小さな楽器を一つ奏でてみよう

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丹羽 綵雪(にわ さいせつ)

 1962年東京生まれ。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒。 小・中学校美術教員免許。大手広告代理店クリエイティブ、学校法人専門学校デザイン系、ビジネス系教員、専門誌連載、映画TVドラマ演出監修、ゲームデザイン監修、TV報道番組・新聞記事素材提供、ウエブニュースコメントなど。 重度重複障害者施設音楽ボランティア隊「風と羽の会」を主催し、都内を中心に活動。

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 在職中に、衣食住に関係のない事柄をいくつ数えることができたか、仕事以外の時間に、仕事以外の何といくつ「能動的な関り」を持とうと意識してきたかが重要だ。

 とにかく日本人は意識せずに余暇を有効活用することが苦手な民族のようだ。 特に男性は仕事から解放された瞬間に、魅力の大半を仕事場に置き忘れて退職してくるものだから、余生を供に過ごそうと待っていた妻を心底幻滅させてしまう。

 たいていの人は一気に押し寄せる「老い」に気構えを整える余裕もなく、生活の時間をもっていかれる。これをくい止めてくれるものの効果的なひとつが「芸術」を能動的にとらえてみることなのだろう。

 「芸術」という時間の過ごし方は、これを鑑賞する側と自らが主体となり興じるというふたつの側面を常に持っている。これは、絵画、音楽などといった領域すべてに共通することだ。

 鑑賞して味わう楽しみをいくら深く突き詰めても、周囲や他人には一切その「味覚」を伝えることはできない。

 ところがひとたび絵筆をカンバスに当ててみたり、ピアノをポロンと奏でてみると、この小さな行為がその時間をたちまち「偉大な自己表現の装置」に昇格させてしまう。

 明らかに爺さんという見てくれが、ドビッシーの「月の光」のピアノの和音構成の機微に涙する感性よりも、年金で購入したオカリナの一音のほうが実に説得力がある。

 誰に対しての説得力か。仕事のため、と基準や理由をそこに定めてきた周囲と自分の生涯すべてに対してだ。そしてそのための健康の保持は、酒を美味くする。

 私も50歳を過ぎた最近になって始めたウクレレの魅力にはまっている。

 中学校の頃、ご多分に漏れず女の子にモテたいと始めたフォークギターは、生涯の友となった。これが結局この歳になってウクレレを始めるきっかけにもなった。

 弦楽器に耐性があるのは、私が産まれる前から家にギターがあったから。

 亡き父は職業音楽家で、江利チエミや若き日の三輪明宏などのバックバンドを担当していた。古巣である「銀パリ」が無くなるという報道には静かにギターを弾いてレクイエムを贈った。

 ただしアカデミックなクラシック音楽の家庭ではない。そもそも私が楽器に触ることやアマチュアバンドを始めたことに対して、父は決して肯定的でなかった。今、思い返せばその反発そのものが私の音楽の原動力の一部であったのかも知れない。

 私は今、重度重複障害者施設の音楽ボランティア隊を主催している。

 私の楽器の拙い演奏や弾き語りを「自己満足以外のなにかに活かしたい」という自己満足のために。アマチュアとしての楽器演奏を活かす機会をみつけた。

 楽器演奏を活かし、楽器演奏に生かされている。

 静と動。 「絵画を鑑賞すること」と「絵筆をとる」ことの違いよりも、小さな楽器をひとつ奏でてみよう。


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