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琉球大学大学院医学研究科 精神病態医学講座 近藤 毅 教授

琉球大学大学院医学研究科 精神病態医学講座 近藤 毅 教授

ゴールは寛解の先にある”真のリカバリー”

【こんどう・つよし】
1983年弘前大学医学部卒業、1988年同大学院医学研究科修了(医学博士)。浪岡町立病院(現:青森市立浪岡病院)、文部省在外研究員(英ウェールズ大学医学部臨床薬理治療学教室)などを経て、2003年から現職。

 「寛解を維持しリカバリーすることが真のゴール」と話す琉球大学精神病態医学講座の近藤毅教授。発達障害への関心が高まる中、社会はその「特性」をどのように捉え、受け入れていくべきか。方向性のポイントを聞いた。

―児童・思春期の精神疾患について教えてください。

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 沖縄県は出生率が全国トップ。同時に離婚率や貧困率が高いなど、負の側面も持ち合わせています。

 不安定な家庭環境が影響して自己表現が苦手であったり、自己評価が低かったりする子どもが一定数存在するのが現状です。虐待に近い育て方をして心理的トラウマを形成した子どもが、学校や集団で不適応となるケースもあります。

 増加する子どもの精神医療ニーズに対応するために、琉球大学医学部附属病院では2004年に「」を開設しました。学童期以前から思春期、入院治療を要する摂食障害など、多様な精神疾患に対応しています。

―増加の要因は。

 発達障害が広く認識され始めたことで、発達特性への関心が高まり、早期の受診につながるケースが増えてきました。

 例えば幼稚園や保育園などでも、他の子どもと違う行動を示すと、先生や保育士が両親に報告する。そうした背景から、発達障害の患者さんは低年齢化の傾向にあります。

 小児精神科医療を専門とする医師、メディカルスタッフ共に不足しており、総合病院の精神科はどこも新規患者の予約が数カ月先まで埋まっています。ニーズに十分に応えきれていないのが現状です。

 それは沖縄県に限りません。小児精神科医療の受け皿については地域格差がありますが、それぞれの地域で独自に研修を行う「地域完結型の人材育成」でなければ人材は根付かず、地域格差はいつまでも解消されないと思います。

 2019年12月5日〜7日に開かれる「第60回日本児童青年精神医学会総会」(沖縄コンベンションセンター)の会長を務めます。各都道府県がいかにして人材を育成する力をつけるか。地域の問題や研修システムなどをテーマに活発な議論を交わしていけたらと考えています。

―成人の発達障害は。

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 不注意優勢タイプのADHD(注意欠陥・多動性障害)は、大人になってから社会不適応の状況に直面して受診に至るケースが少なくありません。

 マルチタスクや時間の管理がうまくできずに周囲からマイナスの評価を受け、うつ病や不安障害を発症する方もいます。「主訴に隠れた発達特性を見抜けるか」がポイントで「発達特性のあるうつ病や不安障害」として対応することが重要です。

 治療は、まず自分の特性を知った上でどういう行動をとるべきかを共有する「心理教育」から始めます。

 併せて職場で任されている仕事が適性に合っていなければ、部署の移動を相談するなど、職場での環境調整を行います。

 それも周囲の理解があってこそ。社会に受け入れてもらうために自分の得意なことを説明したり、発達障害をカミングアウトしたりすることも、時には必要になるでしょう。

 精神疾患による休職後、復職に向けて医師が書く診断書は「一定の寛解が維持できること」を証明するものです。「仕事を遂行できる」ことを担保するものではありません。

 現在のところ、客観的な指標は存在しないのです。診断書の内容を「仕事ができる」と受け取って復職したものの、寛解が維持できずに再び休職してしまう。そんな可能性もあり得るということです。

 症状的な寛解を目指すだけではなく、その先にある社会機能の改善を含めた「真のリカバリー」をゴールに設定することが大切。メッセージとして、発信していきたいと思っています。


沖縄県中頭郡西原町上原207
TEL:098-895-3331(代表)
http://www.psy.med.u-ryukyu.ac.jp/

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