病床を有効に運用しセーフティーネットとなる
1978年鹿児島大学医学部卒業、熊本大学医学部第一内科入局。1986年熊本大学大学院医学研究科修了(医学博士)。熊本大学医学部附属病院循環器内科助手、三井鉱山三池鉱業所病院(現:社会保険大牟田天領病院)副院長などを経て2016年から現職。
熊本県荒尾市、福岡県大牟田市で病院や介護老人保健施設などを運営する医療法人洗心会に所属する荒尾中央病院。高齢化が進む地域で求められている医療と病院の現状、そして展望を松山公士院長と下川和寛事務部長に聞いた。
―荒尾中央病院の特色を。
松山公士院長(以下、院長) 療養型病床298床を持つ、内科を中心に診療する病院です。急性期病院との緊密な連携を心がけており、荒尾市民病院、社会保険大牟田天領病院、公立玉名中央病院などからの患者さんを受け入れることが多いですね。病床稼働率は96%となっています。
下川和寛事務部長(以下、事務部長) 診療面の特徴はリハビリテーションをはじめいろいろとありますが入院透析もその一つです。必然的に多くの厳しい合併症を有する高齢の患者さんが中心となります。現在、透析センターを改装中で、2019年2月に透析ベッドが32床から41床に増えます。
院長 透析は5〜6時間かけてゆっくりと慎重に行うことで身体への負担を減らし、高齢者や多数の合併症がある患者さんでも安心して透析治療を受けられるよう心がけています。高齢化がさらに進めば、このニーズはより高まるでしょう。
―市内の在宅医療の現状は。
院長 「高齢化」と「厳しい家庭事情」、この二つがキーワードなのではないかと考えています。
事務部長 荒尾市の全世帯のうち、高齢者の単身世帯が13.9%、高齢者夫婦のみで暮らす世帯が13.4%。高齢者のみの世帯では、通院や在宅医療が難しくなるという課題が顕著になりつつあります。
院長 当法人では訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリなどの在宅サービスを提供しています。ただ、当法人も市内の他の在宅サービス提供施設も、24時間対応はまだまだ進んでいません。できれば、早急な在宅医療の充実、拡充が必要だと感じています。
平均年収が300万円未満の世帯が約半数という現実も、在宅医療を推進する上では、ハードルになるのかもしれません。経済的な問題で介護施設に入るという選択肢を選ぶことができない方もいますし、家庭の厳しい事情から「在宅での介護は難しい」というケースも少なからずあります。
われわれは持っている病床をきめ細かに活用しながら、そういった方たちにとってのセーフティーネットの役割を陰ながら果たしたいと考えています。
―今後の展望や目標を教えてください。
院長 病院としては、「必要とされる多機能型慢性期病院」でありたい。入院中の患者さんの病状の変化や合併症の併発などにもしっかり対応するため、幅広い知識や知恵を持った職員の採用、育成にも力を注ぎたいと思っています。
そして、地域医療連携をさらに深化させ、「地域の方は地域でみる」環境を積極的に整え、支えていくことが目標です。
昨年2月、法人内部で「地域包括ケア会議」を立ち上げました。地域医療、とりわけ地域包括ケアシステムに有効かつ機能的に参画するには、自己啓発と組織構築が肝要だと考えたからです。法人4施設にそれぞれ「地域包括委員会」を設置し、月に1度、会合を開いています。
多彩な情報交換や協力要請がより円滑になりました。今後はこの会議の質を高め、在宅医療の計画についても緊密に話し合っていければと思っています。そして、そのような内部努力を重ねつつ、この地域の地域医療や地域の方々に貢献できれば大変うれしいですね。
医療法人洗心会 荒尾中央病院
熊本県荒尾市増永1544-1
TEL:0968-64-1333(代表)
http://www.senshinkai.or.jp/chuoh/