新たな都市型高機能病院 医療の地域完結を目指す
1984年東邦大学医学部卒業、同脳神経外科入局。ニュージーランド・オタゴ大学、米シカゴ大学留学、東邦大学医療センター大橋病院脳神経外科教授などを経て、2018年から現職。
東京都の区西南部医療圏(目黒区、世田谷区、渋谷区)の人口はおよそ140万人。大規模病院が複数あるこの医療圏で、東邦大学医療センター大橋病院は、2018年6月に新病院をオープン。特徴を生かして地域に密着した高度急性期医療に取り組んでいる。
―新病院の特徴を。
旧病院は1964年に建築されたもので、老朽化に伴い10年ほど前から建て替え計画がありました。幸い隣接した土地を購入することができたため、これまで利用していただいていた患者さんに移転の心配をおかけせず、新病院を開院することができました。
敷地面積は旧病院の7340㎡から1万6071㎡へと大幅に拡張。総病床数を374床から319床に減らし、1床当たりの床面積を拡大したこと、アメニティーの改善などで、安全で快適な入院環境を実現できたと思います。
大学病院として高機能な医療を提供することが使命であることから、特に2次救急病院としての機能を強化しました。ハイブリッド手術室をはじめとする最新設備を整えた手術室を増室し、血管撮影装置やMRIなど最新の医療機器もそろえました。こうした高度医療を用いて、急性期の患者さんを速やかに地域に戻すことが、当院の役割だと考えています。
―オープンから半年ほどが経ちました。
近年の地域における病病・病診連携の強化推進によって、当院の平均在院日数が9日に短縮されたところに、今回の総病床数の減少となったため、ベッドコントロールの重要性が今まで以上に増しました。
しかも、今後は救急患者のさらなる増加が見込まれます。毎日のベッド状況の把握、病棟への患者さんの振り分けなどで、現場の業務がそれまで以上に多忙になることは、オープン前から想定できました。そこで、効果的な病床管理を行うための「患者サポートセンター」を創設しました。患者さんの入退院に関わる支援業務のほか、地域の医療連携の窓口も担っています。
同センターには、医師や看護師のほか、ソーシャルワーカー、薬剤師、栄養士、医療事務などが所属。多職種が一緒に取り組むことで患者さんのサポートがスムーズになっただけでなく、職員同士が職域の垣根を越えて互いにフォローし合う意識が芽生えたことが、大きな収穫でした。
患者さんに良い医療を提供するためには、「患者ファースト」であると同時に「職員ファースト」であることも必要です。集中している業務をうまく分散して合理的に進めていく方法を考えるのが、病院長である私の役目です。
現在は、オープンして間もないため、職員も勝手がわからず、業務に難しさを感じることが多々あるはずです。小さな声も届けてもらい、直ちに対応するよう心掛けています。個々の意見が病院に伝えられることで、患者サービスのみならず職員のモチベーション向上にもつながるものと考えます。
―地域医療の展望は。
当院の病診連携の会や医師会の勉強会などを通じて、地域の開業医の先生方と積極的に交流しています。また、紹介される患者さんは、100%受け入れる方針を取っています。今後は、医療機関だけでなく、介護・福祉機関や行政との連携強化にも努め、地域完結型医療を進めます。
区西南部医療圏内には、24時間の診療体制が十分に取れていない診療科もあります。当院の脳神経外科は脳卒中など迅速な対応が求められる救急に対して、常に受け入れられる体制を取っており、各病院とも、連携を図っています。
成立したばかりの「脳卒中・循環器病対策基本法」の下、病病連携はより重要となってきます。高機能病院に生まれ変わった新病院が、この地域で必要とされる役割を果たしていけるよう、職員とともに努力していきたいと考えています。
東邦大学医療センター 大橋病院
東京都目黒区大橋2-22-36
TEL:03-3468-1251(代表)
https://www.ohashi.med.toho-u.ac.jp/