九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

地域で求められている医療ニーズに応える

医療法人医和基会 戸畑総合病院齋藤 和義 病院長(さいとう・かずよし)1986年産業医科大学卒業。同大学病院第1内科、米ハーバード大学医学大学院訪問研究員、産業医科大学病院臨床研究推進センター副センター長などを経て、2017年から現職。産業医科大学臨床教授兼任。  2016年に同じ戸畑区内から現在地に新築移転した戸畑総合病院。2017年に病院長として就任した齋藤和義氏。新築とともに取り組んできた病院機能の拡充を図るための、新たなる方策とは。 ―病院の概要は。  前身である牧山中央病院の時代から、地元に密着した病院として、地域医療に貢献してきました。 北九州市戸畑区内にはすべての診療科を備えた総合病院が少なく、地域完結型医療に対応できる医療機関が必要であるということから、2016年に現在地に新築移転。診療科を拡充して「戸畑総合病院」と改称しました。現在では25の標榜科に193床を擁し、常勤医師29人体制で、急性期から高齢の患者さんに至る幅広いニーズに応える医療を提供しています。 新築移転を機に、地域での需要が増加している耳鼻咽喉科、乳腺外科などを開設。放射線科にはMRI、CT、心臓カテーテルなどを導入し、マンモグラフィー検査も可能となりました。 さらに、医療連携の効率化とサービスの質の向上を目指し、最新の高速ICTネットワークを構築。館内の無料Wi―Fiをはじめ、ナースコールもスマートフォンと連動させました。小児科、産婦人科、歯科外来、マンモグラフィー検査は、患者さんのスマートフォンやパソコンから予約可能です。 職員の福利厚生のために導入した北九州市初の「タニタ食堂」は、どなたでも利用することができ、地域住民の皆さんから好評をいただいています。 ―病院長に就任してからの取り組みについて。  当院ならではの特色を出すために、すべての診療科においてレベルアップを図ってきました。一つは私の出身でもある産業医科大学の内科と提携して、膠原病・リウマチの生物学的製剤などによる高度先進医療に力を入れています。 二つ目に戸畑には心臓専門の医療機関がないので、常勤の心臓リハビリ専門の医師に来てもらうようにしました。 三つ目が整形外科。人工関節センターを立ち上げ、人工関節手術も数多く行っています。各診療科の専門医も増員して、放射線科専門医2人、消化器病、呼吸器専門医はそれぞれ1人の先生に就任していただき、さらなる医療の質の向上を目指しています。 私が長く勤務していた産業医科大学病院の協力型臨床研修病院として、研修医と病院実習の受け入れも行っています。多くの診療科で大学教授をはじめとした専門医に非常勤での診察をお願いしており、各科の専門性のレベルアップにもつながっています。 ―地域医療を担う役割について。  193床のうち、108床が地域包括ケア病棟です。他の病院や診療所、介護・福祉施設や、医療法人医和基会グループ内の介護老人保健施設などと連携して、〝地域完結型医療〟を実現するための活動を展開しています。 亜急性期から療養期、在宅介護まで、患者さんが地域内ですべての医療・介護を受けられる体制を構築しています。さらに、連携先と良好な関係を築くことによって、患者さんが退院後もスムーズに在宅医療に移行できるよう取り組んでいます。 小児科、産婦人科については多くの医療機関が縮小する傾向にありますが、地域のニーズにお応えして継続できるよう、これからも努めていきます。 今後は潜在的な要望を掘り起こし、いかに充足させていくかが課題です。当院にはAI(人工知能)や画像診断のエキスパートなど、究めて高い専門性を持ったスタッフが数多くいますので、臨床研究をはじめ、先進的な医療にも積極的に参画していきたいですね。 医療法人医和基会 戸畑総合病院福岡県北九州市戸畑区福柳木1―3―33☎093―871―2760(代表)http://www.iwakikai.com/

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ネットワークの構築で地域医療拡充と人材育成を

一般社団法人 天草郡市医師会立 天草地域医療センター原田 和則 院長(はらだ・かずのり)1975年熊本大学医学部卒業。熊本大学医学部第二外科(現:消化器外科学)医局長、天草郡市医師会立天草地域医療センター副院長などを経て、2012年から現職。熊本大学医学部医学科臨床教授兼任。  熊本県では、熊本大学と連携し、「地域医療実践教育拠点」や「熊本県地域医療連携ネットワーク構想」などの施策を通して、地域医療の活性化を計画している。その両方に携わる天草地域医療センターの原田和則院長に話を聞いた。 ―地域医療実践教育の天草での拠点となっています。  熊本大学医学部では、松井邦彦特任教授が主宰して「地域医療・総合診療実践学寄附講座」が開講されています。基幹型臨床研修病院など地域の中核病院に熊本大学のドクターを教官として常駐させ、研修医や専攻医の教育をその地で行うことが目的です。 地域医療実践教育拠点病院の第1号は公立玉名中央病院。2拠点目として2019年4月に当院が指定されました。現在、当院に教員が2人常駐し、専攻医1人、多くの研修医が学んでいます。また何人もの医学生が研修にやってきました。このような機会に専攻医・研修医や医学生に地域医療の実態を見てもらうことは良い経験になると思います。 教員2人は総合診療医です。当院は各診療科の専門医ばかりですので、いわゆる「行間の医療」に携わってもらえることで非常に助かっています。地域の開業医からも安心して任せられると好評です。 この「地域医療実践教育天草拠点」は教育の他に、医師不足の解消につなげる目的もあります。つまりここで育った医師に他の病院で活躍してもらう。当院で学んでいる専攻医は、2020年春、天草の他の医療機関に進み、新たな研修医や専攻医が当院に入って数年間学び、巣立っていく。そんな風に毎年度のつながりを継続し、地域に医師が増えることを期待しています。 ―熊本県地域医療連携ネットワーク構想とは。  教育が主目的の「地域医療実践教育天草拠点」とは異なり、こちらは地域の医療環境の拡充を目指すものです。 熊本県では熊本市と周辺に医師が集中する一方で、地域の医師不足は深刻化しています。大学からいつでも希望する医師を派遣してもらえるとは限りません。 そこで熊本大学では、ネットワーク推進医を任命。その推進医を各医療圏の拠点病院に派遣し、医療圏域内の他の医師や医療機関の相談や指導に対応しています。例えば、圏域内に麻酔科医が不足していると要望があった場合は、熊本大学から推進医の麻酔科医を拠点病院に派遣し、支援します。 現在、宇城、有明、阿蘇、球磨など10の医療圏内で、15の病院が熊本県地域医療拠点病院として指定され、当院はその一つです。このネットワークによって、圏域内で安定した医療体制の維持や拡充ができるとともに、地域完結型の専門医療の提供体制も構築できます。 さらには拠点病院で研修などを行うことで、圏域内の医師のスキルアップも可能です。これらは2019年4月から本格的にスタートしました。全国から参考にされるモデルになればと、関係者一同、非常に意気込んでいます。 ―今後は。  1992年、当院が開設されたころからの「救急車で天草の1号橋を渡らせない」という思いは、今も変わらずに持ち続けています。ここは公立病院ではなく、あくまでも医師会立。しかし、公的なミッションを常に持ちながら、医療に当たっています。 最新の医療機器を積極的に導入し、都市部の病院とそん色のない医療サービスを提供することに力を注いできました。医師の育成のために、さまざまな学会の専門医修練の指導施設にもなっています。 人材育成に関しては、医師だけではなく看護師や医療関連技士、理学療法士、作業療法士、医療クラークなどの専門職も育てなければなりません。 住民にとって、また医師などの医療関係者にとって「魅力ある病院づくり」を目指していきます。 一般社団法人 天草郡市医師会立 天草地域医療センター熊本県天草市亀場町食場854―1☎0969―24―4111(代表)http://www.amed.jp/mc/

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訪問診療所の管理運営開始 地域医療をさらに強化

福井大学医学部附属病院腰地 孝昭 病院長(こしじ・たかあき)1984年京都大学医学部卒業。仏ラ・ティモンヌ病院留学、熊本中央病院心臓血管外科部長などを経て、2009年から福井大学器官制御医学講座外科学2教授、2016年から同大学医学部附属病院長、同大学副学長(医療担当)。  2019年8月、福井大学医学部附属病院は、同院がある永平寺町で、町立在宅訪問診療所の管理運営を開始した。地域医療への関わりを強化する狙いとは。その指揮を執る福井大学医学部附属病院の腰地孝昭病院長にその思いを聞いた。 ―訪問診療所の管理運営のきっかけは。  県内市町村の在宅での死亡率を比較すると、永平寺町では、在宅死が少ないことが分かっています。医療機関以外で亡くなる方が増える傾向にある中で、それに反する結果でした。理由はいくつかありますが、永平寺町には大学病院との間を結ぶ医療機関や施設が少なく、訪問診療や看取(みと)りができていないことが考えられます。 そこで3年ほど前から、行政や医師会と検討し、町立在宅訪問診療所を開設することになったのです。建物は大学病院の近くで、建設費は永平寺町が負担。管理運営は大学です。午前は外来診療、午後は訪問診療を実施。地域で不足する訪問診療に軸足を置いています。 大学病院が訪問診療所の運営に関わるのは、地域の医療ニーズに応えることに加えて、「教育」面でのメリットがあるからです。当院は県内唯一の特定機能病院として高度急性期、急性期を核に運営しており、医学教育もそこに重点を置いています。しかし、地域の今後の医療を考えると回復期、慢性期の医療も重要です。訪問診療所は学生や研修医が、医学のあらゆる面を学ぶ場にもなると感じています。 ―県医師会の副会長にも就任。地域医療への取り組みは。  2019年6月に、県の医師会の副会長に就任しました。現職の国立大学附属病院の病院長が、県単位の要職に就くのは珍しいようです。同じく6月に着任した池端幸彦会長とは、「県内の医療機関の連携を進めていくには行政、医師会、基幹病院の協力が大切だ」と話しています。 県内の医療課題の一つが、福井市への医師の偏在だと考えています。これを解決するためにも、大学病院を含む県内の四つの基幹病院の機能分化や連携が必要です。地域医療構想の実現のためにも不可欠ではないでしょうか。また実現には医師の働き方改革も考慮しなければなりません。月に1〜2回、県医師会執行部の皆さんと意見交換をし、これまで以上に論議を深めることができています。 地域医療に対する大学としてのさまざまな新しい取り組みについては、厳しいご意見もお聞きします。しかし、何もしなければ変化は生まれません。医療界にもAIが普及しており、医療者を取り巻く環境は想像以上のスピードで変化していきます。その状況に対応するために、われわれも積極的に変わっていく必要があると考えています。 ―今後の課題は。  2014年に新病院が完成し、ハード面の整備は一段落しました。今後は機能面の充実を図りたいと考えています。現在の当院は入院・外来とも12年連続で診療実績が伸びていますが、できるだけ入院に特化し、外来患者さんは地域の診療所などに戻していく体制を強化したいと考えています。 また、大学病院の強みを伸ばしていくことも大切です。例えば医工連携もその一つでしょう。本学で開発し救急部で活用する「クラウド型救急医療連携システム」は、2016年、モバイルコンピューティング推進コンソーシアムから総務大臣賞を受賞しました。 「子どものこころの発達研究センター」による心と脳機能の画像診断による研究、医療安全の課題を解決するための麻酔ロボットの開発など、各分野で積極的に研究が進められ、頼もしく感じています。 本学で働くことで教職員が将来に対する〝夢〟を描けるような組織づくりをすることも、私の大きな役割だと考えています。 福井大学医学部附属病院福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23―3☎0776―61―3111(代表)https://www.hosp.u-fukui.ac.jp/

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産後ケアデイサービスに続き小児への訪問診療を開始

独立行政法人地域医療機能推進機構 大和郡山病院松村 正彦 院長(まつむら・まさひこ)1978年京都大学医学部卒業。同附属病院小児科、天理よろづ相談所病院などを経て、2013年奈良社会保険病院(現:大和郡山病院)入職、2017年から現職。  目指すのは「何かあれば診てもらおう」と頼りにされる〝かかりつけ病院〟。223床の規模ながら、大和郡山市の市民病院的な存在として根付いている。小児科医として子どもに寄り添いつつ、患者に温かいまなざしを向ける松村正彦院長に聞いた。 ―診療の現状や特色は。  消化器内科・外科を柱に、呼吸器や循環器などの専門内科診療、また眼科手術や泌尿器科手術も積極的に行ってきました。産婦人科と小児科においては、市内で唯一の入院施設。母と子のケアに注力しています。 1年前には、市が行う「産後ケア事業」の指定医療機関として母子受け入れを開始。赤ちゃんと個室でゆったり過ごしながら、助産師などの専門スタッフに気になることを相談できるデイサービスです。希望すれば誰でも利用可能。現在は日帰りのみですが、1泊2日のショートステイ型にも広げられないか、市と協議しているところです。 2019年4月には、小児科医による訪問診療を始めました。気管切開、人工呼吸器、経管栄養など医療ケアを必要とする子どもは全国に約1万8000人。県内には約160人と把握されています。このような医療的ケア児の家庭を月2回程度訪問し、気管カニューレ交換や予防接種などを行っています。大学病院に通院するにしても、ご家族の負担はかなり軽減されるでしょう。 訪問先は現在9軒。範囲を広げたいところですが、採算が取れないのが悩みの種。遠方になればなるほど、その間の病院業務に制約が出るジレンマもあります。しかし、子どもに障害があっても安心して一緒に暮らしたいという家族の思いを見捨てるわけにはいきません。踏ん張って継続したいですね。 ―大和郡山市は以前から病診連携が盛んだそうですね。  医師会を中心とする病診連携システムは1995年にスタート。今年で25年、四半世紀を迎えます。 2018年7月には市と医師会が主導して「在宅医療・介護関係者と病院関係者の連携マニュアル」を作成。当院の職員も協力しました。 開業医からの紹介はもちろん、看護師やケアマネジャーからの相談、受け入れがさらにスムーズになればと期待しています。これに連動して、5階にあった地域医療連携室を1階に移動。スタッフも増やして業務に当たっています。 ―社会保険病院からJCHO(地域医療機能推進機構)へ移行してまもなく6年になります。  機構のキャッチフレーズは「安心の地域医療を支えるJCHO」。われわれも「地域医療、地域包括ケアの要」として貢献していきたい。附属の訪問看護ステーションや地域包括ケア病棟も利用しつつ、切れ目のないサービスを実践します。 社会保険病院時代から力を入れているのが、保健予防活動。健康管理センターの運営以外にも、各分野の専門認定看護師が中心となって活動を続けています。 例えば、院内教室のほか、商店街の一角で「まちの保健室」と題した健康相談を月1回開催。感染管理認定看護師が保育園などで行う感染症対策の出前講座や、救急看護認定看護師による救急蘇生の講習会、皮膚・排せつケア認定看護師による褥瘡(じょくそう)予防の講習会なども続けています。地域の訪問看護ステーションの看護師やケアマネジャー向けの研修会も年6回開催。尿閉や誤嚥(ごえん)に関する実技は「現場ですぐに役立つ」という声をいただいています。 私が小児科医になったときに恩師から言われたのは、「アドボカシー(代弁者)たれ」という言葉。世の中が不安定になれば、子どもや高齢者にしわ寄せがいきがちです。社会に対し声を上げづらい人々の代弁者となる、そんな気概を持ち続けたいと思っています。 独立行政法人地域医療機能推進機構 大和郡山病院奈良県大和郡山市朝日町1―62☎0743―53―1111(代表)https://yamatokoriyama.jcho.go.jp/

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課題は働き方改革 道筋をつくり対応へ

独立行政法人 国立病院機構 南和歌山医療センター中井 國雄 院長(なかい・くにお)1976年和歌山県立医科大学卒業。米カリフォルニア工科大学生物学部研究員、和歌山県立医科大学脳神経外科助教授、同大学看護短期大学部病態学教授などを経て、2003年から現職。  「急性期医療の充実」を旗印に、南和歌山医療センターの救急医療、がん医療などの充実に、長年努めてきた中井國雄院長。住民のために「地域で完結できる医療をつくりたい―」。その一貫した思いが、変わることはない。 ―院長としてこれまでの歩みを。  地域にとって足りない医療、いわば〝穴〟が空いている部分はないかを考え、それを補っていくことを念頭においてきました。 地域住民がわざわざ遠方まで行く必要がなく、地域で医療が完結できることが理想。救急医療とがん医療を柱にしたのは、その狙いがあったからです。 2006年、県内3カ所目となる救命救急センターの認可を受けました。現在、年間約4000台の救急車を受け入れています。 がん医療については、がん診療連携拠点病院の指定を受けました。治療についてはIMRT(強度変調放射線治療)を早くから導入するなど、高度で低侵襲な治療を提供することに取り組んでいます。 2010年には、緩和ケア病棟(陽だまり)をリニューアルしました。公認心理師、地域医療連携室看護師など、多職種によるチーム医療を取り入れています。 これらの取り組みによって地域での信頼を得て、紹介患者さん、入院を希望する患者さんが増えています。現場スタッフのスキルも上がっており、体だけでなく、心のケアも重視した、質の高い緩和ケアを提供できています。 ―病院運営の課題について教えてください。  働き方改革に対応するための道筋をつくることが、一番の課題です。現在当院の常勤医は51人ほどです。救命救急センターは夜間、同センター以外の診療科の医師も応援に入り、運営しています。 働き方改革が進められる中、休日を確保して当院を運営するには、医師の数を増やすことがポイントになります。 猶予期間が5年間とはいうものの、規制は2024年4月から始まりますので、あまり時間はありません。これを踏まえ、実際に2024年度からは、どの程度の人員が必要なのかを検討しているところです。2020年度は、改革への準備へ向けて、新しい体制づくりに着手したいと考えています。 連携する和歌山県立医科大学には地域枠が設けられており、当院にも卒業生が入職し始めています。当院は外科系の指導に積極的に取り組んでいます。その中から救急を希望する研修医が増えてくれることを期待しています。 若手の医師に伝えているのは、あいさつや敬語を大切にするようにということ。そして、苦しんでいる人を見かけたら、互いに助けられるような心を持ってほしいと伝えています。 病院建物の建て替えも課題の一つです。建築から約30年というものもあり、検討チームなどを中心に考えていかなければなりません。 ―地域の医療機関との連携については。  地域によって、看護師の確保が難しいところがあります。その対策の一つとして、県南部の病院とは、看護師の人事交流などを実施しています。 母体が違っても看護師が一時的に不足する病院があれば、要請を受けて半年から1年程度、看護師を派遣する仕組みを整えました。看護師は任務が終了すると再び当院に戻ってくるというものです。 ただ、このような活動を永続的にやっていくことは、なかなか容易ではありません。組織母体が違うと、連携へのハードルがより上がります。 国は公立病院の再編、統合を推進しています。行政などとも連携しつつ、地域全体で課題解決の糸口を見つけていきたいと考えています。 独立行政法人 国立病院機構 南和歌山医療センター和歌山県田辺市たきない町27―1☎0739―26―7050(代表)https://minamiwakayama.hosp.go.jp/

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地域と連携しながら強みを生かす病院へ

盛岡赤十字病院松田 壯正 院長(まつた・もりまさ)1976年岩手医科大学医学部卒業。盛岡市立病院、岩手医科大学医学部産婦人科学講座、盛岡赤十字病院副院長などを経て、2014年から現職。  盛岡医療圏における中核病院として2020年4月、開院100周年を迎える盛岡赤十字病院。災害救護や地域医療機関との連携を基本方針に掲げるほか、周産期医療にも積極的に取り組む。これらを陣頭で指揮する松田壯正院長に話を聞いた。 ―災害医療の体制についてお聞かせください。  赤十字病院として、災害医療・救護に取り組んでおり、1996年には岩手県基幹災害拠点病院に認定されました。救護方針を決定する災害コーディネーター、DMAT(災害派遣医療チーム)、dERU(移動型の仮設診療所)などを常時配置し、災害が発生した際は、即座に対応できる準備が整っています。 その活動は岩手県内にとどまらず、東日本大震災や熊本地震の被災地など全国各地で活躍しました。最近では、2019年10月に台風19号の被害を受けた宮城県丸森町へ、DMATを派遣しています。 ―地域医療機関との連携も大きな特徴ですね。  まず挙げられるのは、遠野市の公設助産院「ねっと・ゆりかご」との連携です。遠野市の出産数は年間200件ほどありますが、地元にはお産ができる医療機関がありません。 そこで市は2007年に助産院を開設し、周産期医療が充実している当院と嘱託医療機関契約を締結。インターネットを介し、胎児の情報などを共有するシステムがスタートしたのです。これにより、妊婦さんは遠くまで通院しなくとも専門的な検診を受けられるようになり、安心して出産を迎えることができるようになりました。 また、2016年に地域医療支援病院として認定されて以降、かかりつけ医や介護施設との連携を推進しています。「地域医療連携室」を設け、患者さんの紹介があった場合は30分以内に検査・診療方針などを決定。逆紹介も連携室が一括して対応するなどスムーズな調整を実現しました。 当院の患者さん自身が、かかりつけ医を探すことも可能です。病院入り口に設置したタッチパネル式のモニター「どこだ兵衛(べえ)」により、約90の連携医療機関の中から希望の施設を検索することができます。 地域医療連携では「在宅療養後方支援」も行っています。介護施設などと提携し、事前に在宅患者さんの情報を登録してもらうことで、緊急時には当院が速やかに対応するシステムです。現在は八つの施設、計195人の患者さんが登録されています。今後も、さらに数を増やしたいですね。 ―病院のその他の強みは。  産科や小児科などの周産期、外科、血液内科の入院患者さんが多く、中でも周産期は顕著です。当院における2018年度の出産件数は約780件で、岩手県全体の約10%を占めています。これは大きな強みですので、今後も周産期医療や産後ケアに積極的に取り組んでいきます。現在は通院型の産後デイケアを実施していますが、いずれは宿泊型の導入も視野に入れています。 さらに意欲ある職員たちも強みになっています。他病院での長期研修や内外での勉強会など、当院では積極的に職員のキャリアアップをサポートしており、資格を取得している看護師やスタッフが数多く在籍しています。彼らの存在は当院の基本方針の一つである「良質な医療の提供」に大きく貢献しています。 ―今後について。  人口減少や医師不足など、地方医療を取り巻く環境は厳しさを増しています。当院としても、医師や助産師の確保には苦労しているところです。しかし、だからと言って医療の質を落とすことはできません。 今後も地域の医療機関や行政と緊密に連携し、当院の持つ周産期医療などの強みを生かしながら、地域の皆さんの生命と健康を守っていきたいと思います。 盛岡赤十字病院盛岡市三本柳6地割1―1☎019―637―3111(代表)http://www.morioka.jrc.or.jp/

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広域病院企業団として地域医療をリード

置賜広域病院企業団 公立置賜総合病院林 雅弘 医療監・院長(はやし・まさひろ)1981年山形大学医学部卒業。同医学部助教授、米カリフォルニア大学サンディエゴ校留学(文部科学省在外研究員)、公立置賜総合病院副院長などを経て、2017年から現職。山形大学医学部臨床教授・非常勤講師兼任。  2000年、山形県の置賜地域にある2市2町の公立病院と診療所を再編・統合し、置賜広域病院組合が設立された。病院再編の先進事例として注目を集めた同組合は、2017年に病院企業団となって新たなスタートを切り、さらなる改革を進めている。 ―企業団設立までの経緯を教えてください。  現在の体制ができる以前、置賜医療圏の長井市、南陽市、川西町、飯豊町はそれぞれの自治体で病院や診療所を運営していました。しかし、経営難や医師不足などが深刻化したことで統合案が持ち上がり、2000年に山形県と2市2町による一部事務組合を設立。高度医療や救急医療を担う総合病院を新たに建設し、長井病院、南陽病院の各市立病院は初期医療や回復期医療、川西町立病院は外来のみの診療所として再編したのです。飯豊町国保診療所は運営を町から受託し、医師の派遣などで協力しています。 そして2017年、地方公営企業法を全部適用し、置賜広域病院企業団として新たな体制をスタートさせました。これにより病院運営がスムーズになり、以降はさまざまな改革を行っています。総合病院では7対1看護体制に移行して急性期病院の機能を強化。南陽病院はすでに建て替え、長井病院は3年後に建て替える予定です。在宅支援機能なども充実させました。今後も患者さんのニーズに応じて、柔軟に改革したいと考えています。 ―地域医療機関との連携は。  インターネットを介して、地域の医療機関が患者さんの診療記録を共有できる「OKI―net」、大腿骨骨折の患者さんに特化した「大腿骨地域連携パス」などがあります。ネットワークに登録している各機関が綿密に情報交換することで、患者さんの継続診療が円滑になるだけでなく、地域全体の医療向上にもつながっていると思います。 また、医師が不足している病院に当院から外来医を派遣する体制や、協働診療のシステムもあります。協働診療は平日夜7~10時の間、開業医に当院へ来ていただき、当直医と一緒に1次救急の患者さんを診療するものです。これにより医師間、病院間のコミュニケーションが活発になり、地域の医療連携を進める上でも欠かせないものになっています。 ―研修医やスタッフの教育についてお聞かせください。  現在の臨床研修制度が始まった当初、当院を希望する研修医は少ない状況でした。そこで地元の山形大学と臨床研修に関する協定を結んだほか、当院の医療設備や症例の多さ、教育プログラムをパンフレットなどで紹介。その結果、徐々に研修医が増加し、近年ではほぼフルマッチの16~17人が研修しています。2019年には総合病院のそばにレジデントハウスが建設され、研修医に対する環境がより整いました。 看護師に関しても当初は不足気味でしたが、基本的な知識や技術を学べる研修プログラムが認知されるようになり、今では多くの応募があります。IVナースの教育体制が整っていることも強みの一つでしょう。 ―今後の展望は。  置賜2次医療圏は人口減少が激しく、医師不足や診療科の偏在も大きな問題で、小規模の病院は運営が困難になると予想されます。当院としてはこれまで以上に医療連携を図り、地域のニーズに応え続けたい。そして、この地に急性期医療ができる病院を残したいと考えています。 当企業団で働く職員は非常勤を加えると1000人を超え、置賜地域では大きな職場の一つです。雇用の側面からも地域での役割や期待は大きいと感じています。今後も職員や医師に対する教育、研修を充実させ、魅力ある職場づくりを心がけながら、地域全体に貢献したいと思います。 置賜広域病院企業団 公立置賜総合病院山形県東置賜郡川西町西大塚2000☎0238─46─5000(代表)http://www.okitama-hp.or.jp/

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公立病院と民間病院が併設 役割分担で新医療モデル

米沢市立病院大串 雅俊 院長(おおぐし・まさとし)1983年山形大学医学部卒業。同大学医学部放射線科講師、米沢市立病院副院長などを経て、2018年から現職。  病院の再編、統合が加速している。山形県米沢市では、米沢市立病院と民間の三友堂病院が、同じ敷地内に併設して新病院を建設しようというユニークなプロジェクトが動き始めた。米沢市立病院の大串雅俊院長にその真意を聞く。 ―公立病院と民間病院が協力するその背景は。  当院と三友堂病院がいずれも新病院建設の時期を迎えていたこともあり、連携が実現することになりました。10年ほど前から、統合を含めた将来構想について検討していたのですが、当時は課題も多く、話は進みませんでした。 2004年に始まった臨床研修制度によって、医師は都市部に集中する傾向に。加えて東日本大震災以降、東北では医師確保が難しくなり、当院も例外ではありませんでした。 すでに、病院の建物は築約50年。建て替えの必要があり、新病院の基本構想が2014年にまとまりつつありました。 ところが、当院の精神科の医師が突然全員退職することになり、計画は一時中断。精神科の問題は、地域の精神科病院との連携で2017年に解決しましたが、この間も、単独での建て替えについて、再度検討を重ね、医師会など関係者との話し合いも続けていました。 しかし人口減、高齢化が進む米沢市で、医師数を確保しながら病院を運営するには再編もやむを得ない選択です。再び三友堂病院との話し合いを進めたところ、同院の仁科盛之理事長も、時代の変化を感じておられたのでしょう。2018年に、ついに連携することが正式に決まりました。 三友堂病院は130年以上の歴史ある病院です。そこで統合はせず、運営はそれぞれ従来通り、隣接して2病院を建設するという手法を選択。これまでどこも試みたことのないような連携にしたいと考えたのです。 ―連携による期待は。  連携に当たり、山形大学医学部の嘉山孝正参与を委員長とする「米沢市医療連携あり方検討委員会」で、米沢市としての一定の方針を定めました。2病院の役割分担を明確にした上で、当院の現在地に両院が隣接して新病院を建設します。 当院は急性期、三友堂病院は回復期を担います。現在、三友堂病院にある急性期の機能は医師を含め、すべて当院が継承します。これにより、病院機能が重複することはありません。 医療機器など共有できるものは互いに活用することで、無駄を省くことができます。それぞれの病床も削減するため、両病院で150床ほどの減床になります。 しかし、一病院としてみると全体規模が大きくなり、トータルの症例数は増えると予想しています。しかも急性期と回復期が1カ所で診られる病院として、各大学も期待を持ってくれているようです。研修医にとっても魅力的な病院となれば、医師確保への起爆剤になると考えています。 二つの病院は一つの建物の中に入り、壁とドアで仕切るだけなので、自由に行き来することができます。中間部にはアメニティーセンターを造り、講堂や食堂、コンビニエンスストアなど、両院が共用できる機能を集約させます。 ―順調に進んでいますね。  米沢市の平日夜間休日診療所の機能が建物の中に入ることも決まりました。行政には環状道路の整備を要望しており、地域住民にとって利用しやすい病院づくりを検討しています。 今回のプロジェクトは、登山で言えばまだ5合目程度。2023年の開院へ向けて計画が動き始め「天の時、地の利、人の和」という故事を実感しています。 統合は難しいけれども、何か別の連携の方法はないかと模索している病院も多いかと思います。新たな方策と言えるような〝米沢モデル〟の実現に向け、力を尽くします。 米沢市立病院山形県米沢市相生町6―36☎0238―22―2450(代表)http://yonezawa-city-hospital.jp/

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