支え続けたい 子どもの未来、家族の安心
「未熟児から思春期まで」「救急から慢性疾患まで」を合言葉に、子どもと家族に寄り添う小児科学教室。若手医師が数多く在籍する明るいムードの医局を率いるのは、この春44歳で就任した若きリーダーだ。
―教室の特長は。
前任の竹村司教授、4代目の私も含めた歴代教授は腎臓を専門とし、そこを強みに発展してきました。現在は、医局員が増え専攻の幅も広がったことから、腎臓・膠原病のほか、循環器、血液・腫瘍、新生児、アレルギー、神経などのグループが、それぞれ特色を打ち出しています。
循環器グループでは、一昨年から大阪府内五つの医療機関と連携し、胎児エコーの遠隔診断を500件以上実施。先天性の心臓病を見つけることで出産後の手術成功に導きました。
南大阪で少ないのがアレルギー分野の医師。当医局には小児アレルギーの専門医が3人おり、積極的に食物経口負荷試験を行ったり近隣の学校で講習会を開いたりしています。
昨年、大学病院の診療科名を小児科から「小児科・思春期科」と変え、対象年齢を18歳までに拡大しました。AYA世代と言われる思春期・若年成人は、だるい、なんとなく頭が痛いなどあいまいな主訴が多い。医療側に理解してもらえずドロップアウトするなど、家族も悩む状況になりがちですが、そこは小児科が受け皿になるべきだろうと考えたのです。
必要に応じて成人領域の先生方にバトンタッチするなど、安心をつなぐ架け橋になれればと思います。
根本にあるのは、子どもたちを長い目でケアしていきたいという思いです。小児科病棟にはチャイルドライフスペシャリスト(CLS)が2人常勤しています。
―就任にあたっての思いを。
モノが言えない組織に発展は望めません。僕は医局員と年齢が近い分、上下関係なく、医局員が気持ちや疑問をぶつけられる組織にしたい。また、人生の大半を占める仕事を通して幸せになりたい、なってほしいという願いもあります。
就任後は全員と面談し、何を感じているか、今後どうしたいか話を聞き、現在はそれをまとめながらフィードバックしています。
就任にあたり、先代から受け継いだことや目指したい姿を教室理念にまとめました。子どもたちの未来を脅かすことのない診療を意識すること、つまり痛みや副作用に配慮し将来を見据えた治療を行うことを筆頭に、医局員の個性を生かし働きがいのある教室であること、南大阪の基幹病院として地域医療に貢献すること、教育機関として誇りを持ち行動する教室であること、教室での得られた知見を社会に還元すること。この五つです。
これらは一度で腑に落ちるものではないと思いますが、各々が経験を重ねる中で、体得していってほしいと願っています。
―小児科医を目指す人にメッセージを。
小児科は総合内科。多くを経験しつつ専門分野を選べます。また、未だ解明されていない部分も多く、興味を持って探求できる科でもあります。熱心な先生がとても多いのも特長でしょう。
自身も娘が2人いて実感するのですが、子育ての経験を生かせるのもすばらしい点です。特に女性は出産・子育てが糧になりますし、実生活に沿ったアドバイスは患者さんの安心にもつながります。子どもとともに成長できるのが、小児科医の醍醐味ですね。
今後、少子化が進み受診者数は減る一方で、ケアの領域は確実に広がります。家族や子育てのあり方が変容したことを発端とした疾患も増えています。低出生体重児の増加も大きな問題。臓器が未熟なまま生まれると、将来生活習慣病になるリスクが高まります。周産期も含めて真剣に取り組んでいきたいテーマです。
将来の日本を支えるのは、今、生まれてくる子たち。その子たちを守っていくことは、大きなやりがいです。
近畿大学医学部小児科学教室
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