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島根大学 医学部消化器・総合外科学講座 田島 義証 教授

島根大学 医学部消化器・総合外科学講座 田島 義証 教授

膵がん死がなくなるその日を目指したい

【たじま・よしつぐ】 1983年長崎大学医学部卒業、同第二外科学(現:移植・消化器外科)入局。同助教、同講師、同准教授を経て、2011年から現職。

膵がん撲滅プロジェクトセンター、膵臓疾患特殊外来の立ち上げに携わるなど、難治がんの一つ「膵がん」の治療に長年取り組んできた。島根大学医学部消化器・総合外科学講座の田島義証教授は、次の一手をどう考えているのか。

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―近年の取り組みを。

 2014年4月に、臨床系と基礎系の関連講座が集まって「膵がん撲滅プロジェクトセンター」が設立されました。具体的な狙いは、膵がんが多い島根県内の疫学調査をすること、臨床病理学的データの整理、そして膵がんに有効な薬剤の創薬です。

 疫学調査では、県内で膵がんによって亡くなる人が多い地域が明らかとなり、膵がん発症に地域差があることが示されました。データ整理でもこれまで当医学部の附属病院で治療を行った膵がん患者の治療経過と病理所見のデータベースを作成することができました。

 創薬に関しても、進展が見られています。炎症と発がんの関係について、少量の血液から炎症性サイトカインの一種、IL―1βの活性型を測定する方法が膵がん撲滅プロジェクトセンターで確立されました。IL―1βの値が低い膵がん患者のほうが、高い患者よりも予後が良い傾向も見られています。今後、症例数を増やすことで関係性を明らかにしていきたいと考えています。

 さらに2016年10月には、膵臓疾患特殊外来を開設しました。多岐にわたる職種で構成されるチームで、横断的な診療を行っています。かつては1人の外科医が手術から化学療法、血糖コントロール、栄養管理に至るまで、すべてを担当していました。

 ところが、さまざまな領域で専門性が高まってくると、従来のやり方では立ち行かなくなる。そこで肝胆膵外科が窓口となって、例えば化学療法については腫瘍内科、血糖コントロールは糖尿病内科、といった具合に専門家が携わる仕組みを整備しました。

 膵臓にのう胞性の腫瘍ができる「膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)」の場合、必ずしもすぐに手術をするわけではなく経過観察のケースも多いのですが、その間にIPMNと別の部分に膵がんを発症したり、胃、大腸など他の臓器にがんを合併したりする頻度が高いことが知られています。経過観察であっても、専門の医師による綿密な連携が重要であり、膵臓疾患特殊外来の意義は大きいと考えます。

 さらに2018年5月には、当医学部の附属病院に「がんゲノム医療センター」が設立されました。がん医療連携病院として、複数の中核拠点病院と連携しながら、がんゲノム医療を実施しています。

 次世代シーケンサーを使って160種類ものがん遺伝子を解析、がん治療に役立つ情報を得るための「がん遺伝子パネル検査」を行います。この結果をもとに会議を開いて治療方針を決定。設立以来、膵がんを含む40例以上の解析が進められ、治療につなげているところです。

 2018年4月には、腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術・腹腔鏡下膵腫瘍核出術の施設認定を取得。6月には日本肝胆膵外科学会認定の高度技能専門医修練施設(A)に認定されました。

―今後の展望を。

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 私たちは消化器、肝胆膵、乳腺内分泌、小児の四つのグループに分かれています。患者さん第一という考え方でこれまで臨床、教育、研究に携わってきましたし、今後もそれは変わりません。

 近年、優秀な大学院生が育ってきており、研究に本腰を入れられるようになりつつあります。臨床と教育に追われ、途切れ途切れになりがちだった研究を、今後は継続的にできるようにしていきたいですね。

 直近ではがん免疫や腸内細菌の研究を進めています。この研究、もしくは派生した研究で一定の成果を出すことができれば、次の研究の端緒となります。研究の流れをつくり、良いサイクルをつくっていきたいと強く思っています。

島根大学医学部 消化器・総合外科学講座
島根県出雲市塩冶町89-1
TEL:0853-23-2111(代表)
https://www.shimane-u-dgs.jp/

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