九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

高い専門性を発揮し安芸津の医療の灯保つ

県立安芸津病院後藤 俊彦 院長(ごとう・としひこ)1988年埼玉医科大学医学部卒業。県立広島病院、中電病院、県立安芸津病院副院長などを経て、2019年から現職。  農業や漁業が盛んな東広島市安芸津町で、町内外の地域医療を支える県立安芸津病院。2019年4月に就任した後藤俊彦院長は長年、同病院の看板の一つである人工関節置換術の中心的役割を担ってきた。地域の患者に愛され、選ばれる病院づくりに向けた意気込みは熱い。 にぎやかな一曲で顔が見える関係に  院長室の一角にさりげなく置かれたギター。院内の医師や看護師たちと組むバンドで使うのだという。地域の祭りや健康づくりのための市民公開講座の場で、にぎやかに一曲奏でるのが恒例だ。「地元のみなさんと病院外でふれ合える良い機会。医師として一番大切にしている『顔が見える医療』にもつながればと思い、積極的に外へ出て行っています」と力を込める。  下肢の人工関節を専門とする。2000年に県立安芸津病院に赴任して以降、手がけた人工関節置換術は通算で千件を超えた。歩けずにストレッチャーで入院してきた人が自力で歩いて退院していく姿は、何度見てもうれしさがこみ上げる。祭りで演奏した際、両脚への人工関節の手術を施した患者が「先生!」と元気に駆け寄ってきたこともあった。「医者冥利に尽きる、忘れられない出来事です」  東広島市のお隣、呉市の出身。祖父の代から呉市内で外科を開業していた。「あんた、医者になるんよ」。幼い頃から親たちに言われ、医者を志すことに疑いを持つことはなかった。「ギターを始めてからは『ポール・マッカートニーになりたい』と思った時期もありましたけどね」と笑顔で振り返る。  兄が外科医の道に進んだため、自身は整形外科を選んだ。埼玉医科大学での学生時代、人工関節はまだ世界的にも成績が芳しくなかったという。ただ、大学での講義を聴き、「すごいものだ」と強い興味を抱いた。 地域医療の充実を図る「アウトリーチ」  医師となって10年目あたりから、国内の人工関節手術件数が急速に増え始めた。自身もその領域に身を投じた。  ライフワークとして携わることになった人工関節。地域性とも合っていると言う。安芸津町は東広島市で唯一、海に面する。カキ養殖を中心にした漁業に加え、特産のジャガイモなどの農業も盛んだ。  「激しい力仕事に長年精を出した結果、末期の変形性関節症で来院する高齢者が多い。関節を温存する治療の対象となるような若い患者さんは、ほとんど来られません」。80代の患者の多くも術後はまた、力仕事に復帰していくという。  12の診療科、一般病床69床、地域包括ケア病床29床を備え、隣接する呉市安浦町や竹原市、離島の大崎上島町の医療も支える。ただ、眼科や婦人科など、常勤医師がおらず、総合病院が集まる東広島市中心部などに患者が流れがちな側面は否めない。  「まずは私たち医師が力を発揮することが重要。長く通い続けてくれる患者さんを大切にしたい」と後藤院長。内視鏡の専門医が複数いる「内視鏡ステーション」の検査件数も年約1600件と実績を重ねている。自身についても「人工関節の手術に都会か田舎かは関係ない。誠心誠意、診させてもらい、結果を蓄積するしかありません」と語る。  一方で、自ら通院できない患者らにも医療を提供することを重要な役割と考え、訪問診療、訪問看護、訪問リハビリといった病院から出向いていく「アウトリーチ」にも力を入れている。10月からは後藤院長が行う診療応援も再開した。 これは整形外科がない病院へ後藤院長が赴き、診療する。交通手段の問題などで遠方の病院へ行けない患者を診療するのに加え、手術などが必要な重症患者は県立安芸津病院への入院治療につなげる。「地域の皆さんに質の高い医療を提供できるよう、さまざまなことに取り組みたい。安芸津の地域医療を担い続けるために」 県立安芸津病院広島県東広島市安芸津町三津4388 ☎0846-45-0055(代表)http://www.hpakitu.jp/

Continue Reading

長期整備計画完了 ハイブリッド手術室稼働へ

一般財団法人 津山慈風会 津山中央病院グループ 津山中央病院 岡山県津山市川崎1756 ☎0868―21―8111(代表)http://www.tch.or.jp/  救命救急センターとしての役割だけでなく、地域周産期母子医療センター、へき地医療拠点病院、地域がん診療連携拠点病院などいくつもの重責を担っている津山中央病院。1999年の移転以降、順次機能を強化。一連の整備計画が完了した今、次の展望は。 県北唯一の3次救急、高度急性期を担う総合病院として ハイブリッド手術室  2004年の健診センター開設を皮切りに、医療研修センター、健康増進施設、がん陽子線治療センター、エネルギー棟を次々と建設。2016年には新病棟建設に着手し、昨春から順次使用を開始。2019年8月には新病棟である「 N棟」が完成した。 「N棟には広い手術室を4室新設しました。そのうち、手術支援ロボット『ダビンチ』を備えた部屋が1室。従来の手術室と合わせると全部で11室になりました。2019年3月には泌尿器科による手術が始まっています」 さらに目玉となるのがハイブリッド手術室。TAVIと呼ばれる経カテーテル的大動脈弁置換術の院内施術を目指して新設された。岡山県内では、現在数カ所で治療を受けられる最新の治療法だ。 「2020年春の導入を目指しています。10メートル四方の広い部屋で、血管造影しながら施術するTAVIが可能な環境が整いました。ステント内挿術や整形外科疾患の手術にも応用できると考えています。これで高齢の患者さんに、わざわざ県南まで行ってもらう必要がなくなります。ハイブリッド手術室の稼働は、心臓血管外科や脳神経外科の悲願でもあります」 さらに、無菌室も増室した。主に整形外科で利用予定だという。 「人工関節手術の患者さん用の部屋です。人工関節治療に積極的に取り組んでいる医師がいるので、術数も増えています。将来的には人工関節センターの設立も視野に入れています」 1999年に現在地に移転してから、20年かけて、機能強化を進めてきた。一連の整備計画が完了した今もさらに先を見据え、歩み続けている。 「緩和ケア病棟の始動、新生児集中治療室(NICU)の改修など、まだまだすべきことがあります。いずれも県北では不足している設備です」 新病棟3階には、個室14床、家族用キッチンや待機場所などを整備した緩和ケア病棟もある。しかし、看護師不足から現在は稼働させていないという。 陽子線センター照射室  「今の人員で無理にオープンさせても、スタッフに負担がかかるだけだという判断から、現在はストップしています。なるべく早く稼働させられたら」 救命救急センターの指定を受けてから20年。美作市や鏡野町、久米南町などの津山市近郊はもとより、兵庫県佐用町など西播磨地域からも患者が救急搬送される。「県北唯一の3次救急、高度急性期を担う病院として役割を果たしていきたいと思っています」 医療・教育環境整備で人材の採用、育成と定着を目指す ダビンチ  「県北で高度急性期医療を担い続けるためには、人材の充足が何より必要」と話す林病院長。「陽子線治療装置やダビンチの導入など最新の医療機器を導入し、環境を整えてきたのは、患者さんのためでもありますが、スタッフが働きたいと思える医療環境、職場環境を整えるためとも言うことができます。地域を支え、患者さんを守るためには、スタッフの充実は不可欠。重症患者と救急患者であふれる当院の環境に疲弊しないためにも、人員の充足は最優先課題なのです」 2018年、働き方改革にも着手。当直体制や給与体系を見直し、個人に負担が集中しすぎない環境を構築しつつある。 林 同輔 病院長  さらに、2019年9月には川崎医科大学などを運営する「川崎学園」と、人材育成や研究の分野で連携する協定を締結。双方の施設など医療資源を有効に活用しながら、人材の育成と定着につなげたい考えだ。 「無理なく、しかし、やりがいを持って医療に従事できる環境の実現に、真正面から向き合い、取り組んでいきます」

Continue Reading

「橋本式カテーテルロック」で患者さんの負担を軽減したい

医療法人 橋本病院橋本 忠通 院長(はしもと・ただみち)2001年東京医科大学医学部卒業。東京女子医科大学病院外科(第2外科学)、和歌山県立医科大学外科学第2講座などを経て、2018年から現職。  高齢社会の進行や人口減といった社会の変容は、地方都市の民間病院にとって、かつてない厳しい経営環境をもたらしている。和歌山市にある橋本病院は民間病院だからこそできる、きめ細かな医療の提供を運営戦略の一つに掲げる。 —院長就任から1年半です。  祖父の忠徳が1952年に開設し、父の忠美が2代目、私が3代目の院長です。3人とも、消化器外科医ということもあり、当院は消化器の専門病院として地域に根付いてきました。  2011年に長男である私が副院長として戻り、病院運営に携わってきました。ちょうど病院建物のリニューアル事業が始まっていた頃。人口減少が進む和歌山市で当院がどのような役割を担って、病院運営を進めていくのかを考えるタイミングでした。  同じ頃、整形外科医の次男が当院に戻ることに。これまでの消化器外科と共に、整形外科を新たな運営の柱とする方針を立てることになったのです。  これに伴いリニューアル事業には、リハビリテーション室の増築や手術室の増室なども加えました。がん診療の充実を図ろうとMRIやCTを導入しています。  消化器外科と整形外科を中心に手術の症例数は増加しています。新たに加わった整形外科では、外傷を中心に膝関節や股関節の人工関節置換術、人工骨頭置換術、骨折観血的手術、関節鏡下半月板縫合術、内視鏡下椎間板摘出術(MED)など年間約300例を実施するまでになりました。  当院には、大きな病院や慢性期病院にはない役割が求められています。コンパクトだけれど厳選された、そして絶対必要な医療サービスを提供する。生活に密着したコンビニのような役割を担っていきます。 —地域の病院との連携は。  和歌山市内には和歌山県立医科大学附属病院や日本赤十字社和歌山医療センターがあります。それぞれの役割分担は、うまくいっていると思います。  当院はがん治療への高度な医療も実施する一方で、比較的一般的な疾患への治療を実施しています。胆石や鼠径(そけい)ヘルニアなどの良性の疾患の手術の場合は、大学病院からの紹介もあります。  がんの治療には、可能な限り私も関わるようにしています。最新の治療を提供するだけでなく、診断がついた後に、手術を実施するまでの時間をできるだけ短くする配慮もしています。主治医が最期まで診ることで、安心して受診できる、民間病院ならではのきめ細かい医療サービスを提供していきたいですね。 —抗がん剤治療について。  抗がん剤治療においては皮下埋め込み型ポートと言われるCVポートを主に首元に埋め込む小手術が増加。年間120件ほど施行します。従来は腕への点滴が中心で、血管が収縮して針が入りにくく、患者さんにとってつらい治療になることがありました。  しかしこの問題を解決するため近年はCVポートを取り入れる病院が増えています。CVポートは100円玉くらいの本体とチューブからなります。これらを鎖骨から胸の辺りの皮膚の下に留置しますが、細かい作業のため手技が難しい。特に本体を入れる際に手元から落ちることもあります。  そこで試したのがカニを食べる時に身をほぐす金属のスプーン。形状が部品を入れる際にぴったりだったのです。そこからヒントを得て考案したのが「橋本式カテーテルロック」。学会などで発表し、問い合わせも頂いています。医療機器メーカーと試作品を作ってきましたが間もなく完成予定。特許申請の手続きも進めているところです。  この「橋本式」を使うことで手術時間が短縮され、患者さんの負担も減ります。新たな技術の発信も当院ならではの強みになりそうです。 医療法人 橋本病院和歌山市堀止南ノ丁4―31☎073―426―3388(代表)http://hashimoto-hp.or.jp/

Continue Reading

機能強化で北摂地域の医療福祉の充実を目指す

医療法人 成和会 北大阪ほうせんか病院 岡 博子 理事長・院長(おか・ひろこ) 1978年信州大学医学部卒業。大阪市立十三市民病院副院長などを経て、2014年医療法人成和会ほうせんか病院理事長・院長。2019年から北大阪ほうせんか病院院長兼任。  大阪府豊中市でスタートした豊泉家(ほうせんか)グループは高齢者向けの介護施設などを府内に多数展開。2012年に医療分野に進出、2019年4月には「北大阪ほうせんか病院」を開設した。 ―ほうせんか病院に次いで二つ目の系列病院です。  1995年、「自立・自由度の高い福祉で社会に貢献する」という理念を掲げて高齢者向けの介護施設を開設しました。2012年に初めての医療施設となる「ほうせんか病院」を開院。2019年4月には北大阪警察病院の事業を継承し、「北大阪ほうせんか病院」として再出発しました。 北大阪ほうせんか病院は大阪府北部の北摂地域に位置し、約5万3000平方㍍という広大な敷地の中にあります。豊かな自然が残っており、理想的な療養環境ではないでしょうか。 北大阪ほうせんか病院の開院に伴い、最寄りの駅とほうせんか病院、北大阪ほうせんか病院を結ぶ巡回バスを増発するようにしましたので2病院へのアクセスも容易になりました。 ほうせんか病院は医療療養病棟と緩和ケア病棟を擁し、北大阪ほうせんか病院は急性期に加え、回復期リハビリの機能を持っています。2病院で計500床。豊泉家グループが持つ高齢者向けの施設と連携することで、急性期から回復期、慢性期、さらには在宅までを網羅することができるようになりました。 ―「北大阪ほうせんか病院」の特徴は。  1点目は地域のかかりつけ医としての役割です。この地域は住民の高齢化が進んでいます。同時に開業医の高齢化も進行して閉院する医院も少なくありません。高齢者を中心にかかりつけ医としての責任を果たしたいと考えています。 また、これまでグループのほうせんか病院の入院患者さんや介護福祉施設の利用者の方が肺炎や骨折などを起こした場合、外部の病院に治療をお願いをしていましたが、急性期病院が系列にできたことで対応が速やかにできます。 2点目は専門的な医療の提供です。その一つが高齢者を対象とした回復期リハです。ワンフロアのほとんどを占める広々としたリハビリテーション室では、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士ら総勢59人が、当院の整形外科医とともにリハビリを実施しています。 整形外科については大阪大学整形外科から医師が派遣されています。特に人工関節手術に力を入れており、人工関節の再置換の手術も実施しています。 今後、目指していきたいのが脳神経外科の充実です。当院にはMRIやCTなどの検査機器があり、くも膜下出血などの検査、診断に活用しています。現状では治療ができる体制が整っていないため、急を要する患者さんは他の病院に搬送しています。まずは地域の力となれる医師を探していきたいと思っています。 病院の建て替えも課題です。現在は、旧北大阪警察病院の建物をそのまま使っていますので老朽化による不具合が出始めています。新病院の建設計画をグループ本部を中心に着々と進めています。 ―ほうせんか病院と北大阪ほうせんか病院の連携についてはいかがでしょう。  ほうせんか病院は開設から7年経ち、ずいぶん良い病院になってきたと感じます。大切にしたいのは医療に対する私の考えを職員にきちんと伝えること。新病院でも朝礼の頻度を増やしてきめ細かに情報を伝えていくように心がけています。 診療放射線技師をはじめ2病院のメディカルスタッフが行き来して、スキルアップのための情報共有を始めています。急性期と慢性期それぞれの役割は違いますが、医療職にとっては逆に多様な知識とスキルを得られると捉え、高め合っていってくれたらと願っています。 医療法人 成和会 北大阪ほうせんか病院大阪府茨木市室山1―2―2☎072―643―6921(代表)https://sfmc-h.org/

Continue Reading

特徴を生かした病院運営を目指して

社会福祉法人恩賜財団 済生会 山形済生病院 石井 政次 院長(いしい・まさじ)1982年山形大学医学部卒業。同大学医学部整形外科助手などを経て、2018年から現職。  およそ30年という長きにわたって院長職を務めた濱崎允前院長の後を引き継いで1年。石井政次院長は「強みを伸ばす経営」に力を注ぐ。 ―開設から75年、病院以外も展開していますね。  山形済生病院は1944年、産院として開設されたのがはじまりです。現在は、地域包括ケア病棟や回復期リハビリ病棟を含めて473床。病院を中心に、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム四つ、視覚障害者に特化した養護(盲)老人ホームも擁しており、全国の済生会の中でも比較的規模の大きな組織です。 幅広い機能を備えることで、急性期から在宅までをトータルで診ることができるという点が一番の特徴だと思います。 ―強みは。  診療科でみると、産院からスタートしたという歴史もあって、周産期医療が強みの一つです。分娩件数は県内の病院で1位。産婦人科医6人、新生児を診ることができる小児科医が5人在籍しています。 高齢妊産婦の増加などによって、県内でもハイリスクの妊婦が増えています。NICUを備えているほか、産婦人科の阪西通夫医師が周産期救急の教育プログラム「ALSO(Advanced Life Support in Obstetrics)」の指導者として、リスク管理と人材の育成に力を注いでいます。 地域の分娩施設からの信頼もしっかりと得られているという実感があります。実際、近隣の産科医院から多くの患者さんが当院に紹介されてきています。 ―整形外科も特徴的な診療科のようですね。  整形外科は医師16人体制。脊椎、股関節、膝関節、手、足、骨軟部腫瘍など、整形外科のすべての専門分野においてスペシャリストがいるという点が、当院整形外科の大きな強みです。 年間の手術件数は約2100例。特に、人工関節の手術を得意としており、人工股関節、人工膝関節の手術は合計で約800例以上実施しています。 県内では人工股関節手術が実施できる医療機関が限られていることもあり、紹介いただく患者さんの数は年々増加しています。関東や近畿、時には九州からという場合もあります。 人工関節の手術は、初回の手術だけでなく、すでに装着された人工関節を再置換するというケースも少なくありません。再置換の場合は、すでに装着されている人工関節を取り外さなければならないため、より高い技術が求められます。 私の専門も人工股関節。骨の欠損部に骨を移植することで回復を図る治療法「インパクションボーングラフト」については、イギリスまで見学に行き、1994年に導入しました。多くの患者さんに、この手術を実施しています。 ―これから注力されたいと考えていることは。  当院の血管外科が実施している下肢静脈瘤の手術件数は年間約500件に上ります。今後も、増加していくでしょう。 当院のような地方病院の場合、何か特徴的な診療科や手技を持ち、それを強化していかなければならないと考えています。同時に、従来のように急性期医療のみに特化するのではなく、地域の医療機関と連携し、役割を分担しながら、患者さんを診ていく必要もあると思います。 前院長の後を引き継いだ当初は、大きなプレッシャーを感じていましたが、自分たちのこれまでの歩みを信じ、持っている強みをよく知って、生かしていくことが大事なのだと、今は思うことができるようになりました。 同時に、地域からどんな役割を求められているのか、よく耳を澄まして聞き続け、それに応える努力を積み重ねていくことが大事だと思っています。 社会福祉法人恩賜財団 済生会 山形済生病院山形市沖町79-1☎023-682-1111(代表)https://www.ameria.org/

Continue Reading

刻々と変化するニーズ 見いだした「役割」とは?

久留米大学医療センター 大川 孝浩 病院長 (おおかわ・たかひろ)1986年久留米大学医学部卒業、整形外科学講座入局。済生会二日市病院整形外科主任部長、米ベイラー医科大学留学、久留米大学医療センター整形外科・関節外科センター教授などを経て、2019年4月から現職。  いま医療機関に求められているのは、高齢化や変わり続けるニーズを的確に捉え、対応できる体制づくり。地域に根差した医療を目指す久留米大学医療センターの今後の方向性は。4月に就任した大川孝浩病院長がイメージする「患者中心の医療」への取り組みや、地域医療機関との連携を聞いた。 ―この4月に病院長に就任されました。抱負は。  当医療センターの理念は「心が通い、信頼される医療」です。地域の中核病院として愛される病院を目指して、患者中心の医療に努めています。医師、看護師、医療ソーシャルワーカーといった多様なスタッフが協働する「チーム・医療センター」。患者さんが安心できる質の高いチーム医療を、さらに充実させていきたいと考えています。 ここ久留米医療圏は、都市部と郡部の両方の特性を含んでいるため、「病病連携」と「病診連携」の円滑な関係を築くことが重要です。 かかりつけ医の先生や訪問看護師、ケアマネジャー、介護・保健・福祉施設などとの連携を強め、患者さんが「住み慣れた地域で自分らしく生活・療養できる仕組みづくり」に注力したいと思っています。 ―久留米大学病院との役割分担については。  250床の当医療センターが地域のニーズに応えていく上で、大学病院と同じ診療や、総合病院のミニチュア化といった方向性では難しいと考えています。そこで、2015年に久留米大学病院との機能分化に着手。「小さな総合病院より特色ある病院」を運営方針と定めました。地域医療構想における当センターの位置付けとして、一般急性期医療、回復期リハビリテーション、慢性疾患の診療、そして特定疾患の手術を中心としています。 例えば私の専門である関節外科の領域は、2015年に「スポーツ整形」「膝関節外科」「足の外科」の各グループを当医療センターに集約しました。これにより全身の関節疾患を幅広く診療する体制が整いました。股関節をはじめとした人工関節手術の症例数は、全国でもトップクラス。久留米医療圏だけでなく、全国から患者さんが訪れています。 久留米大学病院の整形外科は脊椎、腫瘍、高度外傷に特化しています。このような「すみ分け」は大学の理解とバックアップなしには実現できませんでした。機能分化とは、専門領域を独立させればいいということではありません。なぜなら、疾患によっては連携して治療に取り組む必要があるからです。あくまで根本は「チーム・久留米大学整形外科」であるということです。 こうして強みを伸ばしていきながら、地域の期待に応える医療機関としての存在意義を確かなものにしていきたいですね。 ―最近の動きについて教えてください。  4月に糖尿病センターを新設しました。フットケア外来や皮膚潰瘍治療外来を 開設し、より地域の実情に即した糖尿病の診療体制を構築しました。 特徴的な部門としては異常に朝の起床が苦手な「フクロウ型体質」の方を対象とした「フクロウ外来」があるほか、「先進漢方治療センター」も整備しています。また、プライマリ・ケアセンターでは予防や健康管理、介護、福祉まで含めてサポートできるよう、地域連携を推進しています。 高齢化や医療機関を取り巻く環境の変化に伴い、地域包括ケアシステムの一翼を担うのが大きな使命と考えています。当センターのことをもっと身近に感じていただくために、7月、開院25周年を記念して市民公開講座を開きます。地域の方々が住み慣れた地域で質の高い医療を受け、生活できるよう、これからもニーズに応えていきたいと思っています。 久留米大学医療センター福岡県久留米市国分町155─1☎0942─22─6111(代表)http://iryo.kurume-u.ac.jp/

Continue Reading

技術革新で延ばす健康寿命 2025年の「運動器」を守る!

 「2025年問題」への対応が急がれる中、健康寿命の延伸を目指す動きがさらに活発化している。介護予防のキーワードの一つが「運動器」。人工関節置換術の件数が増加傾向にあると言われる中、運動機能の維持に貢献する新たな技術への期待も高まっている。 再生医療や素材の工夫 続々と生まれるアイデア  「2025年問題」でなぜ「75歳」が注目されるのか。その理由はデータが示している。 65歳から74歳の要支援認定は1・4%(24万6000人)、要介護認定は2・9%(51万人)。75歳以上になると要支援認定が9・0%(147万人)、要介護認定が23・5%(384万2000人)と割合が跳ね上がる(データは2015年現在)。 「要介護者等の介護が必要になった主な原因」を見ると、「骨折・転倒」(12・5%)が占める割合が大きくなっている。リウマチなどの「関節疾患」(10・2%)と合わせて、改めて運動器の障害が介護の予防と深く関わっていることが浮き彫りとなった。 現在、運動器を守るためにさまざまな技術革新が進んでいる。 例えば先進医療では、東海大学が変形性膝関節症の軟骨欠損の治療法として「自己軟骨細胞シートによる軟骨再生治療」に取り組んでいる。患者から採取した軟骨組織、滑膜組織で軟骨細胞シートを作製。軟骨欠損部の治療に用いる。 また、大阪大学は半月板の損傷に対する「コラーゲン半月板補填材を用いた半月板修復療法」を実施している。現状、重度の半月板損傷の治療は切除が有効だが、中長期的に変形性関節症を発症しやすい。そこでコラーゲンの補てん材で半月板を修復し、機能の温存を目指している。 「骨ネジ」で骨折治療に挑むのが島根大学だ。金属製のネジは固定力にすぐれるが、突出して健常の軟骨面を傷つけることがある。また、生体吸収ピンは強度が十分でなかったり、吸収時に異物反応を起こしたりすることがある。 手術中に患者から採取した骨をスクリューに加工。「骨ネジ」なら拒絶や異物反応の危険性がなく、金属製のネジと同等の初期の強度があるとされる。 進むロボット技術の活用 早期の社会復帰を後押し  近畿大学病院(大阪府大阪狭山市)は国内で初めて人工膝関節手術支援ロボット「ナビオ」(英スミス・アンド・ネフュー社)を導入。4月、同大整形外科学の赤木將男主任教授が中心となって1例目の手術が実施された。 ナビオは主に変形性膝関節症、関節リウマチ、スポーツ外傷の後遺症などの人工関節置換術で活用される。ポイントの一つは、「高精度・低侵襲」の手術による早期の回復、社会復帰の実現だ。 搭載された赤外線カメラが、術中に膝の軟部組織や関節、じん帯などの動きを評価。これらの情報に基づき、どのように骨を削ってインプラントを設置するのが最適なのか、いわば患者に合わせた「オーダーメード」の手術を計画することが可能だ。 骨を削るドリルバーの回転や停止は、ロボットが高速でナビゲーション制御する。術者は画面を確認しながらドリルバーの先端を掘削する部位に当てて手術を進めていく。 誤差は幅1ミリ、角度1度以下に抑えられるという。適切な評価に基づく膝十字靱帯の温存や高精度のインプラント設置によって、患者がもともとの膝のフィーリングと動きを取り戻せる可能性が高まる。術後のスポーツ活動への参加などが促進され、健康寿命の延伸につながることが期待される。 欧米では、手術支援ロボットを使用した人工膝関節手術が積極的に行われている。赤木主任教授によると「米国におけるナビオによる手術は年間で1万5000例にも上る」という。 現在、国内で実施されている人工膝関節置換術は年間約8万5000例。手術支援ロボットへのニーズはさらに高まっていくと見られる。赤木主任教授は「週に1度のペースでの実施を目指す。また大学の医学部の役割として、ロボット支援下手術に対応できる次世代の人材を育てることが重要」と語った。 果たして次のブレイクスルーは―。関心は高まるばかりだ。

Continue Reading

整形外科を柱に展開 シームレスな医療・介護を

独立行政法人地域医療機能推進機構 宇和島病院 渡部 昌平 院長(わたなべ・しょうへい)1982年秋田大学医学部卒業。米メイヨー・クリニック(文部科学省長期在外研究員)、愛媛大学大学院医学系研究科准教授などを経て、2014年から現職。  約11万4000人を擁する宇和島医療圏。独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)宇和島病院は地域医療、地域包括ケアの要としての役割を担う。脊椎、人工関節などを中心に、整形外科手術は年間約900例。整形外科、リハビリテーション科の専門医として在宅復帰を支援する渡部昌平院長が目指すのは、シームレスな医療体制だ。 ―宇和島市には公立、民間と病院が複数ありますが。  急性期、回復期、慢性期などと、それぞれの病院の特徴を生かして、お互いにうまくすみ分けをしながら地域での役割を果たしていると思います。病院に隣接して附属の介護老人保健施設などもありますので、予防医学をはじめ、急性期、回復期、そして在宅と、医療や介護サービスをシームレスに提供したいと考えています。 当院の特徴の一つは整形外科分野です。高齢者の増加に伴って症例数は増加傾向にあり、脊椎、人工関節などを中心に、年間およそ900例の手術を実施しています。整形外科の常勤医は、私も含めて5人。充実した医療を提供できていると思います。患者さんは宇和島市以外、例えば高知県など遠方からもお越しになっています。広く地域の開業医の先生方との連携が構築できている結果ではないかと考えています。 ―リハビリにも注力。  私自身もリハビリテーション医学会専門医を取得しており、現在、専門医は2人体制です。リハビリのスタッフは理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)がそろっており、総勢50人近くです。在宅復帰後の患者さんを対象に訪問リハビリを実施しています。 また、院内に室内プールが完成した2002年からはリハビリに活用しています。指導の中心はPTが担っています。プールでのリハビリは脳卒中など、脳血管疾患後の患者さんを中心に取り入れるようにしています。当院では、主に入院患者さんが活用しています。 水中では泳ぐというよりも、歩いたり手を動かしたりといった訓練を重視しています。集団での運動といったこともできます。通常では歩行ができない人も、水中では水の浮力の効果で体に負担なく歩くこともできますので、治療効果も少なくありません。プールでリハビリに励む患者さんの楽しそうな様子を見ると、精神的にも効果があると感じます。 ―地域の課題は。  医師不足です。地域の医療機関はどこも厳しい状況にありますから、地域連携が不可欠です。 そこで、特に整形外科医が不足している宇和島市内の医療機関に週1回、診療支援として当院の医師を派遣しています。当院の整形外科が高い専門性を保ち、手術実績を維持し続けることが、地域に医師を呼び込むことにつながると考えています。当院の運営にも貢献するでしょう。 また、JCHO独自の研修プログラムもあり、それを希望する方もいます。これによって、2年ほど前から、JCHO本部からの派遣も受け入れられるようになりました。最近ではグループの方針で医師だけではなく、病院の活性化を狙って、病院間の職員の異動を積極的に実施しています。各部門のトップは、大体1回は別の病院での勤務を経験し、そこで実績を重ねます。外で経験を積んだ人が着任すると、さまざまな面で組織にいい刺激を与えると感じています。 また、患者さんや地域で活動する人にお越しいただいて意見を伺う場を設ける「地域協議会」を年に2回ほど開いています。参加者の方の提案を病院として採用したこともあります。患者さんの声が直接聞けるまたとない貴重なチャンスでもあります。 独立行政法人地域医療機能推進機構 宇和島病院愛媛県宇和島市賀古町2―1―37☎0985―22―5616(代表)https://uwajima.jcho.go.jp/

Continue Reading
Close Menu