医療法人 福甲会 やました甲状腺病院 山下 弘幸 理事長・院長

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病院となって7カ月 高齢化対応の体制構築を

【やました・ひろゆき】 大分県立日田高校卒業1982 徳島大学医学部卒業 九州大学医学部第一外科研修医 1990 米Cincinnati Children'sHospital 1995 野口病院外科 九州大学医学部附属病院非常勤講師 1999 野口病院副院長 2006 やましたクリニック院長 2012医療法人福甲会やましたクリニック(現:やました甲状腺病院)理事長

 今年4月、16床増床し、「やました甲状腺病院」となった、旧やましたクリニック。甲状腺、副甲状腺疾患の内科的・外科的治療を完結できる設備を整え、新たなスタートを切った。

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―クリニックから病院へと移行した背景は。

 2006年に「やましたクリニック」を開設。6年後の2012年には19床の有床診療所となりました。

 すると、甲状腺専門で入院施設もある医療機関が少ないこともあり、患者が集中。有床診療所となる前の2011年には400例余だった手術実績は、昨年、900例に迫っています。

 週2日の手術日になるべく多くの患者さんの手術をし、約1週間で退院していただくなど、手術室も病棟もフル稼働。緊急の手術をすぐに入れられないなど不自由を感じることが増えていたため、病院への移行を決めたのです。

 甲状腺三大病院と言われる野口病院(大分県別府市)と隈病院(神戸市)、伊藤病院(東京都)のうち、最も早い1922年に開設されたのが野口病院です。隈病院は1932年、伊藤病院は1937年。いずれも野口病院で副院長を務めた先生が開院しました。伊藤病院の開院から80年。先のお二方と同じように野口病院で副院長を経験した私が甲状腺専門病院を開院できたことを、うれしく思っています。

―病院になって変わった点を聞かせてください。

 35床に増床。ベッドに余裕ができたため、手術日を週3日にし、1日当たりの症例数を削減しました。緊急手術への対応がスムーズになっただけでなく、スタッフの時間外労働も減り、職場環境も改善。「もう少し様子を見たい」と思う患者さんの入院期間延長も容易になりました。

 甲状腺がんの患者さんに対する大量放射性ヨード治療ができる「放射性ヨード治療室」2床を新設したのも、従来と大きく変わった点です。

 これまで当院で可能だった放射性ヨード治療は、バセドウ病の患者さんに対してのものと、甲状腺がんの術後の患者さんへの「放射性ヨードアブレーション治療」。この二つは使用する放射線が少量のため、外来での治療が可能です。

 しかし進行性がんの場合の大量放射性ヨード治療の際には、県内で唯一、治療室を有している九州大学病院(福岡市)に紹介するしかありませんでした。

 治療室を持ったことで、甲状腺の専門病院として、手術、化学療法、放射線(内照射、外照射)のあらゆる手段を擁し、治療を完結できるようになったことは、大きな違いだと思っています。

 放射性ヨード治療室は、放射線管理のためのさまざまな基準クリアの難しさや維持費の問題もあり、国内で減少しています。開設後は自院の患者さんだけでなく、他施設からの紹介患者さんの治療にも取り組んでいます。

―病院の強みは。

 病院となったことで、人材の確保にも良い影響が出ると期待しています。甲状腺疾患への関心が高い医師、看護師などが集まり、より良い医療が提供できる体制が整っていくと考えています。

 当院の常勤医師は現在9人。そのうち外科医が6人、内科医が1人で、麻酔科医は2人です。常勤麻酔科医が2人体制になったことで、手術室の運営が格段にスムーズになりました。術後すぐは命に関わる合併症もあり得るため、医師2人体制で当直しています。

 新しい機器も積極的に導入し、手術室を充実させることで、職員のモチベーション向上にも努めています。

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―今後の甲状腺疾患を取り巻く環境は。

 今、課題だと感じている大きなことが、患者の高齢化に伴う「薬剤管理の困難さ」です。

 慢性疾患である甲状腺の病気は、多くの薬が3カ月処方です。期間の長さが、忘れられやすさにつながる。今は定期的に受診し、薬をきちんと服用できている人でも、年齢を重ねた後、どうなるかわからないのです。

 「車の運転ができなくなり、交通の便も悪くて病院まで通えない」「連れ合いを亡くし、子どもも遠方に暮らしていて一人暮らしになった」「施設に入所する」―。

 そういった場合の薬の処方や服薬管理をどうするのか、考えるべき時代にすでに入っています。

 例えば、手術で甲状腺を切除した人や甲状腺の機能が低下した人が服用する「甲状腺ホルモン剤」は、飲まなくなると認知機能が低下します。だんだんと衰えていくので、本人も周囲の人も薬を中断したためだと気づきにくい。年齢を重ねたからだと誤解されるケースも多くあります。

 薬さえ飲んでいれば、生き生きと元気で暮らすことができるのに、それがかなわなくなる。しかも、放置すると、心不全など生命の危険も高まってしまうのです。

 甲状腺疾患の薬の大切さは、一般に知られているとは言いがたいのが現実です。啓発と同時に、かかりつけ医との連携、サテライトクリニックの設置、遠隔診療導入など、さまざまな手段を考え、統合して対処しなければならない。今、着手しても遅すぎるのではないかという、焦りに近い感情を抱いています。

医療法人 福甲会 やました甲状腺病院
福岡市博多区下呉服町1-8
TEL:092-281-1300(代表)
http://www.kojosen.com/


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