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東海大学医学部 外科学系整形外科学 渡辺 雅彦 教授(領域主任)

東海大学医学部 外科学系整形外科学 渡辺 雅彦 教授(領域主任)

再生医療で照らす患者の明るい未来

【わたなべ・まさひこ】
1987年慶應義塾大学医学部卒業、同整形外科学入局。米コネチカット州立大学留学、東海大学医学部外科学系整形外科学准教授、教授を経て、2016年から現職。同付属病院副院長、同外科学系学系長兼務。

 「患者さんの苦しみを少しでも軽減したい」と渡辺雅彦教授。教室を率いて8年。その思いは教室員に広がり、臨床と多彩な研究で、花を開きつつある。

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―臨床面の特徴を。

 東海大学医学部は「良医」を育てることを目標としています。当教室でも「」を養成した上で、専門性を持たせることを心がけています。

 外傷学が強いのが特徴の一つ。東海大学医学部付属病院は、1999年に川崎医科大学と並び日本で初めてドクターヘリが導入された病院で、シビアな外傷の患者さんが運ばれてきます。救命救急センターには整形外科のメンバーも加わっていますし、夜間には整形外科当直2人体制で、救命救急センターで受け入れた患者さんの対応にも当たっています。

 学生スポーツが盛んな大学ですので、スポーツ医学にも力を入れています。スポーツ医科学センターではメディカルチェックや競技力向上のための支援、研究などを進めています。

―研究については。

 大学院への進学率、博士号の取得率が高いのが特徴です。背景にあるのは、当大学院医学研究院独自の「臨床研修/大学院コース(ハイブリッドコース)」。4年のうち1〜2年は研究中心の生活を送り、残りは大学病院で臨床を行いながら研究に従事します。大学病院で通常勤務した場合の4分の3ほどの給与が支払われることや、臨床から長期間離れずにすむことが人気の理由でしょう。

 研究の柱は3本。一つは、「椎間板再生」。かつては、本人の椎間板から取り出し活性化させた髄核細胞を再移植していましたが、現在は、iPS由来の髄核細胞など、本人以外からの細胞を移植しています。

 二つ目は「軟骨再生」。軟骨細胞シートによる再生の臨床研究を進めています。当初は自己細胞を使っていましたが、今は多指症の子どもから切除した指の軟骨を活用してシートを作製。最終的には製品化したいと考えています。

 三つ目が私の専門でもある「脊髄再生」です。

―脊髄再生研究の現状と今後は。

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 事故などで脊髄損傷が起こると機械的な組織破壊に続いて、二次的に損傷範囲拡大が起こります。この二次障害の原因の一つが、髄鞘を形成する「グリア細胞」のアポトーシスによる脱髄の進行。同時に、一時的に増殖するオリゴデンドロサイト前駆細胞という髄鞘をつくる細胞が、その後、成熟細胞に分化することなく消失することで、再髄鞘化が阻害されます。

 オリゴデンドロサイト前駆細胞の生存のキーになるのが「小胞体ストレス応答」です。この機能を高めることが、アポトーシスを抑制し、二次障害による損傷範囲拡大を防ぎます。われわれは動物実験で、種々の薬物の投与で小胞体ストレス応答機能が高まりアポトーシスが抑制できることなどを確認。さらなる検証を進めています。

 かつて、多くの医療者が不可能だと思っていた脊髄損傷の急性期治療は、研究の進歩によってスタートラインにつきました。

 ①一次障害後の腫れを抑制することで損傷の拡大を抑え、オリゴデンドロサイト前駆細胞などのアポトーシスを予防する。②必要に応じて細胞を移植する。③リハビリを実施する。その組み合わせが大切です。

 ①の時期には何をすれば良いのか、②の移植ソースはiPS細胞がいいのか、MSC(間葉系幹細胞)がいいのか、それ以外の何かなのか、また時期はいつか、③のリハビリがどんなものがよいのか…。今からは、一人ひとりにベストな選択を詰めていくことが必要なのです。

 同時に、今後のポイントの一つは、慢性期治療でしょう。損傷から半年、1年が経過し、神経に瘢痕ができた人に対して、どうアプローチすればまひが軽減されるのか。20年、30年かけて急性期の脊髄損傷治療を推し進めてきたように、努力していくべきテーマです。


神奈川県伊勢原市下糟屋143
TEL:0463-93-1121(代表)
http://ortho.med.u-tokai.ac.jp/

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