「眉山の思い出」
取材で徳島市に泊まった。ホテルから徳島市のシンボル眉山まで徒歩で約5分だった。
眉山はさだまさし原作の小説の舞台で、2007年に松嶋菜々子の主演で映画化もされた。
山の麓に、阿波踊り会館5階の山麓駅と山頂を結ぶロープウェーがあり、乗ることにした。1日49往復、花見の時期には大勢の人でにぎわうという。
頂上から見る夜景は美しかった。下りのロープウェーに乗ると、神奈川県から来た二十代のカップルだけがいた。こちらは三十代後半。とてつもなく気まずい空間で、地上までの6分間がとても長く、息苦しかった。
若いカップルの思い出を台無しにしてしまったのではないかと心配したが、この先彼らが結婚し、徳島旅行の思い出を語る時が来たら、私のような邪魔者がいたと笑ってくれるのではないかと自分を慰めつつ、ホテルでひとり、酒を飲んだ。