福岡県筑紫郡那珂川町 美術立体造形工房ARTREK 代表 角孝政
上の写真は、けんけつちゃんの発泡スチロール原型と角代表。
平成4年、佐賀大学教育学部特別教科(美術・工芸)教員養成課程を卒業。その後、造形の会社に就職し、FRPの商業向け技
術を7年学んだ後に独立。美術家としても活動しており、大塚製薬佐賀工場の庭に彫刻を貸しているほか、作品は福岡アジア
美術館と佐賀県立美術館にも収蔵がある。
下は完成したけんけつちゃんの飾られている広島県赤十字献血センターと渡部係長。
社会福祉法人はばたき福祉事業団が、献血参加を推進するための活動向けに作ったキャラクターが、けんけつちゃんだ。キャラクターデザインと設定は電通が担当した。各地の献血施設にマスコットが飾られるが、広島市中区の日本赤十字社広島県赤十字献血センターの1階にも、大きなFRP(ガラス繊維強化プラスチック)製のけんけつちゃん人形が飾られている。今回はその、広島の人形の製作者に話を聞いた。(平増)
―いつごろ依頼を受けたのですか?
僕は下請けで、平成23年の末ぐらいにジグアート有限会社(福岡市早良区)さんから依頼を受けました。
実際に製作していたのは、翌24年の3月です。
まだストーブを使う時期でした。ジグアート有限会社さんは博物館や美術館の展示物や建築模型が得意な会社で、遺跡の型取りなどもされています。僕はFRPの専門家なので、FRPの仕事を相談されることがよくあります。なので僕も、博物館や美術館の展示物を手掛ける機会は多くあります。
僕の仕事の7割はFRPです。FRPは手間がかかりますが、軽い上に屋外でも使える丈夫な素材です。
―どのくらいの期間がかかりましたか。
けんけつちゃんのほかにも「大水木しげる展」の告知用オブジェとして、実寸のぬりかべと一反木綿を作成。今は鳥取県境港市水木しげるロード内の「水木しげる文庫」に置かれ、一緒に撮影をすることもできるそうだ。問い合わせは㈱千年王国。TEL.0859(44)5040
2004 年、西鉄天神駅に展示するため、ぬりかべを屋根の上に載せて運搬中。(福岡市中央区新天町)
けんけつちゃんと、その台座となる島を作りました。製作期間は1か月くらいです。
あの島にあるハート型の池から、けんけつちゃんは地上を覗いている設定らしいです。それは厚生労働省のウェブサイトにも書かれています。
製作する上で必要だったので、設定資料を読みましたが、好きな食べ物はソフトクリームらしく、普通で意外でした(笑)。好きな言葉は「ちょっとチクッとしますよ」らしいのですが、言うのが好きなのか、言われたり聞いたりするのが好きなのかは知りません。
設定資料には色指定もされており、製作者が配色を勝手に変えないよう、すべて色番号が細やかに決められています。例えば、けんけつちゃんの目は黒く見えますが、実はグレーなんですよ。
―広島県赤十字献血センターには夏休み、小学生が遊びに来るそうです。渡部係長によると、製作された人形は大人気らしいですよ。
僕が作ったものが市民に愛されているのは、本当に嬉しいことです。そういう話を聞くと、造形をなりわいにする活力になります。
美術立体造形工房ARTREKでは、製作依頼のほか、工房見学なども受けている。先日は歯科医院の依頼で子供用すべり台を作ったそうだ。
問い合わせはTEL:050(3424)4985まで。