“患者さんを断らない” 真摯な対応で稼働率アップ
1989年北里大学医学部卒業、同外科学教室入局。厚生連北信総合病院、津久井赤十字病院(現:相模原赤十字病院)、総合相模更生病院外科部長などを経て、2018年から現職。
終戦の日から数えて103日後に開設した社会福祉法人ワゲン福祉会 総合相模更生病院。医療環境の変化に加え、病院に隣接する米軍基地の一部返還による再開発計画など周辺環境の進展もあり、期待感とともに難しいかじ取りも求められている。2018年2月、現職についた松本豊病院長に、この1年間を振り返ってもらった。
―地域の変化が顕著です。
軍都だったこの地域は、戦前は日本陸軍の相模陸軍造兵廠(しょう)があり、その医療機関として陸軍造兵廠附属病院がありました。戦後その施設を利用して開設したのが当院です。
米軍の進駐でかつての陸軍施設は米国の相模総合補給廠(在日米軍の補給施設)となり、その一部が2014年に返還されました。返還されたのはJR相模原駅北口前の敷地で、当院の目の前の場所。市の中期、長期の再開発計画によると、市役所をはじめとした中核施設が今後移転する予定になっています。将来的には小田急多摩線の相模原駅への延伸も計画されています。
当院がある相模原市は2010年に政令指定都市になりました。JR橋本駅周辺にできるリニア中央新幹線の新駅の工事もスタートしています。開業は2027年と聞いています。
このような変化の中で、当然、将来の就業人口や居住人口の増加が見込まれます。他の病院や地域のクリニックとの連携など、変化に即した病院運営が求められています。
―病院の現況を教えてください。
病床数は一般病棟168床で、うち地域包括ケア病棟が44床。そのほか介護療養病棟57床があり、全部で225床です。
2007年に本館のA棟を建て替え、PET-CTを導入しました。そのほかCT、MRIなども備わっていて、検査機器を共同利用する医療連携にもつなげています。PET-CTは神奈川県北で最初の導入で、PET検査薬も薬剤製造システムを稼働させ、当院の薬剤部が製造しています。
B棟は、介護療養病棟と地域包括ケア病棟、人工透析を行う血液浄化センターで構成されています。将来的には慢性期の介護療養病床を廃止し、急性期病床に転換する計画です。
手術件数は年間およそ1300件で、この規模では少なくないとは思います。麻酔科の医師も常勤2人、非常勤1人と恵まれた環境で、緊急の手術を含めて積極的に行っています。
外科では消化器系のがんの手術数が多く、整形外科は骨折の手術が多くなっています。
―就任から1年ですね。
まず、誠意をもって患者さんと向き合い、とにかく患者さんを「絶対に断らない」ということを徹底しました。それに加えて内科の機能強化を図ったことで、それまで病床の稼働率が70〜80%程度だったものが、現在はおよそ80%後半を推移。90%を超えることもあります。
救急車を断らなければ救急隊からの信頼を得られますし、近隣のクリニックや医療機関からの紹介にもきちんと対応していれば、どんどん患者さんを送ってくださるようになる。当院での治療が難しく他の病院に患者さんをお願いするときにも、まず当院できちんと評価をしてから、依頼しています。
ただ、稼働率がアップしていますから、職員たちにはかなりの負担を強いています。忙しい中でも高いモチベーションをもって頑張ってもらっていますので、負担軽減の方法を摸索すると同時に、報酬面でしっかりとお返ししたいですね。
当法人の基本的な考え方として、患者さんの置かれた状況や属性に関係なく、分け隔てなくきちっと向き合って、良質な医療を提供していくということがあります。今後も、それを継続したいと思っています。
社会福祉法人ワゲン福祉会 総合相模更生病院
神奈川県相模原市中央区小山3429
TEL:042-752-1808(代表)
http://www.sagami-kouseibyouin.or.jp/