県内の同センターは13カ所になりました。当法人の医療圏は南区と緑区の西部、東海市の北側です。 当法人の医療圏は、名古屋市で最も高齢化が進んでいる地域がある一方で、比較的お産が多い地域でもあります。当院は長年、小児医療に注力してきました。 高血圧や肥満、筋腫などの危険因子がある、または多胎妊娠、胎児異常などで緊急かつ高度な医療が必要な妊婦の方は、医療圏を越えて来院されます。 今回、リスクの高い妊娠や重篤なケースも受け入れ可能な病院として認定され、愛知県内の広いエリアでその存在感が増し、責任も重くなったと認識しています。 ―今後の抱負は。  当法人が大切にしている価値観に「おもてなしの心」があります。患者さんの心に思いをめぐらせ、不安を解消して、行く先をあたたかく照らすことをイメージしています。 それを実現・深化させるために、デジタル化やⅠT化を考えています。例えば、各診療科や地域の各施設・機関間で、より深く情報を共有できるシステムを構築し、診療情報を確認し合えるということだけでなく、患者さんの不安の真因を見つけ出し、一人ひとりの異なる価値観に応えられる医療を提供することを目指しています。 ハードルが高い目標ですが、新しい仕組みづくりに挑戦し、持続可能な未来の地域医療構築に貢献したいと取り組んでいます。 社会医療法人宏潤会 大同病院名古屋市南区白水町9☎052―611―6261(代表)https://daidohp.or.jp/

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戦略は実現できてこそ 目標管理で成果を出す

地方独立行政法人加古川市民病院機構 加古川中央市民病院大西 祥男 理事長・院長(おおにし・よしお)1983年神戸大学医学部卒業。米ワシントン大学留学、神戸大学医学部附属病院講師、兵庫県立柏原病院(現:兵庫県立丹波医療センター)院長、加古川西市民病院・東市民病院(現:加古川中央市民病院)統括院長などを経て、2016年から現職。  2016年の新統合病院開院から、高度専門医療を行う5大センター(消化器、心臓血管、こども、周産母子、がん集学的治療)を核に、32診療科、600床を有する急性期病院として地域に貢献してきた加古川中央市民病院。病院機構のトップとして陣頭指揮に当たっている大西祥男理事長・院長に聞いた。 ―これまでの取り組みについて教えてください。  運営が軌道に乗って以降、診療科の拡大や医療の質の向上に尽力。乳腺外科、放射線治療科に続き、2020年4月には小児循環器内科を開設予定です。専門医や認定遺伝カウンセラーと準備を進めてきた遺伝子診療部門も立ち上げます。 医療機器の導入更新も積極的に実施。循環器領域ではTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)やインペラ(補助循環ポンプ)での治療、消化器領域では手術支援ロボット「ダビンチ」による直腸がん手術のほか、肥満症治療の外科手術も始めました。 質に関しては、2019年12月に県で4番目となる医療被ばく低減施設に認定。ほかに輸血機能評価や病院機能評価の認定などを通して、職員全体の意識の向上を実感しています。 救急医療にも注力。2018年度はドクターヘリを含む救急受け入れが7648件、救急外来は合計約1万5500件。不応需率は1桁台に下がりました。 ―過去最高21億円強の黒字を達成されている理由は。  第一に、医療者が診療に専念できることです。例えば、医師事務作業補助者。体制加算は15対1が上限なので600床なら40人の計算ですが、当院は約70人を配置し、さらに増員を考えています。人件費はかかりますが、医師の事務的負担が減り、圧倒的にプラスに働きます。 もう一つは、BSC(バランスト・スコアカード)を用いた目標管理。年3回、計70の部門ごとにヒアリングを行い、一度に35時間ほどかかります。大変ですが、人材育成、患者サービス、業務改善、財務を中心に、何を目指すのか根気強く話し合ってきた結果、今があると思っています。 「BSCを取り入れているがうまくいかない」という話はよく聞きます。その理由は結局、収益の話に転じているからではないでしょうか。「人をどう育てるか」「工夫できる患者サービスは?」「業務改善できるところは?」など、考え実行し、財務はその結果です。 各診療科の診療内容を理解し、手術や収益ばかりでなく、数字に表れない貢献度もしっかり評価し、ヒアリングを実施しています。 ―データを有効利用し、結果を出しているそうです。  ヒアリングでは、数値データによる判断が欠かせません。企画情報部にはシステムエンジニア(SE)が5人所属しており、電子カルテの膨大な数字から必要なデータを作り込んでいます。  医師は数値に強いですから、平均値と比べるなどして、具体的な改善策を考えます。実現には内外の連携が必須で、そこには私が出向いて話をつなぎます。 最初は、「面倒やな」と思われていたでしょうね(笑)。でも数年たって浸透してきました。 次は、後進の育成、コミュニケーションの活性化です。当院ではシステミック・コーチングに取り組んでいます。私自身も院内の5人のステークホルダーに、コーチングを続けています。コーチングはテクニックではなく、「あなたのことを考えていますよ」という思いを具現化することが大切だと感じました。 また、「スペシャルサンクスカード」という私から職種、雇用形態に関係なく、頑張っている職員に感謝を贈るカードも始めました。 運営において、さまざまな戦略を立てています。しかし、肝心なのは、どこまで具体的に落とし込めるか、人に実際に行動してもらうか。その工夫が重要ではないかと考えています。 地方独立行政法人加古川市民病院機構 加古川中央市民病院兵庫県加古川市加古川町本町439☎079―451―5500(代表)https://www.kakohp.jp/

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ユニークな特色を打ち出し地域の安心を守り抜く

医療法人青心会 郡山青藍病院 野中 家久 理事長(のなか・いえひさ )1967年徳島大学医学部卒業。大阪大学医学部附属病院第2外科などを経て、1984年から現職。  奈良から大阪へ多くの急患が運ばれていた時代、「地元で患者を救いたい」との一心で病院を立ち上げて36年。その功績により、2019年末、内閣府から瑞宝双光章を受章した野中家久理事長。今も院内を駆け回りつつ、新しい治療法にも意欲を見せている。 ―ある交通事故をきっかけに開業を決意したそうです。  40年ほど前、救急の現場を学ぼうとあちこちの病院の当直を手伝っていました。ある日の当直明け、西名阪自動車道の奈良寄りトンネルで事故に遭遇。運転手を助け出し、到着した救急隊に「僕が当直していた(奈良県内の)病院に一緒に行きましょう」と提案したのですが「奈良はどこも診てくれないから」と、大阪の堺へ運んでいってしまったのです。がくぜんとしました。それなら奈良県内に救急病院をつくろうと決意して1984年、やっと開業にこぎつけました。 以降、懸命に救急に対応してきたつもりです。今は救急医療にしっかり取り組まれる病院が増え、年間約2000件だった当院の救急搬送は1600件ほどに。県内で完結できるようになって本当にうれしいですね。 ―今の医療に対する思いは。  人口減に応じてベッド数を減らす構想が進む中で、現場は老老介護が増加。妻が入院中に夫が風呂で亡くなるなどのケースが目立ちます。病気を抱えて生活する人をどう支えるのかが課題です。 当院は急性期の一般病床60床に加え、地域包括ケア病床40床、療養病床40床。法人として、隣に廊下続きの介護老人保健施設、向かいに介護付き有料老人ホームを展開し、一貫して地域医療を担ってきました。「何かあったときにお願いしたい」と頼まれますので、入院管理調整を常に行っています。 ―特色のある医療を展開しています。  病院の存続、発展のためには、独自性を持ち続けることが大事です。当院は「脳」「心臓」「腰痛」が運営の3本柱。特に腰痛は、経皮的レーザー椎間板減圧術(PLDD)のほか、経皮的オゾン椎間板減圧術(PОDD)、これらを組み合わせたハイブリッドレーザー手術を実施。負担が少なく日帰りが可能で、治療実績は延べ3000件に上ります。インターネットで調べて遠方から来られる患者さんも多いですね。 オゾン療法はヨーロッパで確立、認知された治療法。私はイタリアで学び、2013年から実施しています。椎間板ヘルニアの治療のほか、潰瘍性大腸炎などに対する注腸療法もあります。横になってガスを入れるだけなので、患者さんにとっても低侵襲な治療法です。 3年ほど前から脳疾患に用いている高濃度水素療法にも期待しています。受傷あるいは手術後すぐに使うと治療成績が良い。脳梗塞と脳内出血を併発し、薬が使えない患者さんが副作用なしで仕事に復帰した例も。今後、日本酸化療法医学会で発表する予定です。 高濃度ビタミンC療法や、プラセンタ療法なども行っています。何とかして痛みを和らげたい、頼るあてのない患者さんを何とかしたい、そんな思いが原動力ですね。その他、患者さんに有効と思える療法は取り入れていくつもりです。 ―今後は。  これからの民間病院は、総合診療科を中心とした体制になるべきだと考えます。当院の先生方には、オールラウンドに診てほしいとお願いしています。そこは今後、伸ばしていきたいことの一つでもありますね。 病院をバトンタッチする時期は必ず来ます。その時期はそう遠くはないでしょう。今は人材の適材適所を見ているところです。それぞれの人が強みを生かして活躍している組織が理想です。 私は現場が好きです。これからも、患者さんと向き合い、関わり続けていきたいと考えています。 医療法人青心会 郡山青藍病院奈良県大和郡山市本庄町1―1☎0743―56―8000(代表)https://www.seiran.or.jp/

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地域救急医療体制のさらなる充実を図る

医療法人徳洲会 宇治徳洲会病院末吉 敦 院長(すえよし・あつし)1985年岡山大学医学部卒業。宇治徳洲会病院循環器科部長、同心臓センター長、同副院長を経て、2015年から現職。救命救急センター長を兼任。  2015年に新築移転し、さらなる医療の質とサービスの向上に努めてきた宇治徳洲会病院。救命救急センターをはじめ地域周産期母子医療センター、地域がん診療連携拠点病院、地域災害拠点病院など多くの責務を担う。高度急性期から在宅まで、地域のトップランナーを目指し、施設や制度の整備を加速させている。 ─病院の特徴は。  当院は1979年に開業し、40周年を迎えました。2015年に新築移転し、さらにより良い医療を提供できるよう職員一丸となり頑張っているところです。 開院以来、重症救急患者の命を救う救命救急を、24時間体制で継続して提供してきました。「どんな患者も断らない」をモットーに、2019年は約9000件を受け入れ、救急応需率は99.7%となっています。 2019年、地域がん診療連携拠点病院にも指定されました。京都府南部地域での中心的な役割を担い、山城北医療圏の人口約45万人のうち42%の患者の治療実績があります。 また、地域周産期母子医療センターの指定を受けており、ハイリスク妊婦および新生児に対応した治療、管理にも力を入れています。 2002年に開設した心臓センターも当院の強みの一つ。専門の医師が24時間365日体制で常駐し、内科部門と外科部門が合同で循環器疾患の診療を行い、多岐にわたる循環器疾患に即応しています。カテーテル治療においても近畿で有数の実績を積み、アクティビテ ィーが高い部門の一つです。 ─新築移転後について。  新築移転に伴い、免震構造の病院を建て、地域災害拠点病院に指定されました。耐震性能グレードはSランク、震度7の巨大地震が発生した場合も軽微な被害で済み、病院機能を継続できる建物です。 実際に2018年の大阪府北部地震発生の際にも、大きな揺れは感じず、エレベーターも止まることなく、診療機能に影響を与えることはありませんでした。 救急搬送された重症外傷患者の診察・治療が1カ所でできる「ハイブリッドER」を導入して、さらに高度な救急医療が可能になりました。重症外傷の救命率向上に貢献できればと思っています。 そして、2020年4月には、血液内科病棟に無菌病棟18床の設置、頭頸部外科の開設も予定しています。 ─今後の展望は。  開設したいと考えているのが身体合併症精神科病棟です。近畿では大阪府、兵庫県にはありますが、京都府にはありません。 現在、市内精神科病院からの身体合併症による紹介件数が年間平均170件あります。そのうち入院件数が約70件。精神疾患関連の救急搬入件数が年間700件で、そのうち約250人が身体合併症で入院しています。 これに薬物中毒や自殺企図の患者を入れると需要は膨大です。どんな患者も断らず、治療後の管理を適切に行うためには専用の病棟が必要だと考えています。地域の急性期病院として、地域で発生するすべての病気に対応できる病院にしていきたいと思います。 また、若手医療スタッフの育成も課題です。当院で研さんを積んだスタッフが、今後別の施設に移った際に「さすが宇治徳洲会病院で働いていただけあるな」と思ってもらえる人材を育てたいですね。 そして、地域包括ケアシステムの整備にも力を入れていかねばなりません。高度急性期から慢性期、在宅まで地域のトップランナーを目指して元気な病院にしていきたいと思います。 新築移転をしたことで、患者さんが求める医療レベルも高くなったと実感しています。基本理念の一つである「自分の家族に受けさせたい医療」を基準に、安心して預けていただける病院を目指し、職員一同全力で取り組みます。 医療法人徳洲会 宇治徳洲会病院京都府宇治市槇島町石橋145 ☎0774―20―1111(代表)http://www.ujitoku.or.jp/

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