九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

第38回日本肝移植学会学術集会 肝移植医療の新たな展開 Advance toward the New Stage

 第38回日本肝移植学会学術集会が6月25日(木)・26日(金)に松山市で予定されている。改正臓器移植法施行10年、MELDスコア導入1年などの節目を迎え、「日本の肝移植医療は新たなステージに入る」と話す髙田泰次集会会長に、見どころを聞いた。 増加見込みの臓器提供件数 集会会長 髙田 泰次 氏 (愛媛大学大学院医学系研究科 肝胆膵・乳腺外科学講座教授)  改正臓器移植法の施行からちょうど10年。脳死による臓器提供条件が緩和されたことにより、脳死下での臓器移植は年間70件近く実施されるようになりました。 厚生労働省や日本移植学会は今後10年で、脳死下での臓器提供件数がさらに増えると予測。今学会では手術数が増加した場合に、病院や医師はどう対応していくのかを、議論する予定です。 脳死や心停止下での臓器移植は常に緊急手術になるので、手術室とスタッフの確保、その時に予定されていた他の手術のリスケジュール、ドナーのいる病院からレシピエントのいる病院までの臓器の効率的な受け渡しなど、調整すべきことは多岐にわたります。移植チームのスタッフがオーバーワークにならないよう、うまくシステムを作っていきたいと思います。 MELDスコアが導入されて1年になろうとしています。MELDスコアというのは、肝機能や腎機能を示す数値を基に計算して出した指標です。この指標を基準として、重症の人から移植することにしました。MELDスコアが高い人は移植後の成績が悪いということが分かっていますので、合同検討会で検証する予定です。 今学会では日本移植学会や日本肝臓学会、日本臓器移植ネットワーク、厚労省や臓器移植コーディネーターなど多くの関係者に参加いただき、医療的側面と社会的側面の両方から肝移植医療の在り方を検討していく方針です。 移植医療が直面する課題  肝移植医療の直面する課題として、若手人材の確保があります。若い人に興味を持ってもらえるよう、肝移植の醍醐味(だいごみ)を伝える目的のシンポジウムを準備しています。生体肝ドナーに対する低侵襲の肝切除手術の様子をビデオで流すことも予定しています。 また、移植医療全体の社会的な課題として、臓器移植コーディネーターの育成や移植患者の就労支援があります。臓器移植コーディネーターの育成については、今回初めてパネルディスカッションを企画しました。移植患者の就労支援については、各地の現状を取りまとめて検討しようと、要望演題のテーマにしています。 ほかにも、適応基準が昨年拡大された肝細胞がん治療における肝移植の役割についてのシンポジウム、肝移植術後の疼痛管理とリハビリについてのワークショップなど、目新しいトピックを導入しています。 脳死下での臓器移植件数は伸びていますが、ドナー不足はまだまだ深刻です。臓器提供の啓発や、心停止ドナーによる提供臓器の機能回復など、臓器確保の努力が全方向で行われています。 iPS細胞による臓器作成も期待されるところです。ヒト肝臓作成の研究に取り組む、東京大学医科学研究所の谷口英樹教授に特別講演を依頼しました。 生体肝移植は特別な治療ではない  島根医科大学(現:島根大学医学部)で日本初の生体肝移植が行われてから約30年。総肝移植数は今年、1万件を超える見込みです。生体肝移植は保険診療であり、特別な治療ではありません。かかりつけ医から患者さんに提案する一つの選択肢としてもらいたいと思っています。 今回は、次の10年の方向性を決める重要な節目となります。肝移植医療に関わる多くの医療者に参加いただくことを願っています。 開催地となる松山市は、じゃこ天や寿司などの食や道後温泉もあります。どうぞ楽しみにお越しください。 学術集会の主なプログラム(予定) ●特別講演「iPS細胞を用いたヒト肝臓の再構成」6月25日(木)午後1時40分~同2時30分(予定) 谷口 英樹氏(東京大学医科学研究所教授)●パネルディスカッション「臓器移植法改正後10年のあゆみと、これからの10年」●シンポジウム「『肝移植の醍醐味』の伝承」 会期:6月25日(木)・26日(金) 会場:ANAクラウンプラザホテル松山運営事務局:メッド jlts38@med-gakkai.org 学術集会HP: https://ww2.med-gakkai.org/jlts38/

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がん治療と急性期医療を柱にまい進したい

独立行政法人労働者健康安全機構香川労災病院吉野 公博 院長 (よしの・きみひろ)1977年岡山大学医学部卒業。米ニューヨーク大学留学、香川県立中央病院、住友別子病院、香川労災病院脳神経外科部長、副院長などを経て、2017年から現職。  地域医療構想により、香川県では中讃、西讃地域が西部構想区域として一つになり、さらなる専門性の追求、機能分化が必要不可欠となった。就任当初から変わらず、「がん治療と急性期医療」を柱に掲げる吉野公博院長に、現状と今後の取り組みについて聞いた。 ―スーパーICUの稼働状況は。  急性期医療やがん治療を担う病院として、手術室や医療機器、ICUなどインフラの整備に多くの費用を投入してきました。地域医療構想で、医療圏が変わり、西部構想区域という形になりました。中讃から西讃までエリアが広がりましたが、当院の果たすべき役割は変わらないと思っています。 2018年、ICUの改修を行い、「スーパーICU(特定集中治療室)」となりました。施設的な規模だけではなく、臨床工学技士(CE)が少なくとも1人は、ICUに常駐という要件があります。人員と設備の基準をクリアし、現在は8床が稼働しています。 また、2019年の6月に手術支援ロボット「ダビンチ」を導入しました。当院は香川県地域がん診療連携拠点病院ですが、五つある拠点病院等の中で、ダビンチを導入してないのは当院のみでした。通常は500床、600床の病院が持つ機器で、404床の当院に導入するのはどうかという意見もありました。しかし、手術の件数も多く、思い切って導入を決めました。 泌尿器科が主体となり、ダビンチで手術を行っています。今後は外科でも腹部の手術に活用していきたいと考えています。 ―今後の方向性は。  診療報酬の改定や地域医療構想などで目まぐるしく、5年先、もっと言えば1年先の状況も明確に分からない時代です。しかし、だからこそ、小手先の改革に走るのではなく、これまで通り、「がん治療と急性期医療」を柱に進んでいこうと思います。 回復期リハビリ病棟や地域包括ケア病棟をつくることは考えていません。私たちがその役割を担わなくても、回復期以降の患者さんを受け入れてくださる病院が地域にあり、以前から連携を組んで治療を進めてきました。回復期リハ病棟のある病院、リハビリを強みとされている病院などと、連携を確立しています。   もちろん課題はあります。地域医療構想でエリアが広がったとはいえ、私たちがカバーしている人口は20万〜25万くらいでしょう。団塊の世代が85歳を超える時期には、もっと人口が減ります。今後どのように再編されるのか、医療業界全体の先行きは不透明ですが、インフラも人員も備えている以上、当初掲げた方針を貫きたいと思っています。 ―治療就労両立支援部とは。  労災事故が少なくなってきている今、どのようなサポートができるのか。その発想から生まれたのが「治療就労両立支援」です。当院では患者サポートセンターの中に両立支援部門を設置。特にがん患者さんが、治療と平行して仕事を継続できるように支援しています。医師や看護師、ケースワーカーなどが入り、会社の方にご理解いただきながら、就労を継続する方法を模索していきます。労働人口が減ってきている中、社会的にも意義のあるサポートだと思います。 2019年2月にはハローワークとの連携も始めました。働く意志はあるけれど、どうしても今の職種では仕事を続けられないという方がいらっしゃいます。そういう場合に、ハローワークと連携することで、「こんな仕事がありますよ」と求人情報を出してもらえるようになりました。この治療就労両立支援については、当院で治療を受けていない患者さんからの相談にも対応しています。今後も労災病院としての存続をかけて患者さんの就労支援に取り組んでいきたいと思います。 独立行政法人労働者健康安全機構 香川労災病院香川県丸亀市城東町3―3―1☎0877─23─3111(代表)https://www.kagawah.johas.go.jp/

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労働者健康安全機構 理事長 有賀 徹

 明けましておめでとうございます。皆々さまには、健やかな新年をお迎えになられたこと心からお喜び申し上げます。 さて、わが国では少子高齢化の傾向がまだまだ続き、そのなかで社会保障の一層の充実が喫緊の課題です。同時に、総労働力の低下に伴う三重苦も知られていて、それらは社会保障の維持が困難になること、生産と消費とがともに低下することの三つとされます。 後二者の低下は国内総生産(GDP)の低下そのものであり、社会保障と総労働力とを同時に維持せねばならないゆえんでもあります。 従って、男性の生産年齢層を補うべく、女性や高齢者の社会参加がうたわれ、治療中であっても仕事を続けられるように療養・就労両立支援指導料の診療報酬への収載も周知のことでしょう。 このような状況のなかで現在の医療を俯瞰(ふかん)すると、「量から質へ」のパラダイムシフト(新思想体系)が進行中です。すなわち、高齢社会を迎えた循環型の連携システムにおいては、どの医療機関も自らの役割に応じて他施設との時宜を得た円滑な連携が問われ、医療の質を測る評価指標もしばしば俎上(そじょう)に載ります。 そしてもちろん、費用対効果も生産性たる質を求めるものです。タスク・シフティングなど、生産性の筋からの議論も必要です。 以上により「医師の働き方改革」について病院管理者にとってはガバナンスそのものであり、そこでは医師の研鑽(さん)と労働とを切り分けるなどの管理に焦点を当てることになります。 しかし、医師を志した情熱は今も患者を診ることにつながっていますので、研鑽と労働とについての限りない連続性は〝深層〟においてその通りかも知れません。その意味で四六時中仕事について考えている心象風景もあり得ます。 町工場の創意も、農業や漁業における工夫も同じことかもしれません。つまり働く立場からは、そのような仕事を「減らせ」は難しいので、休みを「増やせ」となりましょう。働き方改革は〝休み方改革〟こそ主軸のように思います。 先に病院のガバナンスについて言及しましたが、より一層高い次元のガバナンスを社会に求めるとすれば、病院の集約化、つまりは勤務医らの集約化もあり得ましょう。 いずれにせよ、働くことは社会や経済のみならず、医師にとっての情熱との兼ね合いもあって、一筋縄では行きにくいテーマです。しかし、働き方改革つまり〝休み方改革〟は「待ったなし」です。 多くの有意な知恵が発せられる良い年となりますよう心から祈念いたします。

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産業医科大学病院 病院長 尾辻 豊

 新年おめでとうございます。 産業医科大学病院の近況をお知らせいたします。 医生ケ丘地区大学病院の2018年度の外来患者数は1294(2017年1274)人/日、入院患者数は601(577)人/日 (678床)・年間入院総数1万7164(16046)人で、年間手術室稼働数は7343(6918)件でした。2017年開始のダビンチ手術も泌尿器科・消化器外科・呼吸器外科で順調に行われ、現在は婦人科で始まりました。成績良好で、手術数も増えています。 本学の使命は産業医学への貢献です。2018年に設置した就学・就労支援センターと両立支援科ですが、全国でも注目を集めています。療養・就労両立支援指導料や相談体制充実加算は2019年3月までに全国で40件の算定が報告されていますが、2019年9月までに当院では16件を算定しました。おそらく全国で一番活発な両立支援診療を行っています。患者さんにとても感謝されるやりがいのある診療です。 当院には産業医有資格・経験者が200人前後在籍しており、当院の特徴が良く出ている診療です。若松病院の外来患者数は370(381)人/日、入院患者数は129(121)人/日 (150床)・年間入院総数2936(3002)人で、年間手術室稼働数は1323(1302)件でした。スポーツ整形外科で特に活動が高く、他診療科にもとても貢献していただいています。 産業医科大学は1978(昭和53)年開設され、1979年に病院で診療が開始されました。現在、大規模な増改築工事の最中です。最新の放射線治療機器を備えた南別館(6000平方㍍)が、2019年7月に稼働開始しました。本館(4万9690平方㍍)に空きスペースができましたので、今後は空きスペースを順次ローテートさせ耐震改築工事です。2023年4月に稼働を開始する急性期診療棟(2万2000平方㍍)ですが、まもなく敷地(マムシ山と呼ばれる11㍍ほどの丘)の造成工事が始まります。現在はない設備(ハイブリッド手術室・産業医学臨床センター等)をつくり、手術室も増やします(12→17室)。この時に本館から急性期診療棟へ大規模な移転があり、本館のさらなる改築が始まります。本館も外観は開設当時の有田焼レンガ造りを残しますが、中身は一新します。 第二創成期とも言える大きな変革時代の中で最も重要なのは医療安全、そして教育です。当院の理念「患者第一の医療」「安全かつ質の高い医療」「人間愛に徹した医療人の育成」を根幹として、地域に欠かせない病院、職員や卒業生の誇りとなりやりがいを提供できる病院となることにチャレンジします。

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病院の移転新築計画 地元の医療系大学と連携

独立行政法人労働者健康安全機構 福島労災病院渡辺 毅 院長(わたなべ・つよし)1974年東京大学医学部卒業。米ミシガン州立大学生化学部留学、東京大学医学部附属病院、福島県立医科大学内科学第三講座(現:腎臓・高血圧内科および糖尿病内分泌代謝内科学講座)教授などを経て、2015年から現職。福島県立医科大学特任教授兼任。  福島労災病院の移転計画が進み始めている。いわき市中央台への病院移転によって、看護師や薬剤師などを養成する医療創生大学(旧:いわき明星大学)との連携を強める方針だ。現在の進行状況について渡辺毅院長に聞いた。 ―病院移転の計画について。  かつてこの地区にあった常磐炭鉱の労災に対応することを目的に、1955年につくられた病院です。国内でエネルギー政策の転換などが進められた時期に、炭鉱は閉鎖となりました。その後は、地域住民の急性期医療を支える病院として運営してきました。 同じ内郷地区にあるいわき市医療センター(旧:いわき市立総合磐城共立病院)が、2018年に建物を新築。同院は病床数が700床、同じ急性期病院ということもあり、当院の運営に少なからず影響を及ぼしています。 当院の病院建物は、古いものだと60年を超えています。東日本大震災による建物の被災もあり、病院新築は急務です。 そのような時に、医療創生大学から同大学の遊休地に病院を移転新築しては、というお話をいただいたのです。現在地を離れることにはなりますが、いわき市全体の医療を考えると医療センターが北部、当院は南部を診るという役割分担にもなります。 また、福島県は急性期、特に脳卒中や心筋梗塞といった疾患での死亡率が非常に高く、いわき市はさらに高率です。 これは病院、つまり救急医療の地域偏在も理由の一つではないかと考えています。南部への移転を決断したのは、そのような課題を解決したいという側面もあります。 ―移転新築の進行状況は。  医療創生大学は、看護師や薬剤師の養成に加えて、2020年4月には新たに公認心理師や臨床心理士を養成する心理学部を開設する計画があります。 実習先の確保という意味でも、大学に隣接して病院ができることが期待されています。実習を受け入れることは私たちにとっても、医療職の確保につながると考えています。 2017年、いわき市、医療創生大学そして当院の3者で病院移転の基本合意を結びました。これに伴い現在、移転予定地と病院の土地の等価交換を実施するための手続きが進められています。 新病院建設を機に、これまでなかった脳神経外科など、新たな診療科の開設も考えています。脳血管や循環器系の疾患に対する医療の充実は、地域にとって不可欠であり、労災病院の役割の一つである「患者さんの就労支援」への貢献にもつながると考えています。 災害拠点病院の指定も目指しており、すでにDMATを編成するなど、準備を進めています。新病院の建設計画をきっかけに、医師の派遣についても、各大学で前向きに検討いただいています。 ―福島第一原発の職員の健康管理をされています。  厚生労働省の委託事業として、現場で廃炉作業をしている方の健康管理に携わっています。月に2回程度、発電所内の事務棟にある健康相談室で相談などに応じます。主に私が担当し、間もなく3年になります。 作業員は県外の方の比率が高いため、単身赴任者も少なくない。また飲酒をする人も多く、喫煙率も高い。その結果、生活習慣病になりがちです。 健康診断の結果に基づいて、食事面のアドバイスなど必要に応じた保健指導もしています。当初は作業中の熱中症対策などもしていましたが、現在はずいぶん減りました。 福島県の労働者の健康を守ることは当院の役割の一つです。廃炉作業は数十年かかる見通しのようですが、一人でも多くの職員が健康を維持しながら作業に関われるようサポートしたいと思っています。 独立行政法人労働者健康安全機構 福島労災病院福島県いわき市内郷綴町沼尻3☎0246―26―1111(代表)http://www.fukushimah.johas.go.jp/

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増加する外国人患者の受け入れ体制を強化

医療法人真生会 真生会富山病院真鍋 恭弘 院長(まなべ・やすひろ)1986年福井医科大学(現:福井大学)医学部卒業。湖北総合病院耳鼻咽喉科、福井医科大学附属病院耳鼻咽喉科などを経て、1995年から現職。  2018年に創立30周年を迎えた「真生会富山病院」の創立時からの理念は「自利利他」。最近では外国人の患者の受け入れにも積極的だ。病院経営にさまざまな工夫が求められる中で、これからの病院がどうあるべきか。新しい取り組みに挑戦する真鍋恭弘院長に話を聞いた。 —病院の特徴は。  当院では創業以来、大切にしている理念があります。それは、「自利利他(じり りた)」の精神。「他人を幸せにすること(利他)、それがそのまま自分の幸せ(自利)になる」、つまり「患者さんの幸せが第一であり、それが私たちの医療者としての幸せである」という意味です。この言葉を医師・従業員全員で日々意識しています。  最近増えているのが、外国人向けの医療です。きっかけは7年ほど前。ある医師を通じ、中国国内で治療が困難とされた患者さんが眼科治療のために来院しました。手術は成功。その方からの紹介で、その後、中国からの患者さんが継続するようになりました。  現在では中国の病院経営者が当院の勉強会に参加したり、眼科と内科の研修医が2人当院に在籍したりと、中国との交流が続いています。  港が近いことや県内の外国人就労者が増加していることもあり、中国以外の外国出身患者も増加中です。現在ではロシア、パキスタン、フィリピン、ベトナムなどさまざまな国の方が訪れるようになりました。彼らは横のつながりが強く、友人や家族を連れてまた来院してくれるのです。  なるべく多くの方が治療を受けられるよう、平日の外来受付時間は午後7時までにしています。 —海外の患者の留意点は。 やはり文化の違いでしょう。特に入院時は注意が必要です。宗教上食べられない物があることも多く、文化の違いには特に配慮を要します。入院手続き時に細かくヒアリングし、失礼がないよう気を付けています。  また、言語については、英語通訳1級1人、中国語通訳1級1人の医療通訳士が常勤し、診療のサポートに当たっています。他にも、診察申込書や病院案内、外来受付などを多言語で表示。昨年、「外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)」も県内で初めて取得しました。 —今後は。  「自利利他」の追求が変わらずテーマです。自利「自分の幸せ」は、当院の従業員の幸せにもつながります。過重労働にならないよう調整を図り、やりがいをもって仕事に取り組んでほしいと思います。  「キュアとケア」という言葉があります。キュアは治療のこと。ケアは対話など心のサポートのことです。かつては治療によって完治する病気が中心でしたが、現在は高齢化によって、延命はできるが完治は難しい、という状況の方も増えています。従来に比べ、キュアの割合が低くなり、ケアの割合が高まっていると言えるでしょう。  当院では、医師・従業員ともに「対人援助論」というケア理論を学んでいます。これにより、終末期の患者さんに「できること」が増えました。その結果、笑顔を取り戻し、「もう少し生きてみよう」と、明るく病気と向き合う方も多くなりました。これは、医療従事者にとっても大きなやりがいにつながっています。  現在、常勤医師の在籍数は40人を超えました。当院は99床の病院なので恵まれた人数だと思います。外来の最終受付時間を遅めに設定することや、海外からの患者の受け入れ、最近では働き方改革などいろいろな試みがスムーズに進めやすい状況です。  理念を柱に、良い循環が生まれています。今後もこれを継続していきたいと考えています。「自利利他」の追求と実践を通じ、これからもあらゆる患者さんに向けて、〝本当の幸せ〟を追求する医療を提供していきます。 医療法人真生会 真生会富山病院富山県射水市下若89―10☎0766―52―2156(代表)https://www.shinseikai.jp/

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地域のニーズに寄り添う精神科医療を展開

社会医療法人公徳会 佐藤病院 沼田 由紀夫 院長(ぬまた・ゆきお)1984年山形大学医学部卒業。米沢市立病院精神神経科、南陽市立総合病院神経精神科(現:公立置賜総合病院精神科)医長などを経て、2006年から現職。  1979年、佐藤神経科内科医院としてスタートした佐藤病院。現在、山形県内に病院、精神科クリニック、介護福祉施設など16もの施設を展開する法人グループに成長した。その原動力とは。 —今年7月、開設から40周年を迎えています。  社会医療法人公徳会の佐藤忠宏理事長が立ち上げたのが始まりで、当初は外来のみでしたが、病院に転換し現在は3病院で417床を擁しています。  佐藤理事長の考え方は、地域の医療ニーズを大事にすること。結果的にさまざまな機能を持つグループとして発展してきました。 転機の一つは2006年に当院に開設した精神科救急(スーパー救急)でしょう。長年、千葉県精神科医療センターの院長を務められた計見一雄先生(現:佐藤病院顧問)が立ち上げに携わりました。  東北、北海道地区にはまだスーパー救急を持つ病院はありませんでしたが、精神科救急の必要性を感じていた当院としては地域に役立つと考えたのです。  また、患者さんが高齢化するとともに必要と造られたのが介護老人保健施設。 精神科病院を退院後の患者さんの支援も必要だと、就労支援施設なども設けました。南陽市はブドウが名産です。当院は畑を借り受けてブドウ栽培も手掛けています。遊休農地の活用の相談を受けたことがきっかけでしたが、就労支援に役立っています。  親御さんが亡くなった後、残された患者さんが地域で生きていく手段が必要ではないだろうか。就労支援はそのような課題に応える狙いもあります。 —地域の精神医療の課題などについては。  入所者や地域の利用者さんの高齢化は当面の課題です。認知症の患者さんが増加していることにも対応しなければなりません。  今年7月には介護関連の事業をより本格的に進めようと系列グループに新会社ができました。地域のみなさんの介護に関する相談に応じたり人材派遣を実施したりして地域の問題解決に役立つと考えています。  2016年に米沢市立病院が精神科医の不足を理由に精神科の幕を閉じました。人口約8万数千人の米沢市に精神科病棟がなくなってはいけないと、同じ置賜地区である当院との連携が模索されました。このような経緯を経て、2017年に米沢こころの病院を開設することになりました。佐藤病院も外来患者さんの3分の1程度の約500人を引き継ぎました。  ただ、身体合併症のある患者さんに関しては引き続き米沢市立病院でも診てもらっています。  今後も地域の課題解決のために他の医療機関との連携は密にしていかなければなりません。 —専門はアルコール依存症。  幅広い分野の診療を進めながら、アルコール外来やひきこもり外来、食べすぎ肥満外来、児童思春期外来など専門外来にも力を入れているところが公徳会の特徴です。 アルコール依存については、久里浜医療センターでトレーニングを受け、診療を続けています。  アルコール依存症は厚生労働省研究班調査によるとその疑いがある人が約292万人と言われています。  しかし、早期治療にはなかなか至らず、肝硬変になって判明というケースもあります。依存症と診断されているのはわずか5%程度という数値もあるほどです。医学部の学生は、早い段階から依存症について学ぶ必要があると考えています。  そこで、医療者を中心に情報を発信しようと米沢アルコール問題研究会を立ち上げ、現在も継続した活動が行われています。 10月14日には公立置賜総合病院で、アルコール依存症に関する医療連携をテーマに講演をします。県民の健康をどのように守っていくのかという問題提起もしたいと考えています。 社会医療法人公徳会 佐藤病院山形県南陽市椚塚948—1☎0238—40—3170(代表)http://satohp.koutoku.or.jp/

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乳がんとともに生きる 患者さんに寄り添う

独立行政法人 地域医療機能推進機構 久留米総合病院 田中 眞紀 院長(たなか・まき)1980年久留米大学医学部卒業、同第一外科(現:外科学講座)入局。社会保険久留米第一病院(現:久留米総合病院)外科健診部長、外科部長などを経て、2012年から現職。久留米大学医学部客員教授、福岡県医師会理事。  「多くの乳がん患者さんたちが治療を受けながら仕事を続けています」と話す田中眞紀院長。乳がんの治療において豊富な実績を有する久留米総合病院。ニーズが高まる治療と就労の両立支援や、患者サポート体制の構築に向けて、どのような取り組みを進めているのだろうか。 ―乳がん患者の両立支援について教えてください。  お仕事や介護などで多忙な40代後半、そして60代後半が、乳がん患者さんのピークです。 がんと診断されると「仕事を辞めなければならないのでしょうか」とおっしゃる方がいます。私はがんであることをお伝えする際には「辞める必要はありません。元気になって、より社会で活躍するために治療するのですから」とお話ししています。 乳がんについては薬剤の進歩もあって、多くの方が仕事を続けながら通院で治療しています。手術を受けた方は、できれば数週間の休職で治療に専念し、十分に体力を回復させてから職場復帰を果たすことが重要でしょう。復帰後に一定の業務をこなすことで周囲の信頼も得やすいはずです。 よりスムーズにもとの生活に戻っていただく。そのために、できる限り丁寧な説明を心掛けています。 サポート体制として当院には、がん関連の認定看護師やソーシャルワーカーがいる「がん相談窓口」「就労支援窓口」があります。 就業先の産業医とも連携し、患者さんの状況に応じた治療の選択や、復帰の方法を支援するシステムも整えています。治療を継続しながらより良い生活を送るために、一人で悩まず、ぜひ相談していただきたいと思っています。 ―大切にしていることは。  患者さんの気持ちに寄り添うことです。初診から治療開始までの期間はおよそ1カ月。治療方針の説明は入院する前に外来で行います。セカンドオピニオンという選択肢も含めて十分に考え、納得した上で治療と向きあっていただきたいからです。 告知の場には、認定看護師も立ち会います。医師による説明後、1時間ほどかけて患者さんと看護師が面談。ご家族のことや生活環境などをしっかりと把握します。 この場で得た情報が治療方針とも関係しますから非常に重要な時間です。まずは、がんという現実に患者さんの気持ちが追いつくまで寄り添うこと。そこから始めることが大切なのだと考えています。 食事、睡眠、運動など総合的に患者さんをサポートする中で、やはり軸となるのは心のケアです。早期発見で克服できる可能性が高い方でも、気分が落ち込んでしまい、うつ病へと至る方もいます。患者さんの思いを受け止めることも、治療の一つなのです。 これまで不定期で開いていたがん患者さんを対象とした交流会兼ミニ勉強会。9月以降は「がんサロン」として定期的に開催していきます。患者さん同士が思いを語り合ったり、さまざまな情報を収集してもらったりできる場として活用してもらいたいですね。 8年ほど継続しているのが「おしゃれ教室」。抗がん剤の副作用による脱毛で沈みがちな気持ちを、おしゃれを楽しむことで少しでも前向きなものにできればと始めました。ウィッグや補正下着の紹介、メイク、ネイル、口腔内ケアなどをテーマに開催しています。 ―がんリハビリテーションも推進されています。  医師、看護師、セラピストの3人が1チームとなって対応。わきの下のリンパ節を郭清した方を中心に、自宅でも実践できる機能訓練をサポートしています。手の温もりが直接的に伝わるがんのリハビリテーションやリンパ浮腫ドレナージ、体だけでなく心の回復にもつながる。たくさんの人が応援している。そんな思いを患者さんに届けていきたいですね。 独立行政法人 地域医療機能推進機構 久留米総合病院福岡県久留米市櫛原町21☎0942―33―1211(代表)https://kurume.jcho.go.jp/

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