専門外診療と経営を伝える開業前医師向け研修
高齢化が進み、複数の病気がある高齢者が増え、診療科目の垣根にとらわれず、幅広く診療できる医師を求める声が高まっている。ドクターとして幅を広げたい人に向けて「開業前研修」を実施している姫野病院。スタートした理由やプログラムの内容を姫野亜紀裕院長に語ってもらった。
―「開業前研修」を実施していると聞きました。
日本は高齢化が進んでいます。病院に来る高齢者の中には、肺や心臓、膝、脳の病気などいくつもの症状を抱えている方も多く、一つの診療科目だけではカバーできないケースがあります。
しかし、それぞれ違う医療機関に通うのは、患者さんにとって負担が大きい。1人のドクターが責任を持って総合的にいろいろな症例を診療できたほうが良いのではないか。そんな思いが、ベースにあります。
当院には、内科、小児科、整形外科などさまざまな診療科とCT、MRIなど一通りの検査ができる装置があり、入院患者も受け入れる「病院」としての側面と、風邪で受診する患者さんもいる「クリニック」のような側面、二つの面があります。
経験がない、興味がある疾患を他の常勤医と連携して診ながら経験を積む。そんなドクターとしての幅を広げるための研修をするには、診療科の垣根がない当院ぐらいの規模がちょうどいい。柔軟に対応できるメリットを生かして研修ができると思います。
受け入れの状況としては、2014年から2016年の約2年間で1人の医師を受け入れ、今年の11月には2人目を迎える予定です。開始時期や実施期間は決まっているわけではなく、研修する医師と相談した上で決定します。
若い医師が来てくれることで、職場が活気付き、常勤の医師たちの刺激にもなります。以前受け入れた医師から今でも相談を受けることがあり、いい関係を築けたと思いますね。
―具体的にどのようなプログラムを組んでいるのでしょう。
その医師が経験したい、学びたいと思ったことで、当院でできることはすべて体験できるようにしています。同時に、精神科など当院で研修できない分野は、他の病院で週に1度研修できるよう紹介しています。
そのために、まずは個別にヒアリングをして、何を覚えたいのか、開業時にどんな知識をつけておきたいのかを詳しく聞きます。そこからオリジナルのプログラムを組んでいきます。
以前受け入れをした医師の専門は整形外科です。開業するにあたって、内科についてもある程度、わかるようになっておきたいと当院に入職。最低週1回の整形外科外来を担当しながら、それ以外の時間は主に内科の診療をしました。当院の内科医が全面的にバックアップ。内科の診療が1人でできるようになってから、巣立っていったのです。
もちろん、経営についての勉強会も開きます。医療制度や診療報酬・介護報酬の仕組み、点数の取り方、労務管理の仕方などを、私が一対一で伝えています。
―ほかにも、独自の取り組みを多数されています。
今年3月、病院内のカフェで婚活イベント&恋愛セミナー「姫婚」を開催。院内のバックヤードツアーや夏祭りである「地蔵祭り」も開いています。今年7月の地蔵祭りには1000人以上の方が来場しました。
地元に活気がなくなり、人がいなくなったら病院も終わりです。さまざまな仕掛けによって、この地域を生き生きとさせたい。故郷を離れている若い人たちも戻ってきてくれたら―。そんな期待も抱いています。
院内の1階には、漫画を2万冊近く設置しています。待ち時間対策でもありますが、「漫画の続きが読みたくて、また来ました」という人がいてくれたら、受診を中断して病状を悪化させてしまうケースを減らせるかもしれない。そこを狙って、あえて「漫画」にしています。
医療法人八女発心会 姫野病院
福岡県八女郡広川町新代2316
TEL:0943-32-3611(代表)
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