愛知医科大学医学部整形外科講座 出家 正隆 教授

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膝の悩みなくし再び楽しみを

【でいえ・まさたか】 広島県立呉三津田高校卒業1988 広島大学医学部卒業 1995 広島大学大学院医学研究科卒業 2008 広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座教授2015 愛知医科大学医学部整形外科講座教授

 愛知医科大学医学部整形外科講座の出家正隆教授は、スポーツ選手や中高年層の膝関節の悩みと長年向き合ってきた。痛みを取り、機能を蘇らせることで「楽しみを取り戻してもらいたい」と語る。

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◎スポーツ盛んな愛知へ

 2015年8月に当講座の教授に就任しました。主な専門分野は、スポーツによる膝関節の障害。前任の広島大学では、プロ野球チーム「広島東洋カープ」のチームドクターの一員として、選手のけが治療にも関わりました。

 もともと野球やサッカーなどのスポーツが好きで、自分でも学生時代にテニスを経験。スポーツ選手のサポートを仕事として行いたいと思っていました。

 東海地方、特に愛知県は、野球やサッカー、バスケットボールなど多くのプロチームが存在します。高校、大学も多数あり、全国レベルで活躍する運動部もあります。スポーツ医療のニーズが高い地域だと言えます。

 しかし、この地方に膝関節の疾患を専門にしている整形外科の主任教授は、ほとんどいませんでした。「愛知医科大学を東海での膝スポーツ障害治療の拠点にしたい」というのが、着任時の思いでした。

 高齢になってからの膝の痛みも、学生時代のけがが原因になっている場合があります。きちんと治療することで将来の不調を防ぐことができるのです。

 2016年に、全国の学校で運動器検診が始まりました。関節の変形や痛みなどの問題を早期に発見することで、受診につなげられるのではないかと期待しています。

◎治療から予防まで

 愛知医科大学病院では、2016年に「スポーツ医科学センター」を設立し、私がセンター長を併任しています。私は下肢を、上肢は岩堀裕介特任教授が担当します。治療から競技復帰に向けたリハビリ、再損傷予防までを一貫してサポートします。

 スポーツで一度けがをすると、復帰後に再び損傷することがよくあります。再発予防は非常に大切です。

 本学には、病院の隣に「運動療育センター」があります。温水プールやトレーニングルームがあるスポーツジムのような施設で、理学療法士やトレーナーが常駐。ここのトレーナーとも連携し、膝、足首などの再損傷防止のためのトレーニングを提案しています。

◎より良い競技人生へ

 整形外科は、外傷や疾病を治すだけではなく、元の通り機能するようにしないといけません。選手は、けがをする以前と同じパフォーマンスを求めます。「何か少し違う」という抽象的な違和感を訴えることもあります。その感覚に応えるために、ビデオによる動作解析も行っています。

 「他の選手に負けたくない」という思いから、けがをしても休みたがらない選手が多くいます。

 子どもは特に、けがをカバーする柔軟性があるので、頑張りすぎてしまいます。その後の長い競技生活のために、「今は神様が休めと言っているんだよ」と諭すのも、私たちの仕事だと考えています。

◎中高年に多い膝の悩み

 スポーツ選手のけがより圧倒的に多いのが、中高年の人の膝の悩みです。50歳以上の人口は約7000万人。レントゲンを撮ってみると膝関節に問題がある人は2000〜3000万人いると言われます。

 そのうち、痛みを感じているのは800万人ほど。できれば痛くなる前に病院に来てもらいたいのですが、生活に支障が出てから受診する人がほとんどです。

 高齢者に多いのが「変形性膝関節症」です。膝が曲がってしまうと腰も曲がり、歩き方も変わってきます。膝や腰にも負担がかかり状態が悪化。筋力をつけることと、しっかり足を伸ばすことの大切さを伝えるようにしています。

 変形性膝関節症の治療は、軽症だと運動療法と投薬による保存的治療が可能です。症状がやや進んで中程度の場合には、装具によって痛みを和らげる方法があります。

 整形外科は、赤ちゃんの股関節が外れていたり首が傾いていたりするのを治すところから始まった分野で、歴史的に装具を使ってきました。ただ、装具は治療ではなく一時的な対処法です。症状が進行すると、最終的には手術になります。

◎手術の方法も進歩

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 膝が痛くて仕事ができないけれど、大きな手術は怖くてできないといった場合には、内視鏡を使って膝の中にある剥がれた軟骨や欠けた半月板を除去します。1cmほどの傷が2カ所できるだけで済みます。

 そのほかの治療として人工関節置換術があります。これは、自身の骨をかなり削るため、最後の手段と言えます。人工関節の耐用年数は現段階では平均約20年です。なるべく再手術しないようにするためにも、基本的に対象年齢は60歳以降。愛知医大の実施平均年齢は80歳くらいです。

 内視鏡手術と人工関節置換術の中間に位置するのが、骨切り術です。骨を切って関節の角度を変えることで、荷重のバランスを調整します。50〜60代の比較的若い世代で、軟骨が半分だけ悪くなっている、といった部分的損傷に適しています。自分の関節が残ること、術後も登山や卓球などスポーツもある程度できることが利点です。

 骨切り術は1960年代終わりごろからある伝統的な手法ですが、人工関節の普及で2000年ごろに一時、廃れてしまいました。しかし、ここ最近また見直されています。愛知医大でも、内視鏡手術だけでは効果が薄い患者に、内視鏡手術と骨切り術を合わせた実施を薦めています。

 骨切り術は、骨が付くまで痛みが続くことと、必要な入院期間が長いことが難点でしたが、改善されてきました。手術の方法も改良され、固定方法がピンからプレートになって、より強固になりました。

 早ければ手術翌日からリハビリを始めることもあります。麻酔科と連携して術中に神経ブロックを使うことで、術後の痛みを軽減でき、スムーズに、苦痛なくリハビリを始められるようになっています。また、リハビリそのものが進歩し、術後早期から開始することで退院も早くなりました。

 15〜20年たってもし再手術が必要になったら、人工関節に切り替えることになります。

◎発展途上の再生医療

 新しい技術として、再生医療に取り組んでいます。自分の軟骨から取り出した少量の組織を増殖させて再び自身に移植する「自家培養軟骨移植術」では、培養した軟骨で欠損部を補うことができます。

 ただ、組織採取、移植と計2回の手術が必要で、培養に1カ月、術後、軟骨が定着してしっかりした硬さになるまで1年以上かかります。「そんなに長期間必要ならば、治療しない」という人もいます。もっと短期間で治療を終えられるように、開発を進めているところです。

 さらに、この技術をスポーツ選手に多い半月板の損傷にも応用できないかと、研究を進めています。半月板損傷は症例も多く、メリットは大きいと考えています。

 私たちは、患者が治ろうとするのを手伝うのが仕事です。再起に向けた努力の場に立ち会えることを誇らしく思います。いつか、「先生に治してもらったおかげで五輪に出場できました」という報告を聞く日が来ると、うれしいですね。

愛知医科大学医学部 整形外科講座
愛知県長久手市岩作雁又1-1
TEL:0561-62-3311(代表)
http://aichi-med-u-orthopedics.jp/


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