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熊本大学大学院生命科学研究部呼吸器外科学分野 鈴木 実 教授

熊本大学大学院生命科学研究部呼吸器外科学分野 鈴木 実 教授

最新の低侵襲医療で高める肺がんの5年、10年生存率

【すずき・まこと】
1989年千葉大学医学部卒業。同大学医学部附属病院肺外科助手、米テキサス大学留学、千葉県がんセンター医長などを経て、2010年から現職。

 患者数、死亡者数ともに増え続けている肺がん。「治りにくいがん」であることが、生存率などのデータでも示されている。熊本大学呼吸器外科学分野での取り組みは。

―肺がんの罹患(りかん)数は増えていると聞きました。

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 日本呼吸器外科学会が2018年に発表した調査によると、2015年の段階で全国の呼吸器手術の50.5%が肺がんで、年々患者数は増えています。

 熊本大学医学部附属病院でも、呼吸器の手術のうち7〜8割が肺がん。2017年は呼吸器外科での総手術数364件のうち223件が肺がんの手術でした。2018年1年間の肺がん手術の件数は225件、総手術件数は371件で、2017年の件数をともに更新しました。

 要因の一つは喫煙です。2007年から2008年にかけての厚生労働省のデータでは、習慣的にタバコを吸う人の数は、女性で10分の1以下、男性では3分の1以下と減っています。

 その一方で、これまで喫煙していた人が高齢になってから肺がんを発症するケースが多く見られます。特に50代を境に、発症する人が多いのが肺がんの特徴です。そのため、喫煙者は減少しているのに対し、肺がんの罹患者は増えているのです。

―肺がんの低侵襲医療については。

 胸腔鏡下手術を推進しています。わきの下に約3㎝と1.5㎝、わきの少し後ろに1.5㎝の穴を開け、そこからカメラを入れて手術します。がんが小さいほど切開のサイズも小さく抑えることができます。

 開胸手術では胸の下から背中にかけて15cmほど切開し、筋肉を切断するのに対し、胸腔鏡下手術は傷が小さいことから「傷痕が目立ちにくい」「痛みが少ない」「回復速度が早くなる」などのメリットがあります。

 開胸手術だと術後1週間は入院が必要なのに対し、胸腔鏡だと早くて4日で退院できます。

 肺の腫瘍がある部分だけを切り取って、つなぎ合わせるスリーブ切除も積極的に実施しています。

 例えば上葉と中葉の間に腫瘍ができたとします。その場合、可能な限り、中葉と下葉を残すのです。血管や気管支を切り離した後、再びつなぐため、高度な技術が必要ですが、できるだけ肺の機能を維持できるよう手術することで肺活量の著しい低下を防ぐことができます。

 胸膜という、胸郭の内側と肺の表面を覆う薄い組織層にできる中皮腫の生検にも胸腔鏡を役立てています。肋骨の間を切開して胸腔内を調べ、胸膜から組織を採取する。これが中皮腫を調べる最も確実な方法です。また、呼吸器内科では、気管支炎の生検で検査をしても病気が判断できない場合に胸腔鏡を使用しています。

 さらに、手術支援ロボット「ダビンチ」を2018年度末から2019年度初めに導入する予定で準備を進めています。

―肺がん治療は今後どのように変わっていくと思いますか。

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 内科治療では免疫チェックポイント阻害剤の「ニボルマブ(商品名:オプジーボ)」が登場。以前は化学療法をした肺がん患者さんの5年生存率は約4%でしたがニボルマブの登場で16%まで上がっています。

 外科治療の成績も良好です。国内では、1989年に手術した患者さんの5年生存率が47.8%だったのに対し、2004年には69.6%まで延びました。

 ニボルマブは、肺がんでは手術不可能な場合に保険適用となるため、手術と組み合わせての治療は難しいのが現状です。ただ、将来は、術前・術後にニボルマブ、あるいは分子標的薬のゲフィチニブ(商品名:イレッサ)やエルロチニブ塩酸塩(商品名:タルセバ)などを導入する治療法が標準的になってくるかもしれません。それによって、肺がんの治療成績が、さらに上がることを期待しています。


熊本市中央区本荘1-1-1
TEL:096-344-2111(代表)
http://kumadai-thoracic.com/

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