学校法人 聖マリア学院聖マリア学院大学 同 大学院 井手三郎理事長・学長
―専門看護師教育の実践
専門性をもった看護師の需要が高まっていますので、医学的な根拠(エビデンス)を正確に算定して、保健医療における自らの行動計画を把握できるような看護師を養成しなければなりません。とくに、大学院では、困難な状況にある患者さんのケアに関して専門性をもったスペシャリスト(クリニカル・ナース・スペシャリスト/CNS)も養成しています。
一方、本学が得意としている急性期医療やホスピスケア、国際医療協力については、他の看護大学にはない、系列病院という臨床の場を持っていることは大きな強みです。しかし、まだ指導する人材を十分に確保できていません。CNSを増やすという方針を達成するためにも、今後は、大学院でフルに活動できる教官を増員する必要があります。
―アクティブラーニングで国際競争力を磨く
文科省も導入に躍起になっていますが、アクティブ・ラーニング(体験や自主的調査、ディスカッションなどを通して課題に能動的に向き合う教育実践。)を積極的に取り入れることなくして、国際的な競争力を身に付けることはできないと考えています。今年の4月に学長に就任したことで、具体的に動きだすことができました。ただ、ドラスティックに変えてしまうと、4年後の国家試験に影響する可能性もあるので、慎重に導入を進めていく計画です。
ユニクロや楽天など、社内公用語に英語を採用する企業の方がよくおっしゃるのが、「英語を話すこと自体にとくに意味はない。英語で誰となにを話すかが重要だ」ということです。
私は病院の総務部長も経験したことがありますので、同じ日本人同士でさえささいなことで衝突する現場を見てきました。これが異文化、多言語ということになれば想像もつかないようなトラブルが起こるでしょう。その衝突をあえて体験させることもグローバルな人材の養成に必要だと思うのです。
国際化とは、まったく文化が違う者同士が、ひとつの目標に向かって一緒に行動する環境のことです。対応することができる人材を育成するのはとても難しい。幸いにも、本学では国際コースを設けていますので、学生に海外体験を積ませることが可能です。
フィリピン・マニラにスモーキーマウンテンという有名な「スラム」街がありました。ゴミの山から鉄くずを拾って生活していた人たちをフィリピン政府が強制的に移動させてできた街がブリハン地区で、人口は約6万人にまで増えているそうです。
そのブリハン地区に、本学の系属校で、私が理事長をしている明光学園中学・高校を設立したカノッサ修道会が、診療所や無料教育、職業教育のベースを作りました。
そのベースに国際看護コースの学生を預けて、ボランティア活動をさせるということをやっていますが、帰ってきた学生はがらっと変わります。タフネスさも身に付けるようですね。
―ゆるぎない愛の精神
カトリックの愛の精神は世界共通の理念ですから、国内の他大学と比べても、グローバルスタンダードに沿った教育を実践しているという自負があります。
聖マリア病院の思想的基盤は愛の精神ですが、生命倫理教育も病院の根幹です。
父や長兄(故人)は、聖マリア病院・学院の将来像としてアメリカのメイヨークリニック(ミネソタ州)を意識していました。メイヨーの、診療だけではなく教育に力を入れるという理念については、病院と本学のあるべき姿として目標にしていきたいと思います。