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産業医科大学医学部神経内科学講座 足立 弘明 教授

産業医科大学医学部神経内科学講座 足立 弘明 教授

地元に根付く医師を育て「」を高める

【あだち・ひろゆき】
1991年名古屋大学医学部卒業。同大学院医学研究科客員研究者、同科COE特任准教授、同科難治性神経疾患治療学寄附講座准教授などを経て、2014年から現職。

 頭痛、しびれ、めまい、物忘れ、けいれん、筋力低下…。高齢化が進み、北九州地区でも脳神経内科関連の患者が増加しつつあるという。産業医科大学の神経内科学講座では、どのように医師の育成や地域連携に取り組んでいるのか。4月には標榜科名を「脳神経内科」に変更するという。

―地域の基幹病院としての現状は。

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 産業医科大学病院は、病院がある北九州市八幡西区から東側、大分県との境までの地域の基幹病院となっています。このエリアは、脳神経内科医の数が非常に少ない。一般病院から医師派遣の要望を多くいただきます。ただ、大学も充足しているとは言い難く、なかなか医師を送れずにいるのが現状です。

 脳神経内科は、内科の中だけで見ても、循環器内科、消化器内科、呼吸器内科といったコモンディジーズを扱う科に比べて「特殊な科」だと思われがちです。現在は、日本神経学会が主導して、全国の病院でコモンディジーズを診る科として「脳神経内科」へ標榜科名を変更する取り組みがされており、産業医科大学病院も今年4月に変更します。

 実際は、脳血管障害、てんかん、認知症など非常に身近な症例を扱っているのですが、それが医学部の学生にさえ、十分に知られていない。新専門医制度によってサブスペシャルティ領域に分別されたこともあり、脳神経内科を希望する医師がさらに減るのではと危機感を持っています。

 産業医科大学という特性から、産業医を輩出する使命を帯びていること、全国から学生が集まってきている大学であることも、医師の確保を難しくしています。特に、学生は卒後しばらく大学に残ったとしても、いずれ自分の地元に帰ってしまうことが多いため、この地域の医療の充実という面では残念に感じています。

 北九州は比較的都会だと思われがちですが、現在は製鉄産業が衰退し、街自体も高齢化しています。外から医師がどんどん流入してきてはくれませんのでまずは、この地に愛着を持つ地元出身の医師を、この大学でしっかりと育てていくことが大切です。

 医師が不足する一方で、患者数は増えています。われわれが取り扱う脳血管障害や認知症は加齢とともに増加。高齢化の進行とともに今後、脳神経内科医の需要はさらに高まるでしょう。

 大分県に近い京築医療圏には、脳神経内科専門医がほとんどいません。地域の中核病院に当講座から週に2回ほど医師を派遣して診療に当たっているものの、安定的に質の高い医療を提供するためには、常勤の脳神経内科医が必要です。

 認知症やてんかんといっても、種類や症状はさまざま。診断が違えば、使う薬剤も変わってきます。例えば突然意識を失う症状があり、てんかんが疑われる患者が本当にてんかんなのか、他の病気なのかを診断するのは、経験を積んだ脳神経内科医の役割です。その意味でも、地域で活躍できる人材の育成はこれからの大きな課題になってきます。

―地域連携などの目標は。

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 われわれは、患者は「受け入れられるだけ受け入れる」方針をとっています。周辺の病院とのネットワークがしっかりとできており、難しい神経の病気であれば、すぐに大学へ紹介いただくようになっています。

 ただ、脳神経内科の診療を必要とする緊急の患者をすべて受け入れられるだけの体制は、まだ整っていません。この地域には脳神経内科医がいる病院はいくつかあるものの、絶対的な数としては足りず、既存の神経疾患や筋疾患の患者を数多く大学で診ているからです。

 患者を受け入れる体制を一層整え、地域医療に貢献していきたいと考えています。地域の医療機関と連携を確かなものにするためにも、まずはこの地域に根付き、愛着をもって取り組む脳神経内科医を育て、期待に応えていけたらと思います。


福岡県北九州市八幡西区医生ケ丘1-1
TEL:093-603-1611(代表)
http://uoeh-neurology.org/

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