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奈良県立医科大学 産婦人科学 小林 浩 教授

奈良県立医科大学 産婦人科学 小林 浩 教授

母と子の健康願い見守りシステムで市と連携

【こばやし・ひろし】
1980年浜松医科大学医学部卒業、同産婦人科入局。ドイツミュンヘン科学技術大学留学、浜松医科大学医学部附属病院産科婦人科助手、講師、助教授を経て、2005年から現職。

 奈良県の周産期医療と婦人科がん治療の最終的な担い手として、高度先進医療に取り組む産婦人科。ハイリスク妊婦のケアのみならず、出産後の支援にも力を入れ始めている。

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―現状や特色を。

 産婦人科には四つの領域があります。お産を扱う周産期、婦人科腫瘍、不妊・内分泌、女性の一生のライフサポートをする女性ヘルスケアです。

 周産期に関して言うと、人口135万人の奈良県でのお産は年1万人ほど。その10〜20%を占めるハイリスクの妊婦さんのケアを主体に行っています。1年間に扱う約1000人のうち8割がハイリスクです。

 残りの約200人は正常分娩で、助産師養成の側面があります。助産師主体で運営する「メディカルバースセンター」は、自由なスタイルでの出産が特長。達成感が高い上、助産師の満足度やアクティビティーも高まる。私たち産婦人科医の負担も減ります。

 県内では年間300人を超える母体搬送があり、奈良県総合医療センターと両方で受け入れています。お互いの施設のメリットを生かして役割分担を行い、双方が満床にならないよう、すみ分けしています。

 奈良県は面積は広くないものの、移動に時間がかかります。私が2005年にこちらへ来てすぐ、出産中に意識不明に陥った妊婦さんが18病院で受け入れを拒否され、脳出血で亡くなる「大淀病院問題」が発生。これを機に、さまざまな取り組みが進みました。

 その一つが、正常な妊産婦は助産師、それ以外を私たちが集中的にケアするタスクシフティングです。ニーズに応じた医療を提供しつつ、負担のない体制を整備することがリスク軽減につながります。

―妊産婦ケアの課題は。

 妊娠、出産に悩む人は多く、関連自殺も日本が圧倒的に多い。われわれの病院では病気のため、長期の入院管理を要する患者が多く、出産後は肉体的・精神的負担を少しでも軽減しようと全員にエステを実施。しかし退院後は家庭での生活が主体となるため、患者さんにアプローチできないのが問題でした。

 そこで昨年から取り組んでいるのが、妊産婦子育て見守り支援サービスです。妊娠中のマイナートラブルや育児で困ったときに電話、メールや無料通信アプリ「LINE」でコールセンターに連絡すれば、ベテラン看護師や助産師と話ができるシステム。フィードバックや対応履歴から総合的にサポートできます。

 今年の11月からは、橿原市と相談しながらバージョンアップ。保健指導や医療相談以外の"心の見守り"にも領域を広げました。相談内容はマイナートラブルが多いのですが、病気や虐待(ぎゃくたい)、自殺などにつながりかねない深刻な問題が潜んでいることもある。行政との連携で困った人を早期に見つけ、手を差し伸べたいと思います。今はまだ実証中ですが、将来、電子母子手帳などとリンクすることでメリットはより高められるでしょう。

 さらに奈良医大では、MBT(Medicine-Based Town、)が進んでいます。多くの医療施設が連携することで、へき地にいる妊婦さんもしっかり見守ることができる。日本初の「奈良モデル」が軌道に乗り、全国に広まればと願っています。

―今後の展望は。

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人工知能を使った遺伝子診断を進めたいですね。奈良県立医科大学附属病院は全国に21ある「(JOHBOC)」の基幹施設の一つ。24ある協力施設のうち八つが県内の病院です。交通の便が悪い分、病院同士連携することで患者さんの利便性が高まるでしょう。地元の病院から紹介していただければうちで遺伝カウンセリングします。遺伝学的検査によって、より的確な治療に進む人を1人でも増やせたらと思います。


奈良県橿原市四条町840
TEL:0744-22-3051(代表)
https://nara-obgyn.com/

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