熊本市医師会ヘルスケアセンター 明石 隆吉 所長

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変わる胃がん検診 内視鏡検査の今と未来

【あかし・りゅうきち】 1977 久留米大学医学部卒業 熊本大学医学部第一内科入局 1982 熊本労災病院 1994熊本地域医療センター内視鏡検査部長 2005 熊本市医師会ヘルスケアセンター所長

―市町村が実施する胃がん検診で、胃透視に加えて、内視鏡検診も推奨されるようになりました。

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 胃透視で見えるのは、「影絵」、内視鏡は「カラー動画」。得意分野が異なります。

 胃透視は、「病変の位置、幅や深さを客観的に評価できる」「胃の変形など形態の客観評価が可能」などがメリット。進行がんの発見や、がんがあると分かっている部分の評価に適しています。

 一方、内視鏡は胃の中を直接見ることができ、動きなども観察できます。胃がん発生に関与するヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)に感染している粘膜か否かの評価や粘膜の萎縮の範囲、色調の変化などが観察でき、検査と同時に生検のための組織採取ができることも良い点です。

 1983年、老人保健法施行に伴い、各種がん検診が老人保健事業として実施されるようになり、自治体による胃がん検診も始まりました。そのころの方法はすべて胃透視。バスで巡回して、検診をしてきました。

 検診が始まったころは、内視鏡検診が胃がんの死亡率を下げるというエビデンスがない時期。検診が胃透視でスタートしたのは当然です。

 しかし、近年は、進行した状態で胃がんが見つかることが以前よりも減っています。病変が小さな早期がんは、胃透視で拾い上げるのは困難なのです。

 受診者の高齢化も進み、バリウムを飲むことによる誤嚥(ごえん)性肺炎、バリウムの排泄障害で起こる腸管穿孔(せんこう)などの問題も増加。撮影時に透視台を動かすため、転倒などのリスクも懸念されています。

 内視鏡での検診には、「短時間に大人数の検査を実施するのが困難」というデメリットや、鎮静剤使用のリスクなどもあります。しかし、早期発見や発症リスクが高い人を拾い上げる「スクリーニング」という意味で、これ以外の方法はないのでは、と考えています。

 2013年、胃粘膜の状態から胃がんのリスクを評価する「胃炎の京都分類」が提唱されました。自治体によっては採取した血液を使って、ピロリ菌感染を判定する抗体価検査と胃粘膜萎縮の程度を示すペプシノゲン検査を組み合わせた「胃がんリスク検査(ABC検査)」を集団検診で始めているところもあります。胃がんリスクの評価や判定は今、過渡期にあり、さまざまな議論、検証が進められています。

―内視鏡による検診の未来をどう考えますか。

 「男性よりも女性のほうが、微妙な色の違いを識別できる」という研究結果があります。進化の過程における男女の役割の違いが、影響していると考えられています。

 内視鏡検査をする医師は見落としがないよう広い視野で見て、粘膜の微妙な色の違いから生検の必要性の有無を判断する。女性が力を発揮できる部分でしょう。女性医師が、今以上に活躍する場になっていくかもしれませんね。

 さらにその先は、AI(人工知能)化だと予想します。「粘膜の色調がこの状態だったら『がん』」などという情報をインプットしておきさえすれば、AIが内視鏡での画像を見て「そこはがんですよ」と知らせてくれるようになる。医師は内視鏡の操作をしたり、生検したり、出血した際の止血をしたりするだけで済むようになり、少ない人数で効率的に検査が進められるようになるはずです。

―なぜ内視鏡の道に進まれたのでしょう。

 私の医師としての歩みは、内視鏡の発展とともにあります。機器がものすごいスピードで進歩し、できることも増えていきました。ロマンがありましたね。

 胃の中を撮影し、その後、現像していた「胃カメラ」の時代から、「ファイバースコープ付き胃カメラ」、「ビデオスコープ(電子スコープ)」「超音波内視鏡」へと急速に発展。リアルタイムで胃の中が見られるだけでなく、画面に映し出して大人数で粘膜の様子などを観察、評価できるようになりました。

 対象領域も食道、十二指腸、胆道などへと拡大。診断だけでなく、治療にも活用されるようになり、がんが内視鏡で根治できるようにもなっていったのです。

 私の専門は胆膵内視鏡です。口から十二指腸まで内視鏡を入れ、その先端から胆管膵管に挿入したカテーテルを通じて造影剤を流し込み、エックス線画像を撮影する「内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)」と「内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)」に力を注いできました。

 このヘルスケアセンターの隣にある熊本地域医療センターにいたころ、急性胆管炎に対するERCPを開始。当時40〜50%だった死亡率が10%程度まで下がりました。当時はかなり珍しく、多くの患者さんが集まりました。市内、国内だけでなく、海外からも見学者が来ました。

 これまで経験したERCPは約3万例、ESTは少なくとも3000例。今は、自分が直接実施するのではなく、ERCPの偶発症で死亡率が高い膵炎をいかに重症化させないか、といった研究に力を入れています。

 2019年までの予定で臨床試験「ERCP後膵炎の重症度判定に関する鎮静剤使用量の検証」を始めます。全国40施設ほどの担当者が説明を聞いてくれました。目標症例数は1万。ERCP後膵炎のメカニズムの解明や、重症化予防につなげることができればと考えています。

―内視鏡の手技向上のために、大切なことは。

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 内視鏡を専門とする医師に限らず、仕事とは毎日毎日、同じことの繰り返し。いわば「修行」です。たとえ、いやだと思うことがあったとしても、辞めないこと。それができる人が、あるきっかけで開眼し、「プロ」「職人」になることができるのだと思います。

 他人と比べる必要はありません。他人と違うことはむしろ長所でしょう。若い人に伝えたいのは、目標を持って、死ぬまでその道を歩き通すことの大切さ。「社会常識を踏まえた上で自分が信じたことを貫き通す『変人』たれ」ということです。

熊本市医師会 ヘルスケアセンター
熊本市中央区本荘5-15-12
TEL: 096-366-2711
http://www2.city.kumamoto.med.or.jp/healthcare_center/


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