九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

独法化も視野に入れ 装い新たに今、前進

名古屋市立東部医療センター 村上 信五 病院長(むらかみ・しんご)1980年愛媛大学医学部卒業、同耳鼻咽喉科。愛媛県立中央病院、米スタンフォード大学留学、名古屋市立大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室教授などを経て、2018年から現職。  独法化、さらには名古屋市立大学の附属病院となる構想が検討されている名古屋市立東部医療センター。その牽引役は同大学の耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室教授を長らく務め、大学病院の副病院長も兼任していた村上信五氏。2018年にセンター病院長に就任、今年3月には教授を退任して専任となった。思い描く未来像とは。 —今秋、新たに「入院・診療棟」が完成しました。  4年前に竣工した「救急・外来棟」と連携しやすいよう診療部門を配置しました。1階は主に放射線診断・治療部門、2階には内視鏡や生理検査などの部門、さらに3階から8階までは病棟部門が入ります。  9月に引き渡しがすんで、来年1月から稼働予定です。さらに、旧病棟跡に駐車場を整備。これで完成形となります。  「救急・外来棟」開設後、救急部門は着実に実績を上げ、昨年2月、救命救急センターの指定を受けました。「断らない救急」をモットーに、年間7000件超の救急搬送を受け入れています。ただ、応需率しきれない場合もあり、まだ改善の余地があると思っています。 —名古屋市立病院改革の一環として、独法化の検討が進んでいます。  名古屋市立大学(名市大)のもと、名市大病院、市立西部医療センターと当センターがホールディングスとなるイメージです。大学はすでに地方独立行政法人ですので、二つのセンターが独法化し、三つの病院が大学の附属病院となる形をとります。  大学病院が800床、西部医療センターが500床、当センターが498床。合わせて約1800床の大きなネットワークとなる。スケールメリットが十分に生かせるでしょう。  大事なのは、大学に従属するのではなく、それぞれが特色を維持し、付加価値を加えていくことです。西部は陽子線を含むがん治療や小児・周産期に強みを持つ。われわれは救急、循環器、脳。周辺病院とのすみわけも考えながら、どこの何を強化していくのか、大学の主任教授と相談し計画的に進めていきます。  公立病院ですから、不採算部門を引き受ける責任もある。しかも経営を安定させるとなると、目玉となるものをつくる以外にないと思っています。  救急の充実にも力を入れたい。現在、常勤医90人、シニア・研修医が計40人。救急専任は3人で、これで救急をフルに回すのは難しい。大学と一体化することで若い医師が加わってくれることを願っています。  人材交流が活発になれば、職員のスキルアップやキャリアアップにもつながるでしょう。研修医や医師に対する求心力も高まりますし、3病院で協力すれば治験や臨床研究の症例もより多く集まる。全体で医療レベルのアップが望めます。  西部も当院も、医師の9割以上が名市大からの派遣で病院間の風通しもいい。これを機にさらにマンパワーを高めたいですね。 —これからの意気込みを。  社会の変化に対し、今後、迅速に運営改革できる体制でないと存続は厳しい。独法化の狙いはそこです。  教室運営や病院運営で大事なのはチーム力。多様性を発揮できるチームは伸びる。医師、メディカルスタッフはもちろん、病院には他にさまざまな職種の方が働いています。縁の下の力持ちとして、仕事をしてくれている人にも目を向け、感謝することを全職員に伝えていきたいですね。  大事にしたいのは、あいさつと笑顔です。私は長年、顔の研究をしています。表情には説得力がある。あいさつも先にした者勝ちだと私は思っています。「まず自分から」を続けていくつもりです。  病院は、変わるチャンスを迎えています。独法化はあくまで手段ですが、やってよかったと言われないと意味がない。決まった暁には猪突猛進でやっていきます。 名古屋市立東部医療センター名古屋市千種区若水1—2—23☎052—721—7171(代表)http://www.higashi.hosp.city.nagoya.jp/

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ワークライフバランス改善で 一人一人が輝く職場に

愛媛大学大学院医学系研究科 小児科学講座 江口 真理子 教授(えぐち・まりこ)1991年広島大学医学部卒業。広島大学医学部小児科・広島大学原爆放射能医学研究所、英国癌研究所、獨協医科大学血液内科、愛媛大学医学部附属病院周産母子センターなどを経て、2019年から現職。  愛媛大学医学部小児科学講座に、初の女性教授が誕生した。江口真理子教授は、白血病や小児がんの研究に取り組む一方、仕事と育児を両立する女性医師のロールモデルとしての期待がかかる。江口教授が語る医局の将来、そして女性医師の働き方とは。 周囲の協力を得て 走り続けた11年  「病院長先生をはじめ周囲の先生方のご理解がなかったら、私は今、ここに座ってはいられませんでした」。2人の子どもを育てながら、愛媛大学小児科学講座初の女性教授となった。  子どもの頃、父から渡されたゲノムと病気を特集した科学雑誌を読んで、医師を志した。広島大学医学部を卒業後、英国留学を含め、国内外の研究所で実績を積み、小児血液腫瘍学・遺伝学のプロフェッショナルとしてのキャリアを歩んできた。  愛媛大学に赴任する直前の2008年1月に出産。夫婦共働きで、子育て・仕事の両立が始まった。  その頃の愛媛大学は院内保育所が開設されたばかり。両親も遠方のため、協力を頼めない。そこで仕事を続けるために、当時の病院長にさらなる学童保育など施設・制度の拡充をお願いしながら、関連学会にも学術集会の開催時に託児所の設置を呼びかけた。周囲 もこれに応え、手探りながらも徐々に環境が整えられてきた。  これらの施設は現在、子育て世代の医師の大きな助けとなっている。「子育てと仕事の両立について自分でも工夫しながら、その都度周囲に相談して、徐々に整えていただきました」  江口教授と多くの医師たちによって、長い時間をかけて築いた愛媛大学医学部附属病院の育児サポートシステムは、今では大切な財産になっている。 患者や家族そして 医師個人の幸せを  「患者と家族の幸せはもちろん、良い仕事のためには医師本人が幸せでないといけない」と江口教授。  「スタッフ一人一人が夢をかなえ、喜びを分かち合える医局を目指したい」として就任から4カ月、大学の医局だけでなく関連病院の医師から夢や希望、困り事などを聞き取ってサポートやアドバイスを行っている。  「みなさん本当にさまざまな夢をお持ちです。それを一緒にかなえて分かち合える方向に持っていきたい。大きな仕事をすることも大切ですが、医師個人の幸せも忘れてはいけないのです」  今後は効率化や人員配置の見直しによるワークライフバランス改善に取り組むという。 研究の充実と 人材育成に注力  医局としては「新生児から成人まで切れ目のない医療を提供し、愛媛で安心して子どもを産み育てられる環境をつくる」ことを目標とする。  具体的には、①集約化による地域格差の是正、②院内・院外連携による診療や研究の充実、③次世代医師の育成の3点だ。  愛媛県では現在、地域を三つのブロックに分け、各地の拠点病院を中心として小児医療を集約している。拠点病院と医局の連携も良好で、寄附講座を通じた人材育成も図っている。  しかし、それでも十分ではない。特に南予・東予は人員不足による医師の負担が大きく、小児救急体制もさらなる充実が必要だ。  人材確保のために、医局の魅力を発信すると同時に、若手医師と女性医師の育成・活用に取り組む方針だ。  また、研究の充実にも意欲をみせる。院内連携によりほぼすべての小児科専門分野の研究が可能という同医局で、若手医師のリサーチマインドを育成し、さらには留学を後押しする。  女性医師についても「周囲に助けられながらここまでやってきた自分を見て、女性医師が頑張ってくれるとやっぱりうれしいです。みんなが活躍できるようサポートしていきたいですね」 愛媛大学大学院医学系研究科 小児科学講座愛媛県東温市志津川 ☎089―964―5111(代表)https://www.m.ehime-u.ac.jp/school/pediatrics/

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地方の医療は魅力的 人間力ある医師に成長できる

愛媛大学医学部附属病院腫瘍センター 薬師神 芳洋 センター長(やくしじん・よしひろ) 1988年愛媛大学医学部卒業、1993年同大学大学院博士課程卒業。米ハーバード大学医学部ダナファーバー癌研究所、愛媛大学医学部講師などを経て、2006年から現職。2012年から同大学医学部臨床腫瘍学講座教授兼任。  四国4県で最も人口の多い愛媛県では、愛媛大学医学部附属病院を含む六つの地域がん診療連携拠点病院と、国立病院機構四国がんセンターによってがんの診療体制を整えている。同大学医学部附属病院腫瘍センター長の薬師神芳洋教授に、取り組みと課題を聞いた。 ―腫瘍センターとは。  愛媛県のがん医療水準を向上させるため、2006年に開設されました。主な役割は、院内各診療科のがん医療へのアドバイスとサポート、がん医療技術に関する情報提供、地域への啓発活動。合併症の多い患者さん、複数のがんを併発している患者さん、原発不明がんの患者さんの診療も引き受けています。 2019年8月、京都大学医学部附属病院と連携して「がん遺伝子パネル検査」を開始しました。四国がんセンターに続き県内2カ所目です。 院内がん医療のサポートでは、まず、主治医の先生が診断し、標準治療を施します。効果が出なかった場合、主治医から当センターに治療法の相談や共同診療の依頼がきます。主治医は各診療科の先生で、われわれはバックアップです。 ―腫瘍センターの課題は。  人材確保です。当センターのがん医療サポートシステムは、一定の役割を果たすことができています。しかし、本当はもっときめ細かに治療に介入していきたい。それを阻んでいるのがマンパワーの不足です。 愛媛大学は毎年約100人の医師を輩出しますが、3分の2が都会の病院に流出します。残った3分の1が県内に分散するので、当教室でも毎年1人入局すればいいほうです。 より多くの卒業生に県内に残ってもらうためには、都会と同レベルの高度な技術が身に付けられることをアピールすると同時に地方で取り組む医療の魅力を発信していく必要があります。 都会と比べて地方の病院は患者の絶対数では劣りますが、一人ひとりの患者さんとじっくり向き合い、人生や生活にトータルで関わることが可能です。医師自身のプライベートを充実させることや濃密な人間関係の中で人としてのクオリティーを高めることもできると思っています。 ―愛媛大学医学部臨床腫瘍学講座について。  臨床系研究室として、実臨床に即した研究を行っています。 例えば昨年発表した治療法と医療経済の研究。同じ効果を得られる二つの治療法があった場合、費用が安いほうがいいですから、本当に二つの治療法の効果が同じかを比較検討しました。また、抗がん剤と制吐剤の組み合わせ。どの組み合わせが一番有効で負担が少ないか調査して発表したこともあります。 現在の抗がん剤治療は使用する薬の種類や量に高齢者と若い人の区別がなく、体力やダメージの程度による薬剤量の加減は主治医に任されていますが、それを自動的に決められるシステムができないかと取り組んでいる医師もいます。 当教室では医学生も実習の一環で研究をしています。興味深かったのは、患者さんの社会的背景による生命予後の比較。がんの進行度や臓器能力で差が出るのは当然ですが、病院への通院時間によっても左右されることがデータではっきりと示されました。 同じ治療を受けても通院時間が長いほど予後が悪いのです。遠いと病院に行きにくいという単純な受診機会の逸失や、地域の専門家の不在などが原因と考えられます。 愛媛県の医療上の最大の課題は、通院のための交通手段や交通網の整備でしょう。東予や中予はさておき、南予や山間部には鉄道も高速道路もありません。へき地に医療をどう届けるか。行政の取り組みにも期待します。 愛媛大学医学部附属病院 腫瘍センター愛媛県東温市志津川454☎089―964―5111(代表)https://www.m.ehime-u.ac.jp/hospital/cancer/

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整形外科を柱に 質の高い医療を提供

一般財団法人 積善会 愛媛十全医療学院附属病院 松田 芳郎病院長(まつだ・よしろう) 1974年山口大学医学部卒業。済生会西条病院整形外科医長、愛媛大学医学部附属病院整形外科助教授、宇和島社会保険病院(現:JCHO宇和島病院)院長などを経て、2013年愛媛十全医療学院学院長に就任。2019年から兼任で現職。  愛媛県松山市に隣接する東温市。ここに開校40周年をむかえる愛媛十全医療学院とその附属病院がある。今年4月、愛媛十全医療学院学院長を務める松田芳郎氏が附属病院の病院長も兼任することとなった。松田病院長に、附属病院の運営方針と抱負を聞いた。 特色を生かし高い専門性で勝負  「経営改善の成果を、医療・教育・職員に還元していく。この良い循環をつくることが私の仕事です」 今年4月に就任した松田病院長は、2013年に同学院の学院長に就任し、リハビリテーションスタッフの育成に尽力してきた。学院長着任後の6年間、週1回は附属病院で診療を行ってきたこともあり、学校・病院の両現場を深く理解している。 「しばらくの間、引き受けてくれと松尾嘉禮・積善会理事長から言われました」とほほ笑む。この人事は、学院と附属病院にとって、最善の決断といえるだろう。 愛媛県東部に拠点を構える十全医療・福祉グループは、多数の病院、学校、福祉施設などを有し、地域医療を支える一大グループだ。その中で、愛媛十全医療学院は、全国のリハビリ専門学校の中でも歴史が古く、卒業生は全国各地で医療現場をけん引している。近年は同種の専門学校が増える中、大学病院での解剖実習など、特色あるカリキュラムで学生を引きつける。 附属病院は、松田病院長の専門である整形外科、内科、リハビリテーション科で構成され、病床数は97床。リハビリテーション科では、学院との連携により、質の高い治療メニューを提供している。近隣の基幹病院とも良好な連携関係を築いており、地域の開業医からの紹介も多い。 整形外科では、松田病院長を筆頭に4人の医師を抱え、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなどの脊椎外科、スポーツ外科や関節外科、肩関節などに高い専門性を持つ。手術症例数は、県内でもトップクラス。研修医は愛媛大学から2人受け入れており、医師不足の中での派遣に松田病院長は「ありがたい限り」と謝意を示す。 骨粗しょう症の予防啓発にも意欲  松田病院長は就任後、早速組織の運営体制強化に着手した。かつて病院長を経験したノウハウを応用し、意思決定や情報共有の方法を強固にして効率化を目指す。 また、患者獲得の一環として骨粗しょう症の診療体制を強化。「骨粗鬆症リエゾンサービス」の認定看護師をすでに3人養成し、力を入れていく方針だ。 この地域は高齢化率が高く、女性の1人暮らしも多い。骨粗しょう症による骨折でQOLが著しく低下することを懸念し、「こんな状況の中、患者さんを待っているだけではいけない」と、院外での啓発活動や出張検診といった新たな取り組みに意欲を示す。具体的な目標設定には至っていないが、今年度中にワーキンググループを設置すると同時に、啓発イベントを実施したい考えだ。 「まずは独自にやってみて、エビデンスができたら行政にも働きかけていく。日々の診療の合間をぬって進めていきます」 「診療が好きなんです」  松田病院長は69歳。山口大学医学部を卒業後、各地の病院で研さんを積み、1976年に愛媛大学医学部附属病院が開設されると故郷松山に戻ってきた。 松尾理事長とは、同グループの十全総合病院の研修医時代からの縁がある。「研修医3年目の手術の時、麻酔を担当していた松尾先生(当時院長)がなかなか来られないので、自分で送管して手術したら、えらい怒られたことがありました」と思い出を語る。 診療が好きだとしみじみ話し、「生涯、臨床医として生きる。これが自分のテーマかな」と、やさしいまなざしで病院を見つめる。 一般財団法人 積善会 愛媛十全医療学院附属病院愛媛県東温市南方561 ☎089―966―5011(代表)http://www.ehime-juzen.jp/

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より連携を強め地域医療全体のレベルアップを目指す

社会医療法人 石川記念会 HITO病院相引 眞幸 病院長・救急科部長(あいびき・まゆき)1978年金沢医科大学医学部卒業。同麻酔科、香川医科大学(現:香川大学医学部)麻酔・救急医学講座、愛媛大学医学部救急侵襲制御医学分野(現:救急医学分野)教授などを経て、2019年から現職。  愛媛県四国中央市にある社会医療法人石川記念会HITO病院。地域の中核病院として救急医療、4疾病対策、臨床研修を担う同病院は今春、愛媛大学医学部から相引眞幸名誉教授を病院長に迎えた。大学教授から民間病院へ。相引新病院長に、就任の抱負を聞いた。 大学教授から民間病院の病院長へ  愛媛県や香川県の大学病院で救急医療の最前線に立ち、臨床・研究・教育に力を注いできた。特に集中治療、手術、救急を担う香川大学の麻酔・救急医学講座(当時)では数多くの論文も発表。頭部外傷や心停止後症候群への低体温療法の分野で豊富な実績を築いた。 「地元の人のために先生の知識や経験を役立ててほしい」というHITO病院の石川賀代理事長の熱意に応え、病院長に就いた。 大学病院と民間病院とでは、経営も理念もまったく異なる。就任後、さまざまな課題があることを、改めて実感しているという。現状やシステムを早く理解したいと、就任から2カ月、自ら現場に入り、次々に運び込まれる患者の診療に当たっている。 「救急患者をすべて受け入れたい。これを実現するためには、まず現場を見て問題点を見いだすべき。トップダウンで考え方を示しながら、現場からのボトムアッ プで改善を進めていきたいと思っています」 医師として目指すべきもの  四国中央市土居町の出身だ。実家の医院は兄が継ぎ、97歳で亡くなった父親も晩年まで元気に診療を続けていた。 医者になることは念頭になかったそうだが、結局医者になり、研究者の道を断念した父親の夢を受け継ぎ、多くの研究成果を残した。「宇摩医師会の特別講演で呼ばれた時には、うれしそうにしていましたね」 当初は義兄からの助言もあり、麻酔科へ進んだ。「全身管理という面ではとても勉強になりました。20年ほど前に、集中治療や救急の専従になりました」 その中で感じたのが、救急医療において、院内外とのコミュニケーションが重要であること。 「これは病院経営も同じです。一つの病院でできることは限られています。そのためにも、医師、看護師、メディカルスタッフや事務、そして救急救命士なども含めて、お互いに意見を出し合い、他者からの厳しい言葉にも耳を傾けていくことが大切です」 地域連携の充実を図りたい  1日の救急患者数は、平均14人。患者はすべて受け入れ、治療し、各地域の医療機関に戻すことを理想としている。 しかし、愛媛県東部の宇摩医療圏には、それを受け入れる医療機関の数が足りていない。周辺にはHITO病院のグループであるクリニックや介護・福祉施設などもあるが、地域全体の連携システムはさらに整えていく必要があると感じている。 「顔が見えるコミュニケーションで信頼関係をつくり、意識を共有。勉強会などでレベルアップを図っていく。地域と共に成長していく必要があります」 その中で、HITO病院に以前からある「絆カード」に注目している。 「当院が逆紹介した患者さんに渡すカードです。ただ紹介して終わりではなく、このカードを持つ患者さんはいつでも受け入れる意志を示したもの。この仕組みのことを知ったとき、とても新鮮でした」 地域の診療所に対してのバックアップ体制が整えば、地域全体の医療のクオリティーの向上にもつながっていく。 「急性期病院としての存在価値を高めるためには、救急隊や行政を含めた多様な連携が不可欠です。私がこの病院に呼んでいただいた理由は、そこにあると思っています」 社会医療法人 石川記念会 HITO病院愛媛県四国中央市上分町788-1 ☎0896-58-2222(代表)http://hitomedical.co-site.jp/

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さらなる成長のために必要な要素は「想像力」

愛媛大学大学院医学系研究科 脳神経外科学講座 國枝 武治 教授(くにえだ・たけはる)1993年京都大学医学部卒業、2003年同大学院医学研究科修了。大津赤十字病院、米クリーブランドクリニック、京都大学医学部附属病院脳神経外科などを経て、2016年から現職。  脳腫瘍、高齢化に比例して増加すると言われるてんかん、昨年成立の対策基本法に関連する脳卒中の体制整備―。多様な役割が求められる中、國枝武治教授は「やはり〝人〟が重要」と強調する。県内の現状も踏まえて今の思いを語ってもらった。 ―育成についてどう感じていますか。  どのような種類の手術が、どれほどの難易度であるのか。画像診断技術などの向上によって、一定程度、予測できるようになりました。もちろん若い先生にいきなりすべてを任せるわけにはいきませんが、安全性が確保できる範囲で、積極的にチャンスを提供したいと考えています。 逆に言えば、十分な経験があり、後進の指導に当たる立場にいる者が、いつまでも手術の中心にいてはいけない。何らかの事情によってその人が対応できなくなったときに、医療の「空白」を生んでしまいかねないからです。1977年に開設された当講座の1期生が定年を迎える時期に入りました。愛媛県内の脳外科を支えるために「引き続きサポートする」とおっしゃる先生も多く、心強く感じています。 愛媛県の脳外科の専攻医はここ数年、1~2人ほどいます。いい傾向ではあるのですが、これから引退していく医師と、この領域を目指す医師の数のバランスがとれていない。これまでは「医師がなかなか増えない」状況だったのが、いよいよ「全体数が減っていく」時代に転じるのです。 ―何が大事でしょうか。  人材を集める努力は当然のこととして、今いるメンバーを「いかに早く育て上げるか」が問われています。 さまざまな機器の技術を活用することで「玄人の勘」に頼らずとも、標準的な技術を身に付けることが可能です。そこから先へと進む上で大切なのは、イメージを広げること。自身が術者となる症例だけでなく、例えば人の手術を見て「自分だったらこうする」。そんな想像力を働かせることも欠かせないと思います。 若い医師にどこまで任せることができるのかは、指導する側の技量が左右します。指導する側のレベルが上がれば、おのずと教わる者のレベルも上がる。その積み上げによって、講座全体の力を引き上げていくことを目指しています。 ―関心があることは。  前教授である大西丘倫先生の時代から神経膠腫(グリオーマ)、そして特に悪性度が高い膠芽腫(グリオブラストーマ)の治療に力を入れています。腫瘍をできるだけ広範囲に切除したいが、脳の重要な機能は温存しなければならない。浸潤していくタイプの腫瘍であるグリオーマの手術は「どこでやめるか」という判断が極めて難しいのです。 ニューロナビゲーションシステムや神経モニタリング、エコー、5│ALAを用いた光線力学的療法(PDT)など、さまざまな手法を駆使して腫瘍の最大限の摘出に挑みます。現在、術中に採取した細胞のDNAの量を測定してグリオーマの悪性度を診断したり、腫瘍が浸潤している範囲を推測したりする研究も進めています。  私の専門の一つである機能的脳神経外科では、今年からてんかんやパーキンソン病の手術を開始しました。四国での広がりは、まだこれからという段階です。覚醒下開頭手術などの手法は、もともとてんかん治療で発展してきた技術を応用したもの。高齢化が進むほどてんかん患者は増えるとされ、診断のニーズ、さらなる治療法の開発などが求められるでしょう。 そこで得られた知見はさまざまな疾患に役立つ可能性があり、「脳の機能を守る」ための医療にフィードバックされるはずです。当講座の新たな特徴として、推進していきたいですね。 愛媛大学大学院医学系研究科 脳神経外科学講座愛媛県東温市志津川☎089─964─5111(代表)https://www.m.ehime-u.ac.jp/school/neurosurgery/

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整形外科を柱に展開 シームレスな医療・介護を

独立行政法人地域医療機能推進機構 宇和島病院 渡部 昌平 院長(わたなべ・しょうへい)1982年秋田大学医学部卒業。米メイヨー・クリニック(文部科学省長期在外研究員)、愛媛大学大学院医学系研究科准教授などを経て、2014年から現職。  約11万4000人を擁する宇和島医療圏。独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)宇和島病院は地域医療、地域包括ケアの要としての役割を担う。脊椎、人工関節などを中心に、整形外科手術は年間約900例。整形外科、リハビリテーション科の専門医として在宅復帰を支援する渡部昌平院長が目指すのは、シームレスな医療体制だ。 ―宇和島市には公立、民間と病院が複数ありますが。  急性期、回復期、慢性期などと、それぞれの病院の特徴を生かして、お互いにうまくすみ分けをしながら地域での役割を果たしていると思います。病院に隣接して附属の介護老人保健施設などもありますので、予防医学をはじめ、急性期、回復期、そして在宅と、医療や介護サービスをシームレスに提供したいと考えています。 当院の特徴の一つは整形外科分野です。高齢者の増加に伴って症例数は増加傾向にあり、脊椎、人工関節などを中心に、年間およそ900例の手術を実施しています。整形外科の常勤医は、私も含めて5人。充実した医療を提供できていると思います。患者さんは宇和島市以外、例えば高知県など遠方からもお越しになっています。広く地域の開業医の先生方との連携が構築できている結果ではないかと考えています。 ―リハビリにも注力。  私自身もリハビリテーション医学会専門医を取得しており、現在、専門医は2人体制です。リハビリのスタッフは理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)がそろっており、総勢50人近くです。在宅復帰後の患者さんを対象に訪問リハビリを実施しています。 また、院内に室内プールが完成した2002年からはリハビリに活用しています。指導の中心はPTが担っています。プールでのリハビリは脳卒中など、脳血管疾患後の患者さんを中心に取り入れるようにしています。当院では、主に入院患者さんが活用しています。 水中では泳ぐというよりも、歩いたり手を動かしたりといった訓練を重視しています。集団での運動といったこともできます。通常では歩行ができない人も、水中では水の浮力の効果で体に負担なく歩くこともできますので、治療効果も少なくありません。プールでリハビリに励む患者さんの楽しそうな様子を見ると、精神的にも効果があると感じます。 ―地域の課題は。  医師不足です。地域の医療機関はどこも厳しい状況にありますから、地域連携が不可欠です。 そこで、特に整形外科医が不足している宇和島市内の医療機関に週1回、診療支援として当院の医師を派遣しています。当院の整形外科が高い専門性を保ち、手術実績を維持し続けることが、地域に医師を呼び込むことにつながると考えています。当院の運営にも貢献するでしょう。 また、JCHO独自の研修プログラムもあり、それを希望する方もいます。これによって、2年ほど前から、JCHO本部からの派遣も受け入れられるようになりました。最近ではグループの方針で医師だけではなく、病院の活性化を狙って、病院間の職員の異動を積極的に実施しています。各部門のトップは、大体1回は別の病院での勤務を経験し、そこで実績を重ねます。外で経験を積んだ人が着任すると、さまざまな面で組織にいい刺激を与えると感じています。 また、患者さんや地域で活動する人にお越しいただいて意見を伺う場を設ける「地域協議会」を年に2回ほど開いています。参加者の方の提案を病院として採用したこともあります。患者さんの声が直接聞けるまたとない貴重なチャンスでもあります。 独立行政法人地域医療機能推進機構 宇和島病院愛媛県宇和島市賀古町2―1―37☎0985―22―5616(代表)https://uwajima.jcho.go.jp/

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各分野の専門家を育成 四国の眼科医療に貢献

愛媛大学大学院医学系研究科眼科学講座 白石 敦 教授(しらいし・あつし)1986年日本医科大学医学部卒業、同第2外科(内分泌外科)学教室入局。米シンシナティ大学眼科客員講師、愛媛大学眼科学准教授を経て、2016年より現職。  「専門分野で知識を深めることで、自信を持って治療に臨むことができる」と語る白石敦教授。自らの経験を基に後進の教育に情熱を傾ける。カダバートレーニングなど新しい教育法にも挑戦。愛媛県、そして四国の眼科医療の質の向上がその原動力だ。 ―医局の特徴や教育について聞かせてください。  県唯一の眼科学講座の役割の一つとして、どんな眼科疾患でも愛媛県内で治療を受けられるようにする体制作りが求められます。これに対応するには幅広い人材の育成が重要ですので、入局後はあらゆる分野の手術や疾患を可能な限り経験できるように関連病院での研修をします。 大学に戻ってからは基礎研究や臨床研究も大切ですから、専門を深く掘り下げてもらいます。知識の柱をつくっていく時期は、ある分野に特化する方が成長できるのではないでしょうか。また、深い専門知識を得ることによって他の分野のことも理解できる。それで自信がつけば、余裕をもって治療に当たることができるでしょう。 特に愛媛大学医学部附属病院はほとんどの眼科疾患をカバーできるよう角膜、網膜、眼形成など専門外来を幅広く設けています。患者さんをご紹介いただく際に開業医の先生にとってもわかりやすいというメリットがありますし、医局員も各専門で知識を深め、技術の向上に励んでいます。 手技の教育では、ご遺体(カダバー)を用いた実習に取り組んでいます。愛媛大学医学部は厚労省からカダバーのトレーニング施設に認定されているため、この実習が可能です。 白内障などの内眼手術のトレーニングでは入手しやすい豚眼を使用しますが、涙道や眼瞼(けん)手術のトレーニングにはカダバーが非常に有効です。シール法という解剖体固定により、生体に極めて近い物理的性質を維持できる上、出血や腫れも無いため解剖や実習が大変分かりやすいのです。他大学にはない取り組みのため公開実習では全国から受講者が集まります。 ―2017年、日本涙道・涙液学会の理事長に就任。  本学会は2011年に発足。涙道の専門医の育成が目標の一つ。専門医は徐々に増えてきましたが、まだまだ偏りがあり専門医の治療を受けられない地域もあります。 涙道閉塞症の患者さんは高齢者の3~5%程度いると言われ、これは白内障にも相当する数字です。原因はさまざまですが、抗がん剤の副作用によるものも報告されています。常に涙が出続けてハンカチが手放せない状態は、患者さんのQOLを著しく低下させています。 専門医がいない地域では治療が進まないケースも少なくないようですが、手術でかなり改善します。治療は涙道内視鏡を用いた涙管チューブ挿入術と涙嚢(のう)鼻腔吻合術(DCR)。DCRには皮膚を切開する方法と、鼻腔から鼻粘膜や骨を切除しバイパスを作る方法があります。 学会は毎年、日本眼感染症学会、日本眼炎症学会、日本コンタクトレンズ学会とともにフォーサムを開催。今年で第8回となる総会は7月に京都で開催。この8年の間に学会主導の多施設研究も実施され、学術的な研究発表も増えるなど大きな進歩を遂げました ―四国全体での取り組みも盛んですね。  四国の大学の眼科は非常に良い関係を築いており、毎年共同でセミナーを開いています。全国から専門家を招いて開くこのセミナーでは、さまざまな分野の最前線を知ることができるとあって開業医の先生にも好評です。 今年で13回目、参加者は年々増加しています。当講座でも、講演会や勉強会を積極的に開催。眼科医療の質を上げるためにも風通し良く地域連携を進めていきます。 愛媛大学大学院医学系研究科眼科学講座愛媛県東温市志津川☎089―964―5111(代表)https://www.m.ehime-u.ac.jp/school/ophthalmology/

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