医療界、とくに医科大学を取り巻く環境は年々厳しさを増しているところですが、昨年は例年に増していろいろな問題が起きました。医師の働き方改革については裁量労働制等の方向性が示されていますが、自己研さんと労働の考え方の整理もついておらず、いまだ不透明な状況です。特定機能病院の消費税増税分の補填については、ようやく厚生労働省が誤りを認め、修正案が提示されました。今後この改定が適正なものかは病院としても検証が必要と考えます。また東京医科大学に端を発した医学部不正入試問題についても、全国医学部長病院長会議から11月に規範が示されまし た。今後不正はもちろん不適切と指摘された大学(あるいは公表した大学)が、不利益を被った学生等にどのように対応していくかが注目されていくでしょう。
医育機関の一つとして医師臨床研修制度と日本専門医機構が取り仕切る新専門医制度の今後の推移について、特に注視するとともに危惧もしているところです。医師臨床研修制度は国が主導している制度ですが、国公立大学への補助が手厚い反面、私立医科大学にはその10%程度しか補助が出ていない現状をぜひ是正していただきたいと願っています。また、専攻医につきましても人口当たりの医師数が少ない愛知県がシーリング対象県とされていることは、誠に遺憾なことであり、ぜひ日本専門医機構には再考をお願いしたいところです。
もう一つ大きなことは、昨今県に権限が委譲されつつある地域医療の再編問題です。大学病院といえども、地域医療から距離を置いて運営していくことは現実的ではありません。地域の中核病院としての使命を全うしつつ、地域の病床再編、機能分化をよい形に収めるように努力し、これからの変革の時代を地域で乗り切っていくという覚悟が必要になってきたと実感しています。
2019年も愛知医科大学としてよき医療人を育成するとともに、病院でも皆さまのお役に立てるよう努力してまいります。今年もよろしくお願い申し上げます。