九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

良質かつ高度なリハビリを

社会医療法人令和会 熊本リハビリテーション病院桑原 公倫 病院長(くわはら・こうりん)1997年島根医科大学医学部(現:島根大学医学部)卒業、熊本大学医学部附属病院(現:熊本大学病院)整形外科入局。国立療養所(現:国立病院機構)熊本南病院、熊本リハビリテーション病院副院長などを経て、2020年から現職。  2020年4月1日付で院長に就任しました。まず簡単に当院のご紹介をします。熊本リハビリテーション病院は、1974年に「熊本理学診療科病院」として創設され、その後1986年に名称を「熊本リハビリテーション病院」に変更して現在に至ります。創設時の80床から約50年の年月を経て、一般病床225床(一般病棟90床、回復期リハビリテーション病棟135床)、約30人の医師と約500人のスタッフを擁し、リハビリテーション専門病院としてさまざまな疾病に伴う機能障害に対し、加療を行ってきました。 当院の役割として、前任の先生方から脈々と息づくモットーのようなものですが、「これからも可能な限り急性期より良質かつ高度なリハビリテーションを提供」し、医師・看護師・セラピスト・医療ソーシャルワーカーなどが連携し、責任ある医療を実践し、患者さんの早期退院・早期社会復帰・在宅生活をサポートしていきたいと思います。 先ほど、「可能な限り急性期よりリハビリに介入」と申し上げましたが、整形外科・形成外科・血管外科などの診療科で年間1200例程度の手術を行う中で、疾患によっては術前から積極的なリハビリテーションを提供しています。また、近隣の高度急性期病院と連携し、骨折などの外傷や運動器疾患の術後、脳卒中などの患者さんを早期に受け入れるという「熊本方式」と呼ばれる地域完結型医療を実践しています。 リハビリテーション部門の特徴は、365日リハビリを提供し、スタンダードな手法に最新の技術や機器を積極的に導入した「ハイブリッド・リハビリテーション」を実践。リハビリの効果を高め、早期退院・早期社会復帰といったニーズに応えることができるように最大限に努力していきたいと思います。 中・長期計画にも関わりますが、「その人らしい暮らしの再構築と支援」を行うための組織づくりを行っています。整形外科を中心とした急性期治療をはじめ、回復期リハビリテーションで地域に貢献してきました。在宅支援では、リハビリテーション医療の一環である病院の在宅支援部門と介護保険関連事業所である訪問系サービス部門などが協働する仕組みを2001年につくり、すべてのご利用者に対してより良いサービスを提供することを心掛けてきました。 今後のわが国の大きな問題でもあります人口減少・高齢者の増加に伴い2025年には、1人の高齢者を2人以下で支える社会構造が想定され、高齢者の在宅復帰の高いハードルとなることが予想されます。 訪問看護・通所リハビリなどの在宅支援の重要性が増すと考えられることから、地域包括ケアシステムをさらに推進するための組織改編を行い、「生活リハセンター」として在宅部門の強化を図り、地域医療・生活支援を実施します。 最近、当院が力を入れている取り組みとしては、一つ目は高齢者医療を取りまく諸問題で、「低栄養」「サルコペニア」が注目されています。多職種による栄養サポート(NST)、摂食嚥下(えんげ)リハビリを実践・研究し、サルコペニアや低栄養の最新のエビデンスを創出、世界へ発信しています。 二つ目は、2017年より脂肪組織由来再生幹細胞を用いた再生医療に取り組み、「重症虚血肢」「脊髄損傷」「脳卒中後遺症」「変形性膝関節症」に対する認可を受け、治療を提供しています。特に脊髄損傷は2019年度約20例の加療を実施。これまで抜本的な治療方法がなかった分野でもあり、症例を積み重ね、結果や検討事項を発信できればと考えています。 これからますます地域社会の中で、当院の役割が問われ、難しいかじ取りを強いられる場面もあるかと思います。地域の皆さまや関係機関の皆さまにご指導を仰ぎながら、職員一丸となり、頑張りたいと思います。 社会医療法人令和会 熊本リハビリテーション病院熊本県菊池郡菊陽町曲手760 ☎️096-232-3111(代表)http://www.kumareha.jp/

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地域医療の充実に「患者第一」で臨む

独立行政法人 労働者健康安全機構 中国労災病院栗栖  薫 院長(くりす・かおる)1981年広島大学医学部卒業。国立呉病院(現:国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター)、広島大学大学院医系科学研究科脳神経外科学教授などを経て、2020年から現職。  広島県内で3番目の人口約22万人を擁する工業都市・呉。勤労者医療を中心に発展してきた中国労災病院に2020年4月、新院長が誕生した。 地域を見て役割を考える  広島大学脳神経外科学講座の教授職を2020年3月に退き、同年4月、中国労災病院院長に就任した。 「ここ呉医療圏は、隣接する広島中央医療圏との車の往来が多く、広島中央医療圏から流入する患者さんが増加しています。当院にも、広島中央医療圏にある東広島市から、多くの患者さんがお見えになります。当面この傾向は続くでしょう」と地域の現状を見る。 中国労災病院は労働者健康安全機構が運営する労災病院32施設の中の一つ。地域の救急・急性期医療、勤労者医療を支え、付随するリハビリテーション医療でも力を発揮。地域周産期母子医療センター、県がん診療連携拠点病院、県災害拠点病院などの指定も受ける中核病院だ。 「今後、この地域の医療のさらなる充実を図っていくためには、今よりも少し広域の視点を持ち、2次医療圏にとらわれない地域の環境や人の動きを考慮に入れた対応が必要になるのではないか」。その中で、自院が果たすべき役割は小さくないと考えている。 脳卒中対策を地域に広げたい  脳神経外科医として長年、臨床・教育・研究に関わってきた。自家頭蓋骨由来間葉系幹細胞を用いた脳梗塞に対する再生医療研究、広島大学病院へのスマート手術室「SCOT」導入など、華やかな実績も多い。同時に、地域連携という地道にも見える活動にも力を注ぐ。 常に考えていたのは「どうしたら、脳卒中患者の後遺症を軽減できるのか」ということ。発症早期の治療開始が欠かせないことから、自治体、医師会などとの連携に積極的に取り組み、早期治療実現のため多方面からアプローチしてきた。 広島市や市医師会、病院などが参加した「脳血管内治療における救急医療体制(病院前救護)検討部会」では、部会議長として、兵庫医科大学脳神経外科の吉村紳一教授ら開発の「病院前脳卒中病型判別システム (JUST Score)」を活用した救急搬送体制構築に尽力。 システムは、救急隊員が現場で血圧の値、まひや頭痛の有無などを入力すると、可能性が高い病型を画面に提示。病型に即した受け入れ病院を、搬送+治療開始までの時間順にリストで表示する。 「運用から8カ月間の中間データの解析では、重症脳卒中患者について救急隊員の医療機関への交渉回数が有意に減少しています」。中国労災病院赴任後は、呉市役所・消防署でも、このシステムについて説明するなど、連携と脳卒中対策の拡大に向けて動き始めている。 患者第一 その前提に職員  中国労災病院の理念は「患者中心の良質な医療と地域医療への貢献」。「言い換えるなら、『ペイシェント・ファースト(患者第一)』。それをいかに具体的に実践していくのか、考えるのが私の役目です」 着任直後からCOVID―19の対応に追われる中でも、第一に考えるのは患者・地域のこと。ただ、その実現の前提に必要なのは、病院職員全員の健康・安全だと考える。 「COVID―19によって、病院は、感染拡大を防ぎながら通常の医療提供体制を維持する必要が出ている。職員も、患者さんを守るための感染対策などの負担が増えています」 だからこそ、高い意識で業務に従事する職員を目にするたびに、決意を新たにする。「職員を守ることが病院、そして私の責任。安心して仕事ができる環境をつくっていきたい」 独立行政法人 労働者健康安全機構 中国労災病院広島県呉市広多賀谷1-5-1 ☎️0823-72-7171(代表)https://www.chugokuh.johas.go.jp/

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リハ科専門医を1人でも多く

三重大学大学院医学系研究科 リハビリテーション医学分野百崎 良 教授(ももさき・りょう)2004年東京慈恵会医科大学医学部卒業。同大学附属第三病院、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻修了、帝京大学医学部リハビリテーション科准教授などを経て、2020年から現職。  2020年3月に新設されたリハビリテーション科の初代教授に就任した、若きホープ。三重県には縁もゆかりもなかったが、「リハビリテーション科専門医を自らの手で育てたい」という一心で東京を離れ、赴任した。今、新境地でスタートラインに立つ。 生活に分け入る面白さに目覚めて  生まれ育ったのは熊本県水俣市近郊。「前は海で後ろは山。その山を三つ越えて、ようやくコンビニです」と懐かしむ。父親は、町の開業医。1日も休むことのなかった父は「医者になれ」とは一切言わなかったが、結局、きょうだい6人のうち5人が医師に。「人の役に立つことを生きがいにしていた。それを見て、やっぱりいいなと」 その後、東京へ進学。患者のトータルマネジメントに関われないかと考えていた時、リハビリテーション科の実習で退院前訪問指導に加わったことが、人生を決定づけた。「患者さん宅で家族や家屋改修業者の方やケアマネジャーが、一緒に膝を突き合わせて話し合うのを見て、これは面白そうだと思いました」 公衆衛生学修士を取得した東京大学大学院ではビッグデータを用いたリサーチに没頭。ここでの手応えが後の原動力にもなった。「この領域はまだエビデンスが不十分。早期介入することの有効性を示せれば、よりリハビリを広められると活動してきました」 早く実感するには、診療報酬を変えること。関わった論文が基となり、加算が決まったときはうれしかったと話す。エビデンスを活用し、政策立案やガイドライン作成にも関わってきた。「十分なリハビリを受けられていない患者さんは全国にいます。手を差し伸べられる方法を模索し、実現していきたい」 効率的なリハビリに導く  摂食嚥下(えんげ)障害に対するリハビリでは、嚥下内視鏡検査で病態観察のみならず、どのようなリハビリや食形態が最適か、踏み込んで検討する。また、脳卒中患者への下肢装具療法や、手足の筋緊張に対するボツリヌス療法では、「訓練効率を高めるにはどんな装具がふさわしいか、手足のどこを柔らかくすればいいのか、リハビリのためにできることを考え尽くします」。医師として何ができるか、アプローチの手法を数多く持っていることが重要と語る。 急性期の場合、全身状態が悪い患者が多く、セラピストが迷う場面は多い。その際に、背中を押す役割も引き受ける。「リハ科専門医が入って線引きすることで、攻め込んだリハビリが可能になるのです」 多職種のスタッフと役割分担をしていくことも、役目の一つだ。「人が好きでないと務まらない。そう思います」 認知度を高めニーズを掘り起こす  三重県のリハビリテーション科専門医は現在19人。「とにかく数を増やすこと。今、専門医養成のプログラムを作成中です。1人でも2人でも来てほしい」。周囲の病院に就任のあいさつと同時に、協力を申し入れている最中だ。リハビリテーション部の動画配信もスタートさせた。「まずは認知度アップが課題です。リハ科専門医が地域にどう貢献できるのかを広めて、全体のニーズを掘り起こしていきたい」 がん患者のための術前リハビリ外来や週末リハビリなど、マンパワーの許す限り強化したい案はいくつもある。やるべき価値があると立証するためのエビデンスも集約中で、今後解析を進めていくと言う。 生活や福祉の視点に立ち、患者に寄り添い医療につなげていくリハ科専門医の役割はますます高まる。「専門医が1人いると、地域の医療の質は確実に向上する。そう確信しています」 三重大学大学院医学系研究科 リハビリテーション医学分野津市江戸橋2ー174 ☎️059ー232ー1111(代表)https://www.hosp.mie-u.ac.jp/section/rehabilitation/

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良き教育者であるために

京都府立医科大学大学院医学研究科 運動器機能再生外科学 整形外科高橋 謙治 教授(たかはし・けんじ)1990年京都府立医科大学医学部卒業。米カリフォルニア大学サンディエゴ校、日本医科大学整形外科・リウマチ外科臨床准教授、国際医療福祉大学医学部整形外科教授などを経て、2020年から現職。  新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた2月に教授就任。診療や手術が思うようにならない中で、臨床に優れた医師を育てることを信念に取り組む。10年ぶりに戻ってきた母校で今後、実現したいこととは。 「白夜」に導かれ整形外科の道へ  工学部を目指し高校生活を送っていたある日、偶然手にしたのは、渡辺淳一の自伝的小説「白夜」だった。研修医がへき地で苦労しながら一人前に育つ姿に感銘を受けた。「そのとき、整形外科医になろうと決めました」と振り返る。 数年後、若狭湾沿いにあるへき地の病院に赴任する機会に巡り合った。雪深い道での交通事故や林業事故、スキーや海水浴でのアクシデント…。まだ若く、自信はない。しかし、目の前の患者を救うのは自分しかいない状況が続く。必死に手を動かし、勉強し、技術を磨いた。「とにかく真摯(しんし)に向き合うしか、方法がなかった。おかげで、臨床の自信がつきました」と懐かしむ。 大学に戻ってからは股関節外科を担い、2010年にはリウマチの最先端を学ぼうと日本医科大学へ。次に教授として赴任した国際医療福祉大学では、人工関節を探求。そして2020年、再び母校へ戻った。 広い守備範囲で高みを  1949年設立の歴史ある教室。関連病院は50以上、医局員は200人超、同門会も600人を超える大所帯を束ねる。「11の専門グループがあり、幅広い臨床に対応できることが特長です。さらに全国でアイデンティティーを示せるよう、一つひとつのレベルを上げていくのが私の役目です」 その先鋒(せんぽう)にしたいのが、自らの専門である関節外科。「中でも罹患(りかん)人口2000万人以上とされる変形性膝関節症ですね。手術だけでなく薬物療法、リハビリ、人工関節や骨切り術など最適な方法で対処します」 研究は、変形性膝関節症のMRI解析。レントゲンでは把握しきれない症状や、その後の経過を知り得る検査方法の開発に挑んでいる。成果の一つとして、半月板が内側にずれている患者は、軟骨が傷みやすくなることを突き止めた。 ずれた半月板を元に戻す縫合術はリスクもある。注目しているのはリハビリテーションだ。「有効なリハビリを開発した結果、症状も、関節軟骨が傷むのも抑えられることが分かりました。関節内注射、再生医療などと組み合わせる研究も計画中です」 実は、自身がこの変形性膝関節症を患う。5年ほど前、自転車レースのためのトレーニング中に発症。使い過ぎによるものだという。半月板が痛み、歩くのもおっくうになった。共同開発した温熱療法なども活用しながら治療中だという。 「まさか自分が開発した機器を、自分で使うとは思いもしませんでした。膝グループの先生からは手術した方がいいと勧められていますが(笑)。患者さんの気持ちは痛いほどよく分かります」 良き教育者になる  2月の就任時から、新型コロナウイルス感染症の対応に追われる日々。まず手術ができなくなり、医局員の半分が在宅勤務になった。院内感染が起きないよう最大限の取り組みを行いながらも、医師の育成については、しっかりとしたビジョンを示す。 「大学の教授はスーパードクターでも、有能な研究者でなくてもいい。ただ、良い教育者であることです」と高橋教授。今回起用されたのも、その熱意ゆえと考えている。 若手に伝えたいことは二つ。「まずは臨床の基本を身に付けること。患者さんの顔をしっかりと見て、触れて、診る。病棟を回って1日1回は必ず声を掛ける。電子カルテだと、患者さんの顔を見ないことも多い。患者さんの気持ちをすくい取らずして、相手の立場で考えることはできない」と話す。これは、患者だけにとどまらない。メディカルスタッフ、検査技師、理学療法士など、共に働くスタッフの気持ちも想像し、行動することを大切にしてほしいと、入局者に対してのあいさつで伝えたという。 さらに、自分のキャリアにおいて、何が大切かを考えることも忘れてはならない。「他者に貢献すること、責任の中で成長することを人生の目的にしてほしい。切に願います」 まずは良き医師として育てること。その中からスーパードクターと呼ばれるほど臨床で活躍する医師をはじめ、行政で活躍する、あるいは教育者として活躍するといった医師が出てくることが夢だと語る。 そんな、将来活躍できる医師を育てたいとの思いで家族を残し、単身赴任した。子どもたちには常に自己研さんする背中を見せたいと語る。 「息抜きは、家族との時間です。テレビ電話を前に一緒に食事したり、子どもの勉強を見たり。オンラインの恩恵を享受しています(笑)」 京都府立医科大学大学院医学研究科 運動器機能再生外科学 整形外科京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465 ☎️075-251-5111(代表)http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/orthoped/

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震災後の福島を支える新たな教育体制を構築

一般財団法人大原記念財団 大原綜合病院佐藤 勝彦 理事長・院長(さとう・かつひこ)1981年福島県立医科大学医学部卒業。スウェーデン・ヨテボリ大学留学、福島県立医科大学整形外科学講座、福島県立会津総合病院院長などを経て2009年大原綜合病院院長、2019年から現職。  東日本大震災から9年が経過。福島県内の医療事情は、震災の前後で大きく変化した。特に苦慮してきたのが医師の確保。大原綜合病院では、その状況を改善すべく、さまざまな取り組みを推進してきたと言う。 ─病院の特徴は。  当院は、1892年に開院。福島市の中心にあって、駅からのアクセスもいい場所にあります。 病院建物の老朽化に伴い、2018年、道路を挟んで向かいにあったこの土地に新築移転しました。同じタイミングで、法人内の大原医療センターにあった循環器内科など急性期の機能を当院に移行。救急・急性期医療に特化した総合病院として、新たなスタートを切りました。 新しい建物は、救急にも力を入れた造りとなっています。救急医療を専門とする医師に、設計段階からアドバイザーとして関わってもらい、ER型の救急に対応するための広い手術センターを設置。屋上にヘリポートを設けてHCU(高度治療室)、手術室、病棟をエレベーターでつなぎ、縦の動線をつくりました。 実際に運用していても、かなり効率化されたという手応えがあります。救急の受け入れ件数は、2019年でおよそ3400件となっています。 法人内を見ると、当院が急性期医療を担い、大原医療センターが地域包括ケアと回復期リハビリテーションの部分を担当。清水病院が精神疾患や認知症を対象とする「精神科」を専門としています。法人内で連携し、ほぼすべての患者さんに対応できる体制になっていることも、強みだと言えるでしょう。 ─大切にしていることは。  重要なのは、患者さん一人ひとりを大事にしながら、1人でも多くの患者さんを診ること。地域の方々の要請であり、当院の健全経営にもつながります。 ただ、実現のためには、医師を確保することが大前提です。そこで、「震災」という一見ネガティブなファクターを強みにし、「福島県で一流の教育ができるように」という目標を持って、総合診療科を中心に全職種が関わる臨床研修をつくり上げてきました。 さらに、地域全体の教育体制を底上げすべく、市内2カ所の基幹型臨床研修病院とタッグを組んで「福島市臨床研修〝NOW〟プロジェクト」を立ち上げました。「NOW」は、日本赤十字社福島赤十字病院(NISSEKI)の「N」と大原綜合病院(OHARA)の「O」、医療生協わたり病院(WATARI)の「W」を取りました。福島市医師会の協力を得ながら、著名な医師を招いたケーススタディーや講演会、さらにはフェアへの出展などの活動を展開しています。 医師の確保や育成は、これまで各病院がそれぞれで頑張っていました。しかし、手を組むべき局面では手を組みながら、互いに「良きライバル」として切磋琢磨(せっさたくま)していくことが地域の医療を守ることにつながるのではないでしょうか。今後も、連携を通して地域の研修や医療提供の質を底上げしていけたらと思います。 ─今後の目標は。  総合的な新しい医療を模索したいと思っています。心と体は不可分で、健康を損なうと体だけでなく精神も病んでいくもの。そこでリエゾン精神医学的アプローチを導入して、患者さんの満足度を上げていきたいと考えています。 また、福島県は残念ながら健康指標が高くありません。健康寿命が全国平均より低く、特定健診でメタボリック症候群に該当した県民の割合は、全国ワースト4位(2017年度)。循環器疾患や脳血管疾患によって亡くなる方の割合も、全国と比較して高くなっています。福島県を健康長寿県にしたい。そのために、予防医学的な啓発活動にも、さらに力を入れる必要があるのではないかと強く感じています。 一般財団法人大原記念財団 大原綜合病院福島市上町6─1☎024─526─0300(代表)http://www.ohara-hp.or.jp/ohara/

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人と情報がつながる「世界に開かれた大学」へ

関西医科大学友田 幸一 学長(ともだ・こういち)1977年関西医科大学医学部卒業。金沢医科大学大学院医学研究科感覚機能病態学教授、関西医科大学医学部耳鼻咽喉科学(現:耳鼻咽喉科・頭頸部外科学)講座教授などを経て、2015年から現職。  大阪と京都の中間、京阪電鉄「枚方市」駅前にキャンパスを構え、2018年には看護学部、大学院を新設。英国の教育専門誌「タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)」による2020年世界大学ランキングでは、国内の私立大学で4位、関西の私立大学では1位と、存在感に注目が集まっている。 ―2028年の創立100周年に向けて。  まずは、2021年4月にリハビリテーション学部の開設を目指しています。本学は先端医療だけでなく、四つあるすべての病院で介護福祉も手掛けています。「出生から介護まで」を実践する医療系複合大学として、リハビリの現場を支える高度な知識と専門的技術を持つ人材を育成します。 国際交流事業も、より活性化します。その拠点になるよう国際交流施設や留学生の居室、患者さんご家族のための宿泊設備などを備えたタワー棟を、2021年に竣工予定です。本学のシンボルとなるでしょう。 同時に、主に発展途上国からの留学生を受け入れる「国際大学院」を開校予定です。4年間の授業料は免除、生活費も支援します。学んだ知識を母国で生かすとともに、われわれも交流を続けながら社会発展に寄与できればと思います。 仮称ですが、「最先端医学研究所」の設立計画も進んでいます。本学の特色を生かした研究テーマを掲げ、ナンバーワンではなくオンリーワンを目指す。まだ準備段階ですが、2~3年で具体化したいですね。 大学の機能拡張に伴い、内部体制の改革も必要でしょう。各部署で立案管理していた企画業務についてはデータを集約し、IRやURA(研究活動の企画・マネジメント)などを強化しつつ部門を整備します。 ―「THE世界大学ランキング」での評価は。  ランキングに入ることが目的ではなく、客観的指標で浮き彫りになる大学の良い点、弱点をしっかり分析することが重要です。調査はそのためのツールと捉えています。 今回、教育面の充実や論文の被引用率などを評価いただきましたが、いかに維持継続するかが肝心。高評価が刺激になって、全体のレベルアップにつながることを期待しています。 医科大学としての専門性を生かし、今後も研究力、教育力の充実に力を注いでいくつもりです。 ―今後は。  本学は女性の医学校として開学した歴史があります。伝統的に女性医師が多く、彼女たちが長く活躍できるよう支援することは、われわれの責務です。 その一環として、2020年4月に「オール女性医師キャリアセンター」を開設しました。女性医師の働きやすい環境づくり、リカレント教育の充実など、今のライフスタイルに合った対応策を、このセンターを拠点に取り組んでいきたいと思います。 関西医科大学グループとしての大規模な構想も考えています。各地の医師会には、本学を卒業した開業医が多く所属しており、世界を舞台に活躍している方も少なくありません。この人脈を生かし、連携を深めることはできないか。そこで実現したいのが「グローバル・コア・センター構想」です。インターネットで国や地域を結び、情報を集約するシステムを構築したいと考えています。 現在進行中の人的交流、経済社会活動、医工連携や海外との研究開発などのデータもすべて集めます。「このような情報・人を探している」「こんなプロジェクトを立ち上げたい」といったニーズに、スピーディーに応えるシステムです。 時間はかかっても、私が担うべき案件として少しずつ充実させていくつもりです。グローバルリーダーになれる医療人を育てるため、今後も名実ともに「世界に開かれた大学」を目指していきます。 関西医科大学大阪府枚方市新町2―5―1☎072―804―0101(代表)http://www.kmu.ac.jp/

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全人的な医療を実践するリハビリテーション科医を

島根大学医学部 リハビリテーション医学講座馬庭 壯吉 教授(まにわ・そうきち)1987年島根医科大学医学部(現:島根大学医学部)卒業。米ハーバード医学校、ボストン小児病院、島根医科大学附属病院助教授などを経て、2017年から現職。  島根県において課題とされているリハビリテーション科医の不足。「急性期から生活期まで一貫して対応できる医師を育てたい」と語るのは、島根大学医学部リハビリテーション医学講座の馬庭壯吉教授だ。島根県の現状、専門医の育成の課題とは。 ―診療の特徴は。  患者さんの約4割が、脳血管疾患リハビリテーションを受けられています。神経難病の患者さんには、仮想現実(VR)を利用した歩行機能改善リハビリテーションツールを使用。脳卒中や脊髄損傷の後遺症として痙縮(けいしゅく)に悩んでおられる患者さんには、ボツリヌス療法が増えてきました。末梢(まっしょう)神経磁気刺激装置、単関節型HAL、懸垂型歩行訓練装置なども導入しています。 夕方の時間帯には、スポーツ復帰を目指す学生を中心に、「アスレチック・リハビリテーション」外来を設置。時々、プロスポーツ選手も受診されます。 「ウィメンズ・リハビリテーション」外来では、骨盤臓器脱術後、産後の腹圧性尿失禁といった女性特有の課題に対し、自費によるリハビリテーションを提供しています。 ―リハビリテーション科医の魅力とは。  リハビリテーション医療の目標は、患者さんの生活を病前の生活に少しでも近づけること。このテーマはとても遠大で、達成は容易ではなく、多くの専門職種と協力する「チームアプローチ」が必要です。これが、魅力の一つと言えるでしょう。 例えば、軽症例の心肺運動負荷試験や経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)の術前・術後評価については循環器内科と協力します。ほかにも、嚥下(えんげ)内視鏡トレーニングの受講(耳鼻科)、骨粗鬆(しょう)症リエゾンチームの普及活動(整形外科)、バクロフェン髄注療法(ITB)や覚醒下手術のマッピングへの協力(脳外科)、食道がん術前の集中リハビリテーション(消化器外科)など、各診療科との良好な関係を構築し、チーム医療を行っています。 急性期病院では、クリニカルパスに従って、患者さんを限られた期間に臓器別に診療していくことが一般的です。リハビリテーション科医師は、回復期病棟で、主治医として患者さんの全身管理を行いながら、日々改善に向けてサポートします。 さらに生活期においても患者さんの機能維持に関わり、全人的な医療を実践できる点も魅力の一つです。 ―人材育成について。  2017年にリハビリテーション医学講座が開設されてから5人の研修医を迎えることができました。研修医それぞれの個性を伸ばせる研修プログラムを立案。どの分野にも対応でき、急性期・回復期・生活期を一貫して担当できる医師を育成したいと思います。 2020年4月からは県内の公立病院へ常勤医を派遣できました。しかし、島根県のリハビリテーション科専門医の数は17人と全国でも少なく、専門医の育成が急務。より多くの医師を育て、県内からの派遣要請に応えたいと思います。 2019年に島根県が行った勤務医師実態調査によると、リハビリテーション科医の充足率は70・7%でした。必要数の32・8人に対して現員数(常勤換算後)は23・2人で約10人不足していました。必要数は各病院の希望人数に基づく数字ですが、県内の病院の状況を考慮すると、この数には妥当性があるように思われます。 圏域別の充足率が低いのは、大田(50・0%)、松江(65・8%)、浜田(66・7%)であり、県西部のみならず、全圏域で充足していないことがうかがえます。そのためにも島根大学の専門研修プログラムで専門医を養成し、必要とされる医療圏域、病院に派遣することが、私どもの使命であると感じています。 島根大学医学部 リハビリテーション医学講座島根県出雲市塩冶町89─1☎0853─23─2111(代表)https://www.shimane-u-reha.jp/

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精神科島しょ診療10年 離島住民の健康を守る

社会医療法人葦の会 オリブ山病院横田 泉 副院長(よこた・みつる)1983年奈良県立医科大学医学部卒業。京都大学医学部附属病院精神科評議会(現:精神科神経科)、光愛病院、大阪府済生会泉尾病院などを経て、2010年から現職。  大小のさまざまな島からなる沖縄県。専門的な治療が必要とされる精神科の病院として、医師不在の島々を巡回、入院患者の受け入れを行っているオリブ山病院。精神科島しょ診療に対する、さまざまな取り組みについて聞いた。 ─病院の特徴を教えてください。  当院は、沖縄県那覇市北部にある病院です。全病床数343床、精神科病床は232床となっています。 急性期の患者さん対象の精神科急性期治療病棟(精神科急性期治療病棟入院料1)をはじめ、急性期を過ぎた方や社会復帰を目指す方を対象とする精神科社会復帰病棟(精神療養病棟入院料)、認知症疾患対象のやわらぎ病棟(認知症病棟入院料1)、身体合併症を持つ精神疾患対象の合併症治療精神科病棟(精神病棟入院基本料15対1)があります。そして、介護が必要な方のための精神科介護病棟(特殊疾患病棟入院料2)の5種類の病棟で構成されています。 精神科以外では、回復期リハビリ病棟(回復期リハビリテーション病棟入院料1)、緩和ケア病棟(緩和ケア病棟入院料2)、地域包括ケア病棟(地域包括ケア病棟入院料2)を有しています。 ―精神科島しょ診療に取り組まれています。  ご承知のように、沖縄県は島しょ県であり、沖縄本島周辺にたくさんの島があります。その多くが、島の診療所に医師が1人という状況です。 精神科の専門治療を受けるには飛行機や船舶などの交通手段を使って沖縄本島まで来る必要があり、巡回診療は、多くの島で待ち望まれていました。 当院ではこれらのご要望に応えるため、2010年に巡回診療を開始し、現在では周辺の4島の巡回診療を行っています。 2010年5月に座間味島への診療を開始し、以後、南大東島・北大東島・粟国島への診療も続けて開始しました。南北二つの大東島へは那覇空港から飛行機で約1時間、座間味島へは船で1時間、粟国島へは船で2時間かけて行っています。 座間味島は日帰りですが、その他の3島へは1泊2日の行程です。それぞれの島の担当医師を決め、4人で分担しています。同じ医師が継続して行くことで、相談や診療がスムーズになっているのではないでしょうか。 ―診療はどのように行っているでしょうか。  それぞれの島の保健所などの施設をお借りして、毎回20件程度の外来診療を行っています。島の診療所や保健所、役所を通して相談があり、その都度、初診対応もしています。 入院が必要な場合は、診療所の医師、保健師、役所職員の方などと連携して、当院への入院調整を行っています。入院対応が急がれる場合は、急いで入院病棟の受け入れ態勢をとっています。ご家族、あるいは役所の職員の方に付き添われた患者さんをお迎えし、連絡があったその日のうちに入院していただくことが可能になっています。 入院するに当たっても、巡回診療をしているおかげで、患者さんに関する情報共有や連携がスムーズにできている利点があります。巡回している島からの入院は、当院でほぼカバーできています。 ―島しょ診療の今後の存続はいかがでしょう。  2010年に開始して、ようやく10年がたちました。島しょ診療は、始めた以上、途中で中止することはできません。 病院全体でバックアップ態勢を敷きながら、今後も長期間医療を提供し続ける所存です。周辺の島々の住民の皆さんの健康増進に、当院の事業が少しでもお役に立ち続けることができれば幸いです。 社会医療法人葦の会 オリブ山病院那覇市首里石嶺町4─356☎098─886─2311(代表)https://oribuyama.jp/

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