努力を積み重ねて出会いとチャンスへの備えを

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原信之

(財)福岡県すこやか健康事業団 原信之会長

【原信之 PROFILE】1966年九州大学医学部卒業、77年第二外科、81年国立病院九州がんセンター呼吸器部長、93 年九大医学部教授、06年(財)福岡県対がん協会会長などを経て09年より現職。

平成21年4月に(財)福岡県対がん協会と(財)九州産業衛生協会が合併し「(財)福岡県すこやか健康事業団」となった。同事業団はがん制圧と県民の健康増進を目指し、予防医学の拠点として地域社会に大きく貢献をしている。その先頭に立つ原信之会長に、医師に必要な心構えや事業団の活動の一端、医師を目指す学生に何が求められるかを聞いた。

―人の命に関わる仕事を続ける上で精神力の強さをどう保っているのでしょう―

私の経験で一番長かった手術は、朝の9時から始めて、終わったのが深夜の2時ごろ。約17時間かかりました。でも私は鈍感なんですかね、比較的のんきな性格で、全然苦にならないんですよ。

普段でも寝る時に電話を枕元に置いて、連絡があればすぐ病棟に駆けつけました。出血で再手術するようなこともあって、よく呼び出されましたが、本当に苦にならない。もちろん妻の支えもあってのことで、何時に電話があってもすぐに起きて出かける準備を手伝ってくれました。

がんセンター憲章の中に「病む人への奉仕につとめなければならない」とあるんです。助手時代をふくめて1500例くらいの手術に立ち会ってきましたが、一番大切なのは患者さんや家族の気持ちを汲んで医療を行なうことだと思っていますから、何かあればすぐ駆けつけるのは当たり前のことなんです。

それと私は運動が好きで、特に大学を卒業してからテニスにずっと凝り、土、日はテニス。妻から、「テニスウィドウになった」と言われるほどでした。がんセンターでは仲間が多かったので、仕事のあとテニスをし、そのあとまた病院に戻って患者さんを診るようなことを随分と長い間やってました。最近は、腰を痛め、また歳もとりましたので、ウオーキングと水泳を楽しんでいます。もう一度テニスはやりたいですね。

そのようにしてうまく気分を切り替えたのかどうかは分からないですが、精神的な負担になったことはなかったですね。

あとは、出会いでしょうか。いい先輩にいかに出会うかということ。臨床面で指導してくれた九州がんセンター名誉院長の大田満夫先生、研究面でも、元国立福岡病院副院長の広瀬先生をはじめいろいろな先生方の影響を受けました。その点で私は恵まれていましたね。それがいちばん大きいんじゃないかな。

それとやはり、家族ですよ。妻の理解です。忘年会シーズンには毎晩飲んで帰るし、日ごろはテニスばかりやってるしで。一線を退いた今は買い物にも付き合いますよ。短時間で済ませてほしいですけどね。

―チャンスのある人とない人の違いはどこでしょう―

私は常日ごろ努力しているんです。チャンスがある時に対応できる準備はいつもできていました。そのうえにいろんなめぐりあいがあった。留学する時も、第二外科(九大)に移る時もそうでしたし、がんセンターもそうです。結構努力して論文もたくさん書きました。ほかの人もたぶんそういった機会がくると思うんですが、その時に準備ができていなければ、充分に力が出せないでしょう。努力と出会いの両方が必要なんでしょうね。

―聖マリア病院との関係をお聞かせください―

聖マリア病院の井手義雄理事長が当事業団の理事長でもあるんですが、その関係もあって、聖マリア7グループの一翼という位置づけです。共同でいろんなことをやる機会も多くて組織の連携は強いです。年金や退職金制度、健康組合も同じですし、健( 検) 診の判定基準の統一化も行われており、非常に密な関係にあります。

―リーダーシップについてどう思われますか―

井手理事長が非常に高い理想を掲げて、事業団発足と同時に質の高い健( 検)診をめざし、新たに学術研究センターを作られたんです。そういったリーダーシップと高い理想を受けて職員は業務を行なっていて、検診総数で60万、がん検診は年間30万件を扱っています。九大を含む県内4大学、九州がんセンター、医師会との結び付きも強く、組織的に非常にしっかりしています。質の高い検診ということでいえば、毎年、健( 検) 診の成績をくわしく分析し、冊子としてまとめを報告していますし、質を保つために大学、病院などの専門家からなる6学術専門部会(胃・大腸がん、婦人科がん、乳がん、肺がん、生活習慣病、労働衛生)を設けて、評価・指導を受けています。

さらに「ストップ・ざ・がん・ボランティアの会」を平成17年に発足しました。現在50人ほどの会員が、受診率をアップさせるために独自に講演会や出前講座、イベントなどの活動をしています。来年NPOを申請するそうですから、かなり公的になって活動もしやすくなります。また牛尾恭輔理事長の「癒し憩いネットワーク」、菊池昌弘理事長の「健康ネット福岡」、大野真司先生が代表理事を務めている「ハッピーマンマ」とも連携して、必要であればこちらから人を派遣しています。

―医師を目指す若い人に何を求めたいですか―

今の日本のシステムは、成績がよければ医学部に行こうか、ということになるのかも知れませんが、欧米などでは、本当に医師を目指す人は4年生大学を経たあと医学部を受ける。本当に強い目的を持って医者になるわけです。その点で日本は、もちろん優秀な人も多いですが全員が使命感を持っているわけではないようです。偏差値だけで決めるのではなく、心の方の教育も非常に大事だと思うんですね。人の命を扱う仕事ですからそのバランスが重要な気がします。核家族社会になり、人間関係の大切さを十分に知らないまま医者になり、患者さんやその家族とのコミュニケーションが取れない医師もいると聞きます。大学の勉強はよくできても、臨床の場で、心の教育ができていないから自分中心となり患者さんとトラブルが起こることが、私が教鞭を取っていた時にありました。

今後の医学教育で必要なことは、これまでは患者さんを治す治療学に重点がおかれてきましたが、これからは、予防医学にもっと力をいれるべきと思います。また高齢化時代を迎えた今日、必ず訪れる死について、真正面から取り組む死生学の教育も必要ではないでしょうか。

―いま緊急の課題はありますか―

がんは禁煙をはじめライフスタイルを変えることで7割は予防できるし、検診で発見されると治る率も高いですが、検診をする医師探しが大変なんです。これは全国的な傾向で、検診医の多くが一線を退いた方で、若い検診医が極めて少ない。非常勤の形で大学の医局から派遣してもらっているのが現状です。検診の向上を呼びかけながら、それを診る常勤の医師が不足しています。がんは予防が大事ですから、今の日本の高い検診レベルを保つためにも早く解決すべきです。


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