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京都大学大学院 医学研究科 脳病態生理学講座(精神医学)  村井 俊哉 教授

京都大学大学院 医学研究科 脳病態生理学講座(精神医学)  村井 俊哉 教授

脳画像研究を柱に精神疾患の病態解明へ

【むらい・としや】
1991年京都大学医学部卒業。同附属病院、田附興風会医学研究所北野病院、ドイツ・マックスプランク認知神経科学研究所などを経て、2009年から現職。

日本を代表する哲学者・西田幾多郎の思想体系をくむ「京都学派」の伝統を受け継ぐ精神科。理系の基礎を前提に、人文社会学的手法を組み合わせ研究できる強みを持つ。年目を迎えた村井俊哉教授は、脳の神経画像学のトップランナーでもある。

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―脳画像研究を進めてこられました。

 ノウハウは蓄積されてきました。統合失調症やうつ病のほか、摂食障害やギャンブル依存症などでも研究を進めています。

 われわれの教室は伝統的に心理学の先生方との連携が盛ん。患者さんの記憶や感情、情動を評価する認知心理学の手法を脳画像と組み合わせ、脳機能の働きから精神疾患を理解しようと試みています。

 脳画像の優れた点は、形態はもとより脳の機能まで見られるところ。例えば今、私が精神医学について考えるとき脳はどう働くのか。機能的MRIと言いますが、ある場面に関連した脳の働きを確認できることが大きな利点です。

 脳の神経線維のネットワークもきれいなマップで映し出されます。機能的MRIと組み合わせると、ある脳の場所と別の場所がどう協調して動くかが分かる。これで、統合失調症ならこんな特徴がある、摂食障害なら…と、ある程度見えてきました。

 さらに可能性が広がるのは、MRI関連は日進月歩で進歩している点。脳全体の大規模な画像情報を解析するなどの場面にAIの技術が生かされます。

 しかしこれで診断がつくところまでは至っていません。精度が上がっても、病気の原因を実際に突き止めない限り、脳画像はあくまで参考値となる。

 診断や治療につなげるためには、動物実験で因果関係を調べる必要があります。これは脳画像研究の枠を超えるので、製薬会社との連携で研究を始めたところです。人と動物は精神構造が違い過ぎるため難点は多いのですが、脳画像を指標にリンクできれば、いつか新薬が生まれる日がくるかもしれません。

―脳画像を核に連携が進んでいるようです。

 ニューロフィードバックと言って、脳画像で見える異常を正常に戻すことで治療ができないかを研究するグループがあります。これは、けいはんな学研都市(関西文化学術研究都市)にある、ATR脳情報通信総合研究所の理工系の先生と協力して進めています。

 交通事故などで脳に外傷を負った人にどんな後遺症が現れるかを調べるグループは、医学研究科の脳機能総合研究センターと共同研究を進めています。高次脳機能障害は、さまざまな領域のはざまで、医療では関わる人が少ないので、意義あるものだと思います。

 これらとは全く別で夢のような話ではありますが、健康な人の脳の関係も見たいですね。生活習慣は個人差がすごく大きく、普通に考えれば脳に差が出てもおかしくない。大量飲酒で脳が萎縮することは分かっていますが、睡眠不足や運動不足はどうか。何が健康的な行動と言えるのか。社会的な関心が高く健康寿命にも関わりますので、こうした研究も少し始めているところです。

―仕事に取り組む上で大切にしたいことは。

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 一つは、患者さんにプラスになることが大前提ですが、その上で「おもしろい」と思って研究すること。

 もう一つは、精神疾患への理解を正しい方向に持っていくことです。いまだに偏見が不利益に働くことがありますし、統合失調症の患者さんは、そうでない人より10~20年早く亡くなるというデータもある。彼らが意欲的に活躍できる場が少ないことが問題の根本にあります。本当に残念なことですが、世の中はまだ成熟していません。単に理想を語るのではなく、われわれが地道に事実を伝えていくことが大事だと思っています。

京都大学大学院 医学研究科 脳病態生理学講座()
京都市左京区聖護院川原町54
TEL:075-751-3111(代表)
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~psychiat/

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