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京都大学大学院 医学研究科 器官外科学講座 婦人科学産科学分野 万代 昌紀 教授

京都大学大学院 医学研究科 器官外科学講座 婦人科学産科学分野 万代 昌紀 教授

リスクを取って先を行く近未来に花咲く研究を

【まんだい・まさき】
1988年京都大学医学部卒業、同附属病院。米国立衛生研究所ワクチンリサーチセンター研究員、近畿大学医学部産科婦人科学教室教授などを経て、2017年から現職。

創設120周年。手術療法の開発や生殖医学の確立など、数々の実績を積み上げ、日本の産婦人科研究をリードしてきた。婦人科悪性腫瘍に対し、最先端の手術を取り入れてきた万代昌紀教授に、今後の方向性について聞いた。

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―教室の強みやご自身の専門分野について。

 京都大学は大正時代から子宮がんの手術を得意とし、歴代の腫瘍系教授は手術を追究してきた経緯があります。私も婦人科腫瘍が専門で、特に腹腔鏡手術やロボット支援下手術に先駆けて取り組んできました。

 婦人科のロボット手術は日本で2番目に導入。子宮頸がん手術は、私が講師だった2012年に初めて行いました。翌年、赴任した先の近畿大学でも導入。若手への教育メソッドづくりにも注力しました。

 婦人科は腹腔鏡、ロボット手術とも遅れを取ってきました。キャッチアップのため、保険収載体制を含めた全体的な環境整備に取り組んでいるところです。

 ロボット手術は今後、主流になるのは間違いない。4~5年かけて各社製が登場し、変化は加速するでしょう。

 新たな課題も生まれます。例えば遠隔操作で京大と他大学が共同で手術した場合、責任や対価はどうなるのか。ネットワークなどインフラのリスクもある。非常に早い進化のサイクルに入りつつあります。

 もう一つの特長は、免疫療法。腫瘍学の柱の一つで、研究から臨床試験まで先端を行っていると自負しています。7年ほど前には、本庶佑先生とのご縁もあり卵巣がんの免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤抗PD―1抗体を用いた、医師主導治験を世界で初めて行いました。

 免疫療法は今後、選択肢の一つとして存在感を増します。これも産婦人科は遅れがちですので、他分野に負けないよう、けん引するのが責務と思っています。

―情熱を傾けたい研究は。

 いかにがん治療をサポートしていくか、QOLを目指した医療ですね。AIやIT技術を使って、患者さんと医療者を結ぶサポートシステムを構築したい。

 具体的には、われわれと患者さんをパートナーロボットがつなぐイメージです。患者さんの疑問にはロボットが答えてくれる。逆に患者さんの身体状態や気持ちの変化をロボットがモニターしてわれわれが受け取れる、そんな仕組みです。

 月2回、5分間の診療ではあまりに時間が足りません。仲介役がいれば患者さんの生活やニーズに沿った治療選択がより可能となり、安心にもつながります。開発に向けてAIの勉強やアプリの開発などに着手し始めたところです。4~5年以内には一つの形にできればと思っています。

―京大ならではの共同研究も進んでいますか。

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 京大iPS細胞研究所の斎藤通紀教授は昨年、世界で初めてヒトiPS細胞から卵子のもとである卵原細胞を作出しました。そちらで春から共同研究を始める予定です。婦人科でどう臨床に役立てられるか掘り下げていきます。

 今後は生殖や周産期に、より力を向けられればと思います。生殖は将来、医学の中心分野になるでしょう。

 先制医療の一例として、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の治療で予防的に卵巣を取る手術はうちでも行っていますが、病気の危険性をいち早く診断して手段を講じるのが今後の中心になります。となると、対象はどんどん若返り、最終的には生まれた瞬間、あるいは胎児の時期に診断・治療するケースも出てくる。われわれの強みはそこで生かせます。20年前に免疫療法を始めたときは、「眉唾もの」だと思われましたし、ロボット手術も最初は相手にもされませんでした。今、取り組む研究も、花開くのは10年、20年後かもしれない。でもそこが京大らしさですし、自分に一番合っていると思っています。

京都大学大学院 医学研究科器官外科学講座婦人科学産科学分野
京都市左京区聖護院川原町54
TEL:075-751-3111(代表)
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~obgy/

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