うまく説明する前によく聞いてあげること

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長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 循環器内科学教授 長崎大学病院 前村 浩二 副院長

1986 東京大学医学部医学科卒業 1996 同第三内科助手 米国ハーバード大学留学 2001 東京大学医学部附属病院循環器内科助手 2005 同特任講師 2008 長崎大学大学院循環器内科学教授 2009 長崎大学病院副病院長(兼任) ■総合内科専門医・指導医、循環器専門医、高血圧専門医、脈管専門医、動脈硬化専門医【研究テーマ】循環器内科学、特に動脈硬化、 血管生物学、循環器領域の時間生物学

 インタビュアーが違えば内容も変わる。鹿児島出身者の目に長崎はどう映るのか、専門領域の話題と課題、患者と関わる際の気の配り方、若い医師への助言を中心に聞いた。

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医局のメンバーと。前列中央が前村浩二副院長。

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 長崎大学に来てみますと、西洋医学が始まった地としての自負、その深みを感じることがあります。そして、原爆の被害を受けて900人くらいの医療者を失った中から立ち上がった先人の強さと歴史も感じます。

 西洋医学としては1857年に長崎に医学校を開校したオランダ人医師ポンペの言葉(医師は自らの天職をよく承知していなければならぬ。ひとたびこの職務を選んだ以上、もはや医師は自分自身のものではなく、病める人のものである。もしそれを好まぬなら、他の職業を選ぶがよい)があり、20年くらい前まで日本の医療に大きな影響を与えてきました。

 でも最近は忙しさの中で、患者さんのためだけを思うのは難しい局面にあり、医療を続けるためには自分生活も大切にしたいという気持ちが、若い人の中に見られるようになってきました。

 むろん24時間365日、心を拘束されたのでは、人としてモチベーションは下がってくるでしょうから、交代するなりのシステムを作るのは大事ですが、精神として患者に寄り添う姿勢は必要です。

―鹿児島出身者の目に長崎はどう見えますか。

 早くから西洋文明に触れた港町の雰囲気が残っています。また、原爆の影響は今でも感じます。テレビニュースで原爆のことを言わない日はないですね。イベントや核廃絶の集会があったとか、平和大使がジュネーブに行ったとか、何かが毎日あります。ほかの地域にいると原爆の日くらいで、普段考えることはありませんが、長崎の人は世界の核兵器廃絶を自分たちが叫んでいかなければという気持ちがあるようです。さらに、70歳以上の地元の方はほぼ被爆者で、被爆者健康手帳を持っておられるのが普通です。ほかの地域で手帳を出されて申請されると戸惑うと思います。

―専門領域での話題を。

 自分の心臓が心不全で重症になってくると、十分な血液を送る対策として心臓移植があります。ただ、ドナーが見つかるまで3年以上待ち、そのあいだは人工心臓の力を借りることになります。かつて人工心臓は自分の外にポンプがありましたから、患者さんは動きが拘束されて退院できず、移植まで入院したままになってすごくストレスが大きかったのですが、今はポンプを体内に入れられるようになったので、家に帰れるし仕事もできるようになりました。だから外来に通いながらドナーを待つのが日本でも標準になっています。

 だから今の補助人工心臓は、患者さんのQOLをとても向上させました。

―医療の進歩の恩恵ですね。

 そこで次に出てきた問題があります。

 日本では心臓移植を前提にした人しか補助人工心臓は使えません。

 人には寿命というものがあります。それを、補助人工心臓を入れることによってQOLのいい生活ができますが、入れて維持するのに数千万円かかります。だから、今まで心不全で亡くなっていた患者さん全員が補助人工心臓を入れることを選ぶと医療費がもちません。それを認めるかどうかが大きな論議になっているんです。

 30代の若い人が突然心筋炎になったら、人工心臓を付ければ助かりますし、そのあいだに移植を待つこともできます。

 高齢者になるとだんだん心臓が傷んできて、80 歳以上になれば多かれ少なかれ大動脈弁の狭窄(きょうさく)が起きて手術が必要になることがあります。これまでは超高齢者の場合、手術は体力的にできないので、苦しくなれば緩和医療から看取りというコースでしたが、今はカテーテル治療ができるようになりました。

 弁だけ治して元気になり、仕事に復帰できる年齢であればまったく問題はないのですが、助かったけれども寝たきりの生活というのでは、医療費の問題と、単に延命すればいいのかという面で真剣に考えなければならない時が早晩来ると思います。

―患者とうまく関わるコツはありますか。

 ムンテラという言葉があります。ムントはドイツ語で口、テラピーは治療です。投薬や手術だけが治療ではなくて、言葉でいかに安心させるか、納得してもらうか、それが内科では特に大きな部分を占めます。今のムンテラは、インフォームドコンセントと混同して使われていますが、本来は言葉によって安心させることです。

 大規模な臨床研究などで、実薬のみでなくプラセボでも良くなることがあります。これは医者がうまく話して安心感を持たせた効果も大きい訳です。疾患によっては、その意味から患者さんとの会話は大切なんですね。

―若い医師に助言があれば。

 患者さんと信頼関係をつくるには、うまく説明することが大事ですが、その前に、よく聞いてあげることです。また聞き方にもコツがあります。例えば胸痛について訴えられたら、具体的な問いを投げかけて聞くことです。「どれくらい続きますか」と聞けば「けっこう続きます」となるので、「1秒ですか1時間ですか」と尋ねると、「10分です」と患者さんの言葉で返ってきます。この先生は自分の気持ちをうまく引き出してくれ、よく聞いてくれたと思ってもらうことが重要です。そこには経験も必要ですから、言葉のキャッチボールの中で身につけてもらえたらと思います。


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