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社会医療法人北九州病院 北九州中央病院 橋爪 誠 院長

社会医療法人北九州病院 北九州中央病院 橋爪 誠 院長

医用画像の統合は未来に何をもたらすか?

【はしづめ・まこと】
1979年九州大学医学部卒業。社会保険仲原病院、九州大学病院、同多元計算解剖学国際研究センター長などを経て、2018年から現職。九州大学名誉教授。

 革新的な診断や治療の創出を促進する、新たな学問領域の確立をー。九州大学先端医療イノベーションセンター長などを歴任し、2018年、北九州中央病院の院長に就任。橋爪誠氏が挑むのは「)」のグローバルな発展だ。

―「多元計算解剖学」について教えてください。

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 医用画像のデータを用いて、人間の生体情報の「総合的な理解」を目指す学問領域です。

 文部科学省による2014年度「新学術領域研究(研究領域提案型)」において、私たちが取り組んでいる「医用画像に基づく計算解剖学の多元化と高度知能化診断・治療への展開」が採択されました。私は本プロジェクトにおける領域代表を務めています。

 医用画像にはМRI、CT、PET、超音波、内視鏡、病理など多様な種類があり、検査の目的に応じたモダリティを活用することで画像データを得ることができます。

 一般的に、取得した画像データは、モダリティごとに確認する必要があります。それぞれの機器の特徴や強みといった、異なる「軸」に基づいて、さまざまな角度から人間の体の中を「多元化した情報」として捉えているわけです。

 ただ、使用する機器は異なっていても「対象となる臓器は同じ」です。

 多元計算解剖学が目指すのは、臓器や疾患に関連する各モダリティの画像情報を個別に理解するだけではなく、複数のデータを同時に扱ってシームレスに融合させて表現すること。

 仮想空間上で医用画像の軸を一致させるのです。その「統一的なデータ」を革新的な診断や治療を生み出すツールとして確立するための試みです。

―融合させる「軸」とは。

 多元計算解剖学のアプローチは、次の四つの概念に分かれています。

 まず「時間軸」です。従来の診断、治療、死亡といった時点の情報にとどまらず、胎児や乳幼児期においてどのように臓器が成長していくのか、かかりやすい疾患は何か、予後はどうなるのか。未来を予測できる「多元計算解剖モデル」を構築します。

 次に「空間軸」です。細胞レベルから臓器レベルまでを対象とします。ミクロからマクロまでのデータの統合を目指す動きは世界的にも活発化しています。

 三つ目に「機能軸」。各種のモダリティは、生化学や物理学、生理学などに基づき、生体が有する機能の情報を画像という「かたち」として表します。これらをマルチフィジックス(複数の物理現象などを組み合わせて解析すること)な情報として融合します。

 そして「病理軸」です。正常な臓器の状態をはじめ、疾患の進行、悪性や良性、変異、奇形など、形状の変化を統計的なアプローチで扱います。

 時間、空間、機能、。これらの情報を伴う新しい解剖学によって、今、目の前にいる患者さんに何が起こっているのか、どのような治療が適切なのか、これからどうなっていくのか。より正しい理解につながると考えています。

 いわば、生きている人間の一生を対象とする解剖学です。私たちは「ダイナミック・リビング・アナトミー」と呼んでいます。

―今後は。

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 多分野の研究者の協力なくして、新しい時代の医療を生み出すことは難しいのではないかと思います。「全体を広く見る目」がますます重要となるでしょう。

 実際、私たちのプロジェクトは、国内外の数理、エンジニア、医工学などの領域の専門家による連携によって進められています。

 ゆくゆくは手術支援ロボットと多元計算解剖学の融合や、当院でのリハビリテーション医療への活用もイメージしています。未来の医療として世界中から認められる「MCA-Baced Medicine」を確立したいですね。

社会医療法人北九州病院北九州中央病院
福岡県北九州市小倉北区香春口1-13-1
TEL:093-931-1085(代表)
http://www.kitakyu-hp.or.jp/ contents/kitahos_chuo.htm

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